この記事では今後の記事に向けてヤコビの楕円関数の基本的な性質について解説していきます。
第一種不完全楕円積分
の逆関数を
と定める。これらの関数
必要に応じて
楕円積分に付随するパラメーター
また慣例として第一種完全楕円積分
について
より(逆関数定理から)
楕円積分の性質
であることや
なので
となります。
なので
となります。
が成り立つ。
が成り立つのでこの両辺を微分することで
つまり
を得る。
あとは
を微分することでわかる。
と表すことができます。これは同じ基本的な楕円関数である
ワイエルシュトラスの
の類似のようなものとなっています。
が成り立つ。
上の結果より
と計算できる。
が成り立つ。
ある程度発見的に説明しておくと
という加法定理があるので、これを両立するようなものを考えると
という式が浮かび上がってきます。
簡単のため
このとき
が不変であること、つまりその
となるのでこれが
を示せばよい。
そのことは定理1より
であったことと定理1系より
であったことから
と確かめられる。
よって
は
を頑張って変形することでわかる。
あるいは
の不変性を示すことでも確かめられるが、あまりおすすめはしない。
ヤコビの楕円関数は
および
が成り立つ。
加法定理において
および
に注意すると
がわかり、この式において
がわかる。これに
がわかるので、再び加法定理において
を得る。
これらの式から次のようにグラフを書くことができます。
k=1/√2のときの各関数のグラフ(K=1.854074...)
が成り立つ。
という関数を考えると
から
が成り立つので、
がわかる。また
が成り立つので、逆関数の一意性より
を得る。
あとは
よりわかる。
いま
に注意すると、定理3と加法定理よりヤコビの楕円関数は次のように複素関数に拡張されることがわかります。
が成り立つ。
この式と定理2系の式
から
に注意するとわかる。
を一位の零点に持ち(導関数の値は
を一位の極に持つ(留数の値は
および
に注意して領域
が成り立つので、上の表からそのような
に限ることがわかる。また定理4から
であったのでこれは一位の極になっていることがわかる。
またこの公式から
となることがわかるので領域内の零点は
のみであることがわかる。
同様にして以下のことがわかります。
を一位の零点に
を一位の極に持つ。
を一位の零点に
を一位の極に持つ。
加法定理より
となるので、
を得る。あとは
からわかる。
半数公式に
が成り立つ。特に
が成り立つ。