以前
ゲージ対称性とは何か(2):ネーターの第2定理
という記事を書きました。
上記記事では点粒子の力学を扱っています。
本記事では場の理論におけるネーターの第2定理に関して記しておきます。
Ref.[1]を元に書いています。
基本的には以前の記事を場の理論に適用したものですので、並行した議論になっています。
この話はあまりネット上に記述がないので書いておくことにしました。
ネーターの定理の原論文の英語訳は Ref.[2] で読むことができます。
この定理は色々な表現の仕方があるかと思いますが、ここではRef.[1]に習います。
ネーターの第2定理は次の恒等式(id.1-4)です。
場
微小な任意関数
このとき以下の恒等式が導かれる:
ここでnotationとして以下を用いている:
添字の"
で定義される。
である。
ここで
である。
notationが厄介ですがご容赦ください。時空による微分
以下定理1を示します。
まず、以下の事実を示します:
変換
に対し作用積分
上記変換に対し作用積分は
と変化します。ここで
を得ます(
ここで、
を満たす点です。すなわち、変換後の座標の値が変換前の座標の
これら事実より、象徴的に表せば
ここで
となります。以上から
を得ます。
ここで
ここで
また偏微分の連鎖律より
が成立します。Eq.(4)(5)を用いてEq.(3)を書き換えると
を得ます。これを
となります。
です。
以上から、作用積分が変換に対して不変ならば「公式1」が成立します。
つぎに変換が局所的な場合
を考えます。ここで
となります。このとき以下が成立します:
変換
に対し作用積分が不変ならば
が成立する。
Eq.(6)を恒等式Eq.(2)に代入すると
となります。この式で、
となります。これを上式に代入すると
となりEq.(7)が導かれます。
これで最初の恒等式群(id.1)-(id.4)を導く準備が整いました。
Eq.(7)の
を得ます。
Eq.(7)と(id.1)とより
が、
を得ます。
ここで
となります。これは(id.2-4)です。
2つほどコメントです:
以上で定理1が証明できました。
さて、(id.1-4)をもう少し詳しく見てみましょう。
(id.3)の両辺に
:
局所的な変換は大域的な変換を含むので、これらの恒等式からネーターの第1定理が導けます。
を(id.2)に代入すると
を得ます。(id.1)を用いて右辺を書き換えると
となります。
この式で、運動方程式
を得ます。これはカレントの保存則であり、ネーターの第1定理です。
Eq.(8)やカレントの保存は大域的な変換
(
に対する不変性からも導けます。
場の理論におけるネーターの第2定理を紹介しました。
局所的な変換に対する不変性により、独立な自由度が減ります。これはゲージ理論(局所的な変換に対して不変な理論)の大変重要な側面であることを付記しておきます。
おしまい。