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解説大学数学以上
文献あり

楕円関数論の基礎のキソ

3020
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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{D}[0]{\Delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{E}[0]{\eta} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{H}[0]{\mathbb{H}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{P}[0]{\mathcal{P}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\tau} \newcommand{T}[0]{\Theta} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

この記事ではワイエルシュトラスの$\wp$関数を中心とした楕円関数論の基礎的な話について解説していきます。
また楕円関数の話をするにあたって保形形式の話もちょっぴり織り交ざって来ますので前回の記事( 前編 後編 )に目を通しておいた方がより理解が深まると思います。

楕円関数とは

楕円関数とはざっくり二重周期を満たすような関数のことを言います。つまりある$\R$上線形独立な複素数$\o_1,\o_2$と任意の整数$m,n$に対して$f(z+m\o_1+n\o_2)=f(z)$が成り立つような関数のことを言います。

なぜ"楕円"関数なのか

上での楕円関数の説明を見るに一見楕円とは全く関係ないように見えますