こんにちは。2本目の記事になります。1本目は
こちら
。
さて、前回は整域が云々の話で終わりました。まずは、環$R$において、元$a$が乗法に関して逆元$a^{-1}$を持つ時、つまり
$ab=1$
なる$b\in\mathbb{R}$が存在するとき、$a$は可逆であると言い、$b=a^{-1}$です。そして、$R$が可換環で、かつ零元0以外の任意の元が可逆であるとき、$R$は体であると言います。例えば
は体で、それぞれ「有理数体」、「実数体」、「複素数体」と言います。
$p$を素数とするとき、剰余環$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体である。
$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$において、$\bar{a}\neq0$とすると、最大公約数$(a,p)=1$である。また、一次不定方程式の性質から、この時
$ax+py=1$
なる$x,y\in\mathbb{Z}$が存在します。すると
$ax\equiv1\;(mod\;p)$
です。つまり、$\overline{ax}=\bar{1}=1$が成り立つので、$\bar{a}$は可逆です($\bar{a}^{-1}=\bar{x}$だと思います)。
よって$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体であることが言えました。
(証明終り)
体$K$の元の個数を$K$の位数と言います。位数有限の体を有限体といいます。また、素数$p$に対する剰余環$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は位数が$p$の有限体です。
前の記事で同じようなことを書いたと思います。それに加えて$p$が素数だから、体であるという仮定を満たしているんでしょうね。きっと。
可換環$R$から可換環$R'$への写像$f:R\longmapsto R'$が次の条件
$f(a+b)=f(a)+f(b),\;f(ab)=f(a)f(b),\;f(1)=1$
を満たすとき、$f$を準同型写像と言います。可換環の準同型写像が全単射であるとき、$f$を同型写像と言って、その関係を同型と言い、$R\cong R'$と表すそうです(友達が教えてくれました)。
準同型写像$f$に対して、$0\in R'$の逆像
$kerf=\{a\in R\;|\;f(a)=0\}$
を$f$の核またはカーネルと言います。要は、$f$に入れて0が返ってくるような元のことです。$kerf$は$R$のイデアルです。
剰余環$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}$と同様に、可換環$R$のイデアル$I$に対して剰余環$R/I$を定めます。拡張みたいなものです。$a,b\in R$について
$a\equiv b\;(mod\;m)\iff a-b\in I$
そして、この時$aとb$はイデアル$I$に関して合同と言います。さらに、合同であるということは同値関係です。つまり、次の3つを満たします。
$a$と合同な元全体の集合$\bar{a}$を、$I$に関する剰余類と言います。これは次のように表せます。
$\bar{a}=\{b\in R\;|\;a\equiv b\;(mod\;m)\}=a+I$
剰余類に関しては次が成り立ちます。
剰余類の意味を考えれば理解できると思います。
各剰余類から代表元をただ1つ選んで、それらの集合を$\{a_\nu\;|\;\nu\in\mathbb{N}\}$とします。この集合を$I$に関する完全代表系と言います。この時
これも明らかですね。
また、この剰余類における和や積も同様に定められるので、$R/I$は可換環になります。
$f$を可換環$R$から可換環$R'$への準同型写像とするとき、写像$a+kerf\longmapsto f(a)$より
$R/kerf\cong f(R)$
$f$について
$f(a+kerf)=f(a)$
だから、$a\longmapsto f(a)$としてよく、これは全射です。また、$R/kerf$の剰余類を1つ$\bar{a}$を選べば異なる剰余類$\bar{b}$に対して
$f(\bar{a})\neq f(\bar{b})$
よって単射であるから
$R/kerf\cong f(R)$
(証明終り)
2つの環$R$と$R'$の直積集合
$R\times R'=\{(a,a')\;|\;a\in R,a'\in R'\}$
の2元$(a,a'),(b,b')$について、和と積を
$(a,a')+(b,b')=(a+b,a'+b')$
$(a,a')(b,b')=(ab,a'b')$
と定義します。すると$R\times R'$は環となります。
例えば、$(m,n)=1$の時
$f:\mathbb{Z}/mn\mathbb{Z}\longmapsto\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$
を$a+(mn)\longmapsto(a+(m),a+(n))$と定義すると
が成り立ちます。環の準同型定理より
$\mathbb{Z}/mn\mathbb{Z}\cong \mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$
これにより、次の命題を得ます。
$m=p_1^{e_1} \cdots p_r^{e_r}$と素因数分解されるとき
$\mathbb{Z}/m\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/p_1^{e_1}\mathbb{Z}\times \cdots \mathbb{Z}/p_r^{e_r}\mathbb{Z}$
となって右辺は$r$個の環の直積をなす。
今日はここまでです。読んでくださってありがとうございました。