はじめに
今回は終結式がばっちり活躍してくれる問題を持ってきました.
※その他の問題たちが
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問題と解答
体上の2変数多項式が共通因子を持たないならば,集合
は高々有限個の元からなることを示せ.ここで,高々有限個の元からなるとは,空集合であるか,もしくは有限集合であるかを意味することとする.(東京女子大)
感想
以下に示す終結式に関する補題1を知っているか,という問題だと思います.私は知らなかったので解くのに時間がかかりました…
因みに,が有限体であれば示すべき事実は自明となります(が有限集合となるので).また,が無限体の場合,という多項式たちの共通零点の集合は
という無限集合となってしまします.これはがという共通因子を持っていることが原因なので,問題文にある「共通因子を持たない」という条件は,を一般の体とする限り外すことができません.
証明を表示
集合
を定義しておく.要はの元の第1成分全体からなる集合がで,第2成分全体からなる集合がである.このときであることに注意する.
とみて,のに関する次数をとする.の終結式をとおく.このとき,で,に関してかつ
を満たすものが存在する(補題1).が零多項式であるとすると,
となる.に関してであることから,の素因子全てがを割り切ることはない.従っての素因子でを割り切るものが存在するが,これはが共通因子を持たないことに矛盾.従っては零多項式ではない.は体上の1変数多項式で零多項式でないから,その根は高々有限個である.
とすると,あるが存在してとなるから,が成り立つ.つまりはの根である.の根は高々有限個であったからは高々有限な集合である.が空でないとき,とし,
とおく.は体上の1変数多項式であるからその根は高々有限個である.はを満たすから,は高々有限な集合である.そして
であるから,も高々有限な集合である.であったから,も高々有限な集合である.(証明終)
今回用いた事実
終結式
は可換環上の共に次数が以上の1変数多項式で,
と表されるとする.このとき,行列式
をの終結式といい,で表す.但し,今の行列でたちが現れる行は行,たちが現れる行は行であり,何も書かれていない部分はである.
一般的に書くと見づらいのでいくつか具体例を挙げておきます.とし,とすると,
となります.また,とし,とすると,
となります.
を可換環上の共に次数が以上の1変数多項式とするとき,上の多項式で,かつ
を満たすものが存在する.
証明を表示
によって
と表す.このとき,
が成り立つので,行列を用いて表すと,
となる.右辺の行列をとし,の随伴行列をとすると,一般論から
が成り立つ.ここでは単位行列である.従って,今の等式に左からを掛けると
が成り立つ.の第行をとすると,両辺の第成分を比較することで
が成り立つ.よって題意は示された.(証明終)
発展
今回得た結果は係数体が有限体であれば自明であることは上で述べました.そして,それは変数を増やしても同様です.
しかし,が無限体の場合は,変数を増やした先では状況が異なるようです.例えばを
で定めると,は共通因子を持ちませんが,それらの共通零点の集合は
という無限集合となってしまいます.
なら,多項式の数を増やせば共通零点が有限個となるのではないかと思いますが,実はそう簡単にはいきません.例えばを
で定めると,はどの2つも共通因子を持ちませんが,それらの共通零点の集合は,やはりという無限集合となってしまいます.より一般に,任意のに対してを
で定めると,任意のに対してはと共通因子を持たず,また異なるに対しても共通因子を持ちません.しかし,たちとたちとの共通零点の集合はという無限集合となります.
つまり,共通零点を取る多項式の数を増やしても,その共通零点の集合が無限集合となることがあるということです.しかも今のようにどんなに多項式を増やしても共通零点が有限個とならない場合もあります.これは,上の問題の中で示した2変数のときの状況と大きく内容が異なっていて面白いですね.
今回の記事は以上です.
最後までお読み頂きありがとうございました.