以前書いた モノイド環と準加算 という記事を多項式環を用いてブラッシュアップします.
詳しい導入は上記記事を参照してください.
累乗は乗算を有限回繰り返したものである:
また,乗算も加算を有限回繰り返したものである:
では,同様にして有限回繰り返すことで加算となるような演算(これを準加算という)は定義できるだろうか?
自然数上あるいは整数上でそのまま準加算を定義することが出来ないことが知られている(上記記事参照).この記事では和と積を持つ環
この記事では環と言えば常に単位的可換環を表す.
とすると,これは環になる.この
紛れのない場合
と表され,これは
さて,これはちょうど実現したい準加算である.実際に通常の指数法則により
と定義することにより,
省略(群環の構成から明らか).
(単射)
とすると,右辺に同じ単項式が現れないので
(全射)
任意の
イデアル
と定義する.
こちらも紛れのない場合
自然射影
より
と剰余でき,これを
となる.従って任意の
が成り立つ.
という完全列が存在する.
命題3より
となるが,
であるので指数が負の項も剰余され正の項と同値になる.
あるイデアル
と書ける.
例2より
となる.これはちょうど
を見ると,
の3つの元しかなく,
となっている.
以上より
環
となるとき,
下段埋め込み
が存在する.
省略(群環の普遍性から成り立つ.)
をそれぞれ
このように,下段埋め込みが存在すればその上の下段環を構成することができる.
以上です.また分かったことがあったら書いていきます.