はじめに
この記事は後の記事の準備として乗法付値の同値性について色々掘り下げていきます。
諸々の定義
乗法付値
体から非負実数への写像が乗法付値であるとは、が次の三つの条件を満たすことを言う。
とすると
の右辺はとは成り得ないのでがわかり、また明らかになので
を得る。
同値な乗法付値
体の乗法付値が同値であるとは
が成り立つことを言う。このとき
も成り立つ。
自明な乗法付値と同値な付値は自明な乗法付値しかないので、以下非自明な乗法付値のみを考える。
乗法付値の同値性と同値なつの命題
体の乗法付値が同値であることとあるがあってが成り立つことは同値である。
であればが同値となるのは自明なので逆を示す。
同値な乗法付値と
なるに対して
つまりとおく。
いまとすると
なる有理数があって
が成り立つことになり付値の同値性に矛盾。
同様にとすると
なる有理数があって
が成り立つことになり矛盾。
よってでなければならず、任意のに対しが成り立つことがわかる。
体の乗法付値が同値であることとが同じ位相を定めることは同値である。
命題1から同値な付値が同じ位相を定めることは自明なので逆を示す。
同じ位相を定める付値についてなるを考えると、
より、の定める位相においてが成り立つ。つまりの定める位相においてもが成り立ち、したがってとなるが、これはであることに他ならない。
よって
同様にその逆もわかり
を得る。
後の記事のための補題
(非自明な)絶対値の備わった完備体とその有限次拡大体について、の乗法付値であって
を満たすようなものは高々一つしか存在せず、存在すればはについて完備となる。
もしそのような乗法付値があったとすると、はのノルムとみなせ、
前回の記事
より完備体上の有限次線形空間のノルムは全て同値であったのでは同じ位相を定め、したがって乗法付値としても同値である(またはこれらについて完備となる)。
つまりあるがあってが成り立つが、なるを考えると
なのででなければならず主張を得る。