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では,階乗や二項係数が素数で割り切れる回数について見てきました.今回は,余りの世界から階乗や二項係数の性質を見ていきます.次のウィルソンの定理を使います.
のときは明らかに成立するので,が奇素数の時を考える.は素数なのでに対し,合同方程式の解は全て異なり,が一つずつ現れる.特にとなるのはの解だからのときのみである.よって,から積がとなるペアが組つくれるので,
これからこのウィルソンの定理を使って階乗や二項係数のでの性質を見ていきたいのですが,を素数で割った余りというのはが以上のときになってしまうだけで面白くありません.またそれでは二項係数のでの性質もわかりません.そこでここでは,のの指数をとして得られる整数に対して,で割った余りを考えることにします.そのためにまずは次の記号を導入しましょう.
正の整数,素数に対し,
とする.すなわち,での素因数の指数をとして得られる整数を表す.
これに対し,のでの計算式を見つけてしまえば
なので,二項係数のでの値も分かるのです!
(ただしはでのの逆元(の解)を表すとします)
それでは実際に計算していきましょう.まず,ウィルソンの定理を使うと,をで割った余りについて次の定理が得られます.
のうち,で回割り切れるものを書き出すと,
となる.これらにを施した値はにおいてそれぞれ
となる.これにはの並びが回現れ,最後にが現れるので,ウィルソンの定理よりこれらの積はにおいて
となる.よって,
ここで,前回扱ったルジャンドルの定理から,
以上より,
ここから二項係数については次が得られます.
に対し,
ただし,でにおけるの逆元(の解)を表すものとする.
これが特に重要になるのはのときです.前回紹介した通りこのとき全てのに対してとなります.よって次の定理が得られます.
に対し,全てのに対しとなるときのみであり,このとき
かなり綺麗な結果になりました.実際に使ってみて正しいかどうか確認しましょう!
解答
,なので,定理3より,
実際にwolfram alphaでを計算してみると,
となって正しいことが確認できる.
追記: 後から知ったのですが,定理3はLucasの定理という名前のある結構有名な定理でした.