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大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその8 Q上のガロア拡大の例

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はじめに

今回は有理数体Qの比較的小さい次数のガロア拡大の例を挙げる問題を扱います.

その他の問題たちは こちらのまとめページ から見れます.よろしければリンクをご利用ください.

問題と解答

n2n10を満たす整数とする.各nについて有理数体Q上のn次ガロア拡大の例を少なくとも1つ挙げよ.

感想

円分体の理論を使えばn=7以外は直ぐに作れます.n=7のときだけ別枠となりますが,方針は同じです.

解答を表示

ζn=exp(2π1n)
とおく.円分体の理論から拡大Q(ζn)/Qはガロア拡大で,
[Q(ζn):Q]=φ(n),Gal(Q(ζn)/Q)(Z/nZ)×
が成り立つ.ここでφはオイラー関数を表す.nに素数pを代入すると,
[Q(ζp):Q]=φ(p)=p1,Gal(Q(ζp)/Q)(Z/pZ)×Z/(p1)Z
が成り立つ.今回はこれらを用いて例を作ることにする.

pを素数とする.[Q(ζp)/Q]=p1であるからQ(ζp)Qp1次ガロア拡大である.また,
Gal(Q(ζp)/Q)Z/(p1)Z
であり,p12Z/(p1)ZZ/(p1)Zの唯一の位数2正規部分群である.よってQ(ζp)/Qの部分体MQp12次ガロア拡大となるものが(唯一つ)存在する.即ち
[M:Q]=p12,[Q(ζp):M]=2
である.apの原始根とする.即ち,a(Z/pZ)×は生成元である.このときap121modpに注意する.σGal(Q(ζp)/Q)σ(ζp)=ζpaを満たすものとして定めると,σGal(Q(ζp)/Q)の生成元である.Mσp12で不変な元全体からなる体である.ζpσp12を作用させると
σp12(ζp)=ζpap12=ζp1(ap121modp)
となるから,ζp+ζp1σp12で不変な元である.これより,
Q(ζp+ζp1)M
が成り立つ.
さて,仮にζpQ(ζp+ζp1)であるとすると,Q(ζp)=Q(ζp+ζp1)となり,
Q(ζp+ζp1)MQ(ζp)
であることからM=Q(ζp)となって矛盾.従ってζpQ(ζp+ζp1)である.また,(Q(ζp+ζp1))(ζp)=Q(ζp)が成り立つ.ζp,ζp1Q(ζp+ζp1)上の2次多項式
t2(ζp+ζp1)t+1
の根である.ζpQ(ζp+ζp1)よりこの多項式はQ(ζp+ζp1)上既約である.これより,[Q(ζp):Q(ζp+ζp1)]=2が成り立つ.すると[Q(ζp):M]=2であったからM=Q(ζp+ζp1)が成り立つ.ζp+ζp1=2cos2πpであるから,
M=Q(cos2πp)
とも書ける.

これよりQのガロア拡大を色々作ることができる.例えば,
p=3Q(ζ3)Q2
p=5Q(ζ5)Q4Q(cos2π5)Q2
p=7Q(ζ7)Q6Q(cos2π7)Q3
p=11Q(ζ11)Q10Q(cos2π11)Q5
p=13Q(ζ13)Q12Q(cos2π13)Q6
p=17Q(ζ17)Q16Q(cos2π17)Q8
p=19Q(ζ19)Q18Q(cos2π19)Q9
以上より,n=7の場合以外はQn次ガロア拡大の例が構成できた.

Q7次ガロア拡大の例を求めるために,拡大Q(ζ29)/Qについて考える.ここで29という数字を取ってきたのは,φ(n)7で割れる最小のn29だからである.この拡大のガロア群は
Gal(Q(ζ29)/Q)Z/28Z
である.229の原始根であるから,σGal(Q(ζ29)/Q)σ(ζ29)=ζ292を満たすものとすると,σGal(Q(ζ29)/Q)の生成元となる.7Z/28ZZ/28Zの唯一の位数4の正規部分群である.よって,7Z/28Zに対応するQ(ζ29)/Qの中間体Mが唯一つ存在して,Q(ζ29)/M4次ガロア拡大,M/Q7次ガロア拡大となる.Mσ7で固定されるQ(ζ29)の元全体からなる体に等しい.
ζ29σ7ζ2912σ7ζ291σ7ζ2912σ7ζ29
が成り立つので,ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912σ7で不変である.従って,
Q(ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912)M
が成り立つ.K=Q(ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912)とおく.[M:Q]=7であるから,[M:K]17に等しい.仮に[M:K]=7とするとK=Qである.これよりζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912Qとなるので
ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912=σ(ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912)=ζ292+ζ292+ζ2924+ζ2924
であるから,両辺にζ2924を掛けて移項すると
ζ2926+ζ2922+ζ2919+1(ζ2925+ζ2923+ζ297+ζ2912)=0
となる.即ち,ζ29Q上の26次多項式
x26x25x23+x22+x19x12x7+1=0
の根となる.しかし,ζ29Q上の最小多項式は
x291x1
という28次の多項式であるから矛盾.従って[M:K]=1即ち
M=K=Q(ζ29+ζ291+ζ2912+ζ2912)=Q(cos2π29+cos24π29)
が成り立つ.

