https://mathlog.info/articles/3561 の解説です。
$$ \lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^n\frac{{}_n\mathrm{C}_k^2}{(2k+1){}_{2n}\mathrm{C}_{2k}} $$を求めてください。
二項係数ではよくある話ですが、この和は$n$の式で表すことができます。こんな感じです。
$$
\sum_{k=0}^{n}\frac{{}_n\mathrm{C}_k^2}{(2k+1){}_{2n}\mathrm{C}_{2k}}=\frac{16^n}{(2n+1){}_{2n}\mathrm{C}_n^2}
$$
で、これがどっから出てきたんだよっつー話ですが、ちょっと左辺を変形してみます。
$$
\sum_{k=0}^{n}\frac{{}_n\mathrm{C}_k^2}{(2k+1){}_{2n}\mathrm{C}_{2k}}=\sum_{k=0}^n\frac{\left(\frac{n!}{k!(n-k)!}\right)^2}{(2k+1)\frac{(2n)!}{(2k)!(2n-2k)!}}=\frac{n!^2}{(2n)!}\sum_{k=0}^n\frac{(2k)!}{(2k+1)k!^2}\cdot\frac{(2n-2k)!}{(n-k)!^2}
$$
二項係数なので当たり前ですけど、$k$項目が$k$の式と$n-k$の式の積になってます。いわゆる畳み込みというやつですか。で、次の3つの式を使います。
$$
\arcsin{x}=\sum_{n=0}^\infty\frac{{}_{2n}\mathrm{C}_n}{(2n+1)4^n}x^{2n+1}
$$
$$\frac1{\sqrt{1-x^2}}=\sum_{n=0}^\infty\frac{{}_{2n}\mathrm{C}_n}{4^n}x^{2n}
$$
$$\frac{\arcsin{x}}{\sqrt{1-x^2}}=\sum_{n=0}^\infty\frac{4^nn!^2}{(2n+1)!}x^{2n+1}
$$
1つ目と2つ目の式は有名ですが、3つ目の式はちょっとアレかもですね。$(\arcsin{x})^2$のテイラー展開を求めるのに使われる式ですね。で、左辺を見ると、3つ目の式は1つ目の式と2つ目の式の積になっています。なので、
$$
\left(\sum_{n=0}^\infty\frac{{}_{2n}\mathrm{C}_n}{(2n+1)4^n}x^{2n+1}\right)\cdot\left(\sum_{n=0}^\infty\frac{{}_{2n}\mathrm{C}_n}{4^n}x^{2n}\right)=\sum_{n=0}^\infty\frac{4^nn!^2}{(2n+1)!}x^{2n+1}
$$
($|x|<1$で絶対収束)
コーシー積というやつですね。ほんで、この式の左辺の$x^{2n+1}$の係数が
$$
\sum_{k=0}^n\frac{{}_{2k}\mathrm{C}_k}{(2k+1)4^k}\cdot\frac{{}_{2n-2k}\mathrm{C}_{n-k}}{4^{n-k}}=\frac1{4^n}\sum_{k=0}^n\frac{(2k)!}{(2k+1)k!^2}\cdot\frac{(2n-2k)!}{(n-k)!^2}
$$
となるのわかりますかね。実際計算してみると分かります。したがって係数比較すれば、
$$
\frac1{4^n}\sum_{k=0}^{n}\frac{(2k)!}{(2k+1)k!^2}\cdot\frac{(2n-2k)!}{(n-k)!^2}=\frac{4^nn!^2}{(2n+1)!}
$$
がわかるので、
$$\begin{split}
\sum_{k=0}^{n}\frac{{}_n\mathrm{C}_k^2}{(2k+1){}_{2n}\mathrm{C}_{2k}}&=\frac{n!^2}{(2n)!}\sum_{k=0}^n\frac{(2k)!}{(2k+1)k!^2}\cdot\frac{(2n-2k)!}{(n-k)!^2}\\&=\frac{4^nn!^2}{(2n)!}\cdot\frac{4^nn!^2}{(2n+1)!}\\&=\frac{16^n}{(2n+1){}_{2n}\mathrm{C}_n^2}
\end{split}$$
であるとわかります。同じように畳み込みのいろんな等式が導けますね。
で、ウォリスの公式$$ \lim_{n \to \infty}\frac{\sqrt{n}{}_{2n}\mathrm{C}_n}{4^n}=\frac1{\sqrt{\pi}} $$
を用いれば、
$$
\lim_{n \to \infty}\sum_{k=0}^{n}\frac{{}_n\mathrm{C}_k^2}{(2k+1){}_{2n}\mathrm{C}_{2k}}=\frac\pi2
$$
となることがわかります。
良い問題というのは、素朴な問いに深い考察を必要としたり、意外な発見をもたらすようなものだと思うのですが、その点これは良い問題ではないですね。良い問題出そうとしたわけじゃないからいいもん。ところでこれ組み合わせ論的に説明できたりするのでしょうかね?