1
大学数学基礎解説
文献あり

乗法付値の同値性についての色々

406
0

はじめに

 この記事は後の記事の準備として乗法付値の同値性について色々掘り下げていきます。

諸々の定義

乗法付値

 体Kから非負実数R0への写像||乗法付値であるとは、||が次の三つの条件を満たすことを言う。

  • |x|=0x=0
  • |xy|=|x||y|
  • |x+y|max{|x|,|y|}

 |x||y|ならば|x+y|=max{|x|,|y|}が成り立つ。

 |x|<|y|とすると
|y|=|x+yx|max{|x+y|,|x|}
の右辺は|x|とは成り得ないので|y||x+y|がわかり、また明らかに|x+y||y|なので
|x+y|=|y|=max{|x|,|y|}
を得る。

同値な乗法付値

 体Kの乗法付値||,||が同値であるとは
|x|<1|x|<1
が成り立つことを言う。このとき
|x|=1|x|=1
|x|>1|x|>1
も成り立つ。

 自明な乗法付値|x|=1(x0)と同値な付値は自明な乗法付値しかないので、以下非自明な乗法付値のみを考える。

乗法付値の同値性と同値な2つの命題

 体Kの乗法付値||,||が同値であることとあるα>0があって||=||αが成り立つことは同値である。

 ||=||αであれば||,||が同値となるのは自明なので逆を示す。
 同値な乗法付値||,||
|x|<|y|,|x|,|y|0,1
なるx,yKに対して
α=log|x|log|x|,β=log|y|log|y|
つまり|x|=|x|α,|y|=|y|βとおく。
 いまα<βとすると
αβr<log|y|log|x|<r
なる有理数r=p/q(q>0)があって
|xp|>|yq|かつ|xp|=|x|pα<|y|qβ=|yq|
が成り立つことになり付値の同値性に矛盾。
 同様にα>βとすると
r<log|y|log|x|<αβr
なる有理数r=p/q(q>0)があって
|xp|<|yq|かつ|xp|=|x|pα>|y|qβ=|yq|
が成り立つことになり矛盾。
 よってα=βでなければならず、任意のxKに対し|x|=|x|αが成り立つことがわかる。

 体Kの乗法付値||,||が同値であることと||,||が同じ位相を定めることは同値である。

 命題1から同値な付値が同じ位相を定めることは自明なので逆を示す。
 同じ位相を定める付値||,||について|a|<1なるaKを考えると、
|an|=|a|n0(n)
より、||の定める位相においてan0が成り立つ。つまり||の定める位相においてもan0が成り立ち、したがって|an|0となるが、これは|a|<1であることに他ならない。
 よって
|a|<1|a|<1
同様にその逆もわかり
|a|<1|a|<1
を得る。

後の記事のための補題

 (非自明な)絶対値||の備わった完備体Kとその有限次拡大体Lについて、Lの乗法付値||Lであって
|x|L=|x|(xK)
を満たすようなものは高々一つしか存在せず、存在すればL||Lについて完備となる。

 もしそのような乗法付値||L,||Lがあったとすると、||L,||LLのノルムとみなせ、 前回の記事 より完備体上の有限次線形空間のノルムは全て同値であったので||L,||Lは同じ位相を定め、したがって乗法付値としても同値である(またLはこれらについて完備となる)。
 つまりあるα>0があって||L=||Lαが成り立つが、|a|0,1なるaKを考えると
|a|L=|a|=|a|L=|a|Lα0,1
なのでα=1でなければならず主張を得る。

参考文献

投稿日:2022617
更新日:2024629
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1065
259767
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 諸々の定義
  3. 乗法付値の同値性と同値な2つの命題
  4. 後の記事のための補題
  5. 参考文献