タイトルの通り,二項係数や階乗がらみの整数論的性質
- 階乗や二項係数がある整数で割り切れる回数
- 階乗や二項係数をある整数で割った余り
などについて見ていきます.前者は今回の記事で,後者は次回紹介します.
階乗が素数で割り切れる回数は,次のルジャンドルの定理を用いて計算できます
ルジャンドルの定理
を正の整数,を素数とするとき,がを割り切る回数は,次の式で与えられる.
のうち素数の累乗で割り切れる整数の個数はである.よってこれをについて足し合わせれば良いので,
これで次のような問題に対応できます.
解答
がで何回割り切れるかを考えれば良い.
ルジャンドルの定理より,
よって,
ルジャンドルの定理は具体的な値に対してで割り切れる回数を計算するにはいいですが,ガウス記号を含んでいるので,文字を含んだ一般的な議論をする際にはとても扱いづらいです.そこで分母にがあることに注目して,の進法展開をこの式に代入してみます.すると次の式が得られます.
を正の整数,を素数とするとき,
ただし,はを進法展開したときの各位の和を表す.
この式から,二項係数が素数で割り切れる回数は次のようにもとめられます.
実はこの式の右辺は面白い意味付けができます.進法で引き算を筆算によって計算するとき,繰り下がりが置きなければとなりますが,繰り下がりが起きるとその位の数字が増えて,上の位が減るので(ただし上の位がであっても一旦にするものと考えてください),繰り下がりが起きるごとに各位の和はずつ増えていくことがわかります.よって次のように言い換えられます.
が素数で割り切れる回数は,進法における引き算で繰り下がりが起きる回数に等しい.
特に二項係数が素数で割り切れるかどうかは次で判定できます.入試問題でも数学オリンピックでも役立ちそうな事実です.
が素数で割り切れないことの必要十分条件は,,の進法展開を,
としたとき,すべてのに対して,が成立することである.
最後に,これらを利用して解ける問題を挙げて,終わりにしたいと思います.
が偶数となる最小の正の整数を求めよ.
(2015年東大)
解答
定理3の系より,を進法展開したとき,
より大きい位が存在すればいい.
だから,求める最小値は
- を自然数とする.をとおくとき,を満たすすべての整数について,二項係数は偶数であることを示せ
- 以下の条件を満たす自然数をすべて求めよ.
条件:を満たすすべての整数について二項係数は奇数である.
(1999年東大)
解答
(1)
より,どのようなを満たす整数をとっても,進法展開においてよりも大きい位が存在するので,定理3の系よりは偶数
(2)
定理3の系よりが題意を満たすには,を進法展開したときすべての桁がとなればよい.
よって,
がで割り切れる回数の最大値はいくらか.また,最大値を取るようなはの範囲にいくつあるか.
(自作問題)
解答
(5桁)だから,定理3よりで割り切れる回数は高々回.
などはこれを満たすから,求める最大値は.
とすると,がで回割り切れることの必要十分条件は,定理3より,
ただしより.であることに注意する.
よって求める個数は
いかかだったでしょうか.次回は,階乗や二項係数をある整数で割った余りについて考えていきます.
続き→
p進法展開からみる階乗と二項係数の整数論的性質 その2