タイトルの通り,二項係数や階乗がらみの整数論的性質
などについて見ていきます.前者は今回の記事で,後者は次回紹介します.
階乗が素数$p$で割り切れる回数は,次のルジャンドルの定理を用いて計算できます
$n$を正の整数,$p$を素数とするとき,$p$が$n!$を割り切る回数$ord_p(n!)$は,次の式で与えられる.
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{\infty} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $$
$1,2,3,\cdots,n$のうち素数の累乗$p^i$で割り切れる整数の個数は$\left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $である.よってこれを$i=1,2,3,\cdots$について足し合わせれば良いので,
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{\infty} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor $$
これで次のような問題に対応できます.
$100!$の末尾に$0$はいくつ並ぶか.
ルジャンドルの定理は具体的な値に対して$p$で割り切れる回数を計算するにはいいですが,ガウス記号を含んでいるので,文字を含んだ一般的な議論をする際にはとても扱いづらいです.そこで分母に$p^i$があることに注目して,$n$の$p$進法展開$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}$をこの式に代入してみます.すると次の式が得られます.
$n$を正の整数,$p$を素数とするとき,
$$ord_p(n!)=\frac{n-s_p(n)}{p-1}$$
ただし,$s_p(n)$は$n$を$p$進法展開したときの各位の和を表す.
$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}$とおく.
ルジャンドルの定理より,
$$ord_p(n!)=\sum_{i=1}^{s} \left\lfloor \frac{n}{p^i} \right \rfloor
=\sum_{i=1}^{s}\sum_{j=i}^{s}a_jp^{j-i}=\sum_{j=1}^{s}\sum_{i=1}^{j}a_jp^{j-i}$$$$=\frac{1}{p-1}\sum_{j=1}^{s}(p^j-1)a_j=\frac{\sum_{j=0}^{s}p^ja_j-\sum_{j=0}^{s}a_j}{p-1}=\frac{n-s_p(n)}{p-1}
$$
この式から,二項係数が素数$p$で割り切れる回数は次のようにもとめられます.
$$ord_p({}_n C _{k})=\frac{s_p(k)+s_p(n-k)-s_p(n)}{p-1}$$
実はこの式の右辺は面白い意味付けができます.$p$進法で引き算$n-k$を筆算によって計算するとき,繰り下がりが置きなければ$s_p(n-k)=s_p(n)-s_p(k)$となりますが,繰り下がりが起きるとその位の数字が$p$増えて,上の位が$1$減るので(ただし上の位が$0$であっても一旦$-1$にするものと考えてください),繰り下がりが起きるごとに各位の和は$p-1$ずつ増えていくことがわかります.よって次のように言い換えられます.
${}_n C _{k}$が素数$p$で割り切れる回数は,$p$進法における引き算$n-k$で繰り下がりが起きる回数に等しい.
特に二項係数が素数$p$で割り切れるかどうかは次で判定できます.入試問題でも数学オリンピックでも役立ちそうな事実です.
${}_n \mathrm{C}_k$が素数$p$で割り切れないことの必要十分条件は,$n$,$k$の$p$進法展開を,
$n={a_sa_{s-1}\cdots a_0}_{(p)}, k={b_sb_{s-1}\cdots b_0}_{(p)}$
としたとき,すべての$0\leq i \leq s$に対して,$a_i\geq b_i$が成立することである.
最後に,これらを利用して解ける問題を挙げて,終わりにしたいと思います.
${}_{2015} C_{m}$が偶数となる最小の正の整数$m$を求めよ.
(2015年東大)
(1999年東大)
${}_{2022} C_{n}$が$5$で割り切れる回数の最大値はいくらか.また,最大値を取るような$n$は$0\leq n\leq2022$の範囲にいくつあるか.
(自作問題)
いかかだったでしょうか.次回は,階乗や二項係数をある整数で割った余りについて考えていきます.
続き→
p進法展開からみる階乗と二項係数の整数論的性質 その2