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高校数学解説
文献あり

p進法展開からみる階乗と二項係数の整数論的性質 その1

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タイトルの通り,二項係数や階乗がらみの整数論的性質

  • 階乗や二項係数がある整数で割り切れる回数
  • 階乗や二項係数をある整数で割った余り

などについて見ていきます.前者は今回の記事で,後者は次回紹介します.

階乗が素数$p$で割り切れる回数は,次のルジャンドルの定理を用いて計算できます

ルジャンドルの定理

$n$を正の整数,$p$を素数とするとき,$p$$n!$を割り切る回数$ord_p(n!)$は,次の式で与えられる.
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{\infty} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $$

$1,2,3,\cdots,n$のうち素数の累乗$p^i$で割り切れる整数の個数は$\left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $である.よってこれを$i=1,2,3,\cdots$について足し合わせれば良いので,
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{\infty} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $$

これで次のような問題に対応できます.

$100!$の末尾に$0$はいくつ並ぶか.

解答
$100!$$10$で何回割り切れるかを考えれば良い.
ルジャンドルの定理より,
$$ord_2(100!)=\left\lfloor \frac{100}{2} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{4} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{8} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{16} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{32} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{64} \right \rfloor = 97$$
$$ord_5(100!)=\left\lfloor \frac{100}{5} \right \rfloor + \left\lfloor \frac{100}{25} \right \rfloor = 24$$
よって,$ord_{10}(100!)=\min\{ord_2(100!),\ ord_5(100!)\}=24$

ルジャンドルの定理は具体的な値に対して$p$で割り切れる回数を計算するにはいいですが,ガウス記号を含んでいるので,文字を含んだ一般的な議論をする際にはとても扱いづらいです.そこで分母に$p^i$があることに注目して,$n$$p$進法展開$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}$をこの式に代入してみます.すると次の式が得られます.

$n$を正の整数,$p$を素数とするとき,
$$ord_p(n!)=\frac{n-s_p(n)}{p-1}$$
ただし,$s_p(n)$$n$$p$進法展開したときの各位の和を表す.

$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}$とおく.
ルジャンドルの定理より,
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{s} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor =\sum_{i=1}^{s}\sum_{j=i}^{s}a_jp^{j-i}=\sum_{j=1}^{s}\sum_{i=1}^{j}a_jp^{j-i}$$$$=\frac{1}{p-1}\sum_{j=1}^{s}(p^j-1)a_j=\frac{\sum_{j=0}^{s}p^ja_j-\sum_{j=0}^{s}a_j}{p-1}=\frac{n-s_p(n)}{p-1} $$

この式から,二項係数が素数$p$で割り切れる回数は次のようにもとめられます.

$$ord_p({}_n C _{k})=\frac{s_p(k)+s_p(n-k)-s_p(n)}{p-1}$$

実はこの式の右辺は面白い意味付けができます.$p$進法で引き算$n-k$を筆算によって計算するとき,繰り下がりが置きなければ$s_p(n-k)=s_p(n)-s_p(k)$となりますが,繰り下がりが起きるとその位の数字が$p$増えて,上の位が$1$減るので(ただし上の位が$0$であっても一旦$-1$にするものと考えてください),繰り下がりが起きるごとに各位の和は$p-1$ずつ増えていくことがわかります.よって次のように言い換えられます.

${}_n C _{k}$が素数$p$で割り切れる回数は,$p$進法における引き算$n-k$で繰り下がりが起きる回数に等しい.

特に二項係数が素数$p$で割り切れるかどうかは次で判定できます.入試問題でも数学オリンピックでも役立ちそうな事実です.

${}_n \mathrm{C}_k$が素数$p$で割り切れないことの必要十分条件は,$n$,$k$$p$進法展開を,
$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}, k={b_sb_{s-1}\cdots b_0}_{(p)}$
としたとき,すべての$0\leq i \leq s$に対して,$a_i\geq b_i$が成立することである.

最後に,これらを利用して解ける問題を挙げて,終わりにしたいと思います.

${}_{2015} C_{m}$が偶数となる最小の正の整数$m$を求めよ.
(2015年東大)

解答
定理3の系より,$m$$2$進法展開したとき,
$2015$より大きい位が存在すればいい.

$2015={11111011111}_{(2)}$だから,求める最小値は
${100000}_{(2)}=32$

  1. $k$を自然数とする.$m$$m=2^k$とおくとき,$0< n< m$を満たすすべての整数$n$について,二項係数${}_{m} C_{n}$は偶数であることを示せ
  2. 以下の条件を満たす自然数$m$をすべて求めよ.
    条件:$0\le n \le m$を満たすすべての整数$n$について二項係数${}_{m} C_{n}$は奇数である.

(1999年東大)

解答
(1)
$m={1000\cdots00}_{(2)}$より,どのような$0< n< m$を満たす整数$n$をとっても,$2$進法展開において$m$よりも大きい位が存在するので,定理3の系より${}_{m} C_{n}$は偶数

(2)
定理3の系より$m$が題意を満たすには,$m$$2$進法展開したときすべての桁が$1$となればよい.
よって,$m=2^k-1 (k=1,2,3,\cdots)$

${}_{2022} C_{n}$$5$で割り切れる回数の最大値はいくらか.また,最大値を取るような$n$$0\leq n\leq2022$の範囲にいくつあるか.
(自作問題)

解答
$2022={31042}_{(5)}$ (5桁)だから,定理3より$5$で割り切れる回数は高々$4$回.
${24444}_{(5)}$などはこれを満たすから,求める最大値は$4$

$n={a_4a_3a_2a_1a_0}_{(5)}$とすると,${}_{2022} C_{n}$$5$$4$回割り切れることの必要十分条件は,定理3より,
  $a_3\ge 1 \land a_2\ge 0 \land a_1\ge 4 \land a_0\ge 3$
ただし$n\le2022$より.$0 \le a_4\le 2$であることに注意する.

よって求める個数は
  $3\times 4\times 5\times 1\times 2=120$

いかかだったでしょうか.次回は,階乗や二項係数をある整数で割った余りについて考えていきます.
続き→ p進法展開からみる階乗と二項係数の整数論的性質 その2

参考文献

投稿日:2022625

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dragoemon
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