1
大学数学基礎解説
文献あり

代数学をやるその12 終結式が光る問題

176
0

はじめに

今回は終結式がばっちり活躍してくれる問題を持ってきました.

※その他の問題たちが こちらのまとめページ から見れます.良ければリンクをご利用ください.

問題と解答

K上の2変数多項式f(x,y),g(x,y)が共通因子を持たないならば,集合
C:={(a,b)K×K|f(a,b)=g(a,b)=0}
は高々有限個の元からなることを示せ.ここで,高々有限個の元からなるとは,空集合であるか,もしくは有限集合であるかを意味することとする.(東京女子大)

感想

以下に示す終結式に関する補題1を知っているか,という問題だと思います.私は知らなかったので解くのに時間がかかりました…
因みに,Kが有限体であれば示すべき事実は自明となります(K×Kが有限集合となるので).また,Kが無限体の場合,f(x,y)=x1,g(x,y)=y(x1)という多項式たちの共通零点の集合は
{(1,y)K×K|yK}
という無限集合となってしまします.これはf,gx1という共通因子を持っていることが原因なので,問題文にある「共通因子を持たない」という条件は,Kを一般の体とする限り外すことができません.

証明を表示

集合
A:={aK|bK(a,b)C}
B:={bK|aK(a,b)C}
を定義しておく.要はCの元の第1成分全体からなる集合がAで,第2成分全体からなる集合がBである.このときCA×Bであることに注意する.
f(x,y),g(x,y)(K[y])[x]とみて,f,gxに関する次数をm,nとする.f,gの終結式をR(y)K[y]とおく.このとき,h1,h2(K[y])[x]で,xに関してdegh1n1,degh2m1かつ
h1(x,y)f(x,y)+h2(x,y)g(x,y)=R(y)
を満たすものが存在する(補題1).R(y)が零多項式であるとすると,
h1(x,y)f(x,y)=h2(x,y)g(x,y)
となる.xに関してdegh1n1<n=deggであることから,gの素因子全てがh1を割り切ることはない.従ってgの素因子でfを割り切るものが存在するが,これはf,gが共通因子を持たないことに矛盾.従ってR(y)は零多項式ではない.R(y)体上の1変数多項式で零多項式でないから,その根は高々有限個である
bBとすると,あるaKが存在して(a,b)Cとなるから,R(b)=0が成り立つ.つまりbBR(y)の根である.R(y)の根は高々有限個であったからBは高々有限な集合である.Bが空でないとき,B={b1,,bn}とし,
Ai={aK|f(a,bi)=g(a,bi)=0}
とおく.f(x,bi)は体上の1変数多項式であるからその根は高々有限個である.(a,bi)Aif(a,bi)=0を満たすから,Aiは高々有限な集合である.そして
A=i=1nAi
であるから,Aも高々有限な集合である.CA×Bであったから,Cも高々有限な集合である.(証明終)

今回用いた事実

終結式

f(x),g(x)は可換環A上の共に次数が1以上の1変数多項式で,
f(x)=amxm++a1x+a0
g(x)=bnxn++b1x+b0
と表されるとする.このとき,行列式
|amam1a1a0amam1a1a0amam1a1a0bnbn1b1b0bnbn1b1b0bnbn1b1b0|
f,g終結式といい,R(f,g)で表す.但し,今の行列でaiたちが現れる行はn行,biたちが現れる行はm行であり,何も書かれていない部分は0である.

一般的に書くと見づらいのでいくつか具体例を挙げておきます.A=Zとし,f(x)=x2+x+1,g(x)=3x3+2x2+x+1とすると,
R(f,g)=|21121121132113211|=9
となります.また,A=Z[y]とし,f(x)=y2x+y+1,g(x)=(y2+1)x2+yx+2とすると,
R(f,g)=|y2y+1y2y+1y2+1y2|=y5+2y4+y3+y2+2y+1
となります.

f,gを可換環A上の共に次数が1以上の1変数多項式とするとき,A上の多項式h1,h2で,degh1n1,degh2m1かつ
h1f+h2g=R(f,g)
を満たすものが存在する.

証明を表示

a0,,am,b0,,bnAによって
f(x)=amxm++a1x+a0
g(x)=bnxn++b1x+b0
と表す.このとき,
xn1f(x)=amxm+n1++a1xn+a0xn1xf(x)=amxm+1++a1x2+a0xf(x)=amxm++a1x+a0xm1g(x)=bnxm+n1++b1xm+b0xm1xg(x)=bnxn+1++b1x2+b0xg(x)=bnxn++b1x+b0
が成り立つので,行列を用いて表すと,
(xn1f(x)xf(x)f(x)xm1g(x)xg(x)g(x))=(amam1a1a0amam1a1a0amam1a1a0bnbn1b1b0bnbn1b1b0bnbn1b1b0)(xm+n1xm+n2x1)
となる.右辺の行列をMとし,Mの随伴行列をMとすると,一般論から
MM=MM=R(f,g)I
が成り立つ.ここでIは単位行列である.従って,今の等式に左からMを掛けると
M(xn1f(x)xf(x)f(x)xm1g(x)xg(x)g(x))=R(f,g)(xm+n1xm+n2x1)
が成り立つ.Mの第m+n行をc1,,cm+nとすると,両辺の第m+n成分を比較することで
(c1xn1++cn1x+cn)f(x)+(cn+1xm1++cm+n1x+cm+n)g(x)=R(f,g)
が成り立つ.よって題意は示された.(証明終)

発展

今回得た結果は係数体Kが有限体であれば自明であることは上で述べました.そして,それは変数を増やしても同様です.

しかし,Kが無限体の場合は,変数を増やした先では状況が異なるようです.例えばf,gR[x,y,z]
f(x,y,z)=x2+y2+z25,g(x,y,z)=z1
で定めると,f,gは共通因子を持ちませんが,それらの共通零点の集合は
{(a,b,c)R3|a2+b2=4,c=1}
という無限集合となってしまいます.

なら,多項式の数を増やせば共通零点が有限個となるのではないかと思いますが,実はそう簡単にはいきません.例えばf,g,hR[x,y,z]
f(x,y,z)=x2+y2+z25,g(x,y,z)=x2+y24z,h(x,y,z)=z1
で定めると,f,g,hはどの2つも共通因子を持ちませんが,それらの共通零点の集合は,やはり{(a,b,c)R3|a2+b2=4,c=1}という無限集合となってしまいます.より一般に,任意のαRに対してpαR[x,y,z]
pα(x,y,z)=x2+y2+α(z1)4
で定めると,任意のαRに対してpαf,hと共通因子を持たず,また異なるα,βRに対してpα,pβも共通因子を持ちません.しかし,pαたちとf,g,hたちとの共通零点の集合は{(a,b,c)R3|a2+b2=4,c=1}という無限集合となります.

つまり,共通零点を取る多項式の数を増やしても,その共通零点の集合が無限集合となることがあるということです.しかも今のようにどんなに多項式を増やしても共通零点が有限個とならない場合もあります.これは,上の問題の中で示した2変数のときの状況と大きく内容が異なっていて面白いですね.

今回の記事は以上です.
最後までお読み頂きありがとうございました.

参考文献

[2]
永田雅宜, 復刻版 大学院への代数学演習, 現代数学社, 2021
[3]
代数学2 環と体とガロア理論, 雪江明彦, 日本評論社, 2010
投稿日:202276
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

certain
certain
32
18655
素朴な問題が特に好きです.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 問題と解答
  3. 今回用いた事実
  4. 発展
  5. 参考文献