以上より解答は次の通りである.(終)
n=2Q(ζ3),Q(cos2π5)
n=3Q(cos2π7)
n=4Q(ζ5)
n=5Q(cos2π11)
n=6Q(ζ7),Q(cos2π13)
n=7Q(cos2π29+cos24π29)
n=8Q(cos2π17)
n=9Q(cos2π19)
n=10Q(ζ11)

今回の結果を以下の表にまとめておきます.最小多項式の欄の*は,計算が大変(そう)なので省略したことを表しています.

拡大次数ガロア拡大体の例添加された各元のQ上の最小多項式
2Q(ζ3),Q(cos2π5)x2+x+1,4x2+2x1
3Q(cos2π7)x3+x22x1
4Q(ζ5)x4+x3+x2+x+1
5Q(cos2π11)(*)
6Q(ζ7),Q(cos2π13)x6+x5+x4+x3+x2+x+1, (*)
7Q(cos2π29+cos24π29)(*)
8Q(cos2π17)(*)
9Q(cos2π19)(*)
10Q(ζ11)x10+x9+x8+x7+x6+x5+x4+x3+x2+x+1
p1(pは素数)Q(ζp)k=0p1xk=xp1++x+1
p12 (pは素数)Q(cos2πp)(*)

発展

上での手法は簡単に一般に拡張でき,次のような定理を得ます.これは有限巡回群に対するガロアの逆問題の解答になっていますね.

2以上の任意の整数nに対し,Qn次ガロア拡大体Knで,そのガロア群Gal(Kn/Q)が巡回群Z/nZに同型であるものが存在する.

証明を表示

ディリクレの算術級数定理より,2以上の任意のnに対してp=an+1となる素数pが存在する.全てのnに対してそのような素数pnpn=ann+1を満たす整数an(2)の内最小のものを取っておく.ζnは上で用いたものと同じものとする.

[Q(ζpn)/Q]=pn1=annであるからQ(ζp)Qann次ガロア拡大である.また,
Gal(Q(ζpn)/Q)Z/(pn1)Z=Z/annZ
であり,nZ/annZZ/annZの唯一の指数n正規部分群である(an2よりnZ/annZは自明部分群でないことに注意).よってQ(ζpn)/Qの部分体MQn次ガロア拡大となるものが(唯一つ)存在する.即ち
[M:Q]=n,[Q(ζp):M]=an
である.lpnの原始根とする.即ち,l(Z/pnZ)×は生成元である.σGal(Q(ζpn)/Q)σ(ζpn)=ζpnlを満たすものとして定めると,σGal(Q(ζpn)/Q)の生成元である.Mσnで不変な元全体からなる体である.ζpnσnを作用させると
ζpnσnζpnlnσnζpnl2nσnσnζpnl(an1)nσnζpnann=ζpn
となるから,
ζ:=ζpn+ζpnln+ζpnl2n++ζpnl(an1)n
σnで不変な元である.これより,
Q(ζ)M
が成り立つ.[M:Q]=nであったから,n=[Q(ζ):Q]とおくとnnの約数である.
n=2のときはp2=5,a2=2となるので,上の問題の中で示したことからn=nとなる.n>2とする.ガロア理論から,Q(ζ)に対応するGal(Q(ζpn)/Q)=Z/annZの部分群は,nZ/annZである.従って,Q(ζ)の元はσnで不変であるから,
ζpn+ζpnln++ζpnl(an1)n=ζ=σn(ζ)=ζpnln+ζpnln+n+ζpnl2n+n++ζpnl(an1)n+n
が成り立つ.n<nであると仮定すると,右辺と左辺に共通するζpnの項が存在しないので,ζpn2an個の項を持つQ上の高々nan次の多項式の根となる.しかし,ζpnnan個の項を持つQ上の既約多項式
xpn1x1=xann+11x1
の根であったので矛盾.従ってn=nでなくてはならない.結局,全てのn2に対してn=nであり,
M=Q(ζ)=Q(ζpn+ζpnln+ζpnl2n++ζpnl(an1)n),[Q(ζ):Q]=n
Gal(Q(ζ)/Q)(Z/annZ)/(nZ/annZ)Z/nZ
が成り立つ.よって,Kn=Q(ζ)とすれば,これが求める拡大体である.(証明終)

最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

[1]
代数学2 環と体とガロア理論, 雪江明彦, 日本評論社, 2010
投稿日:2022615
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素朴な問題が特に好きです.

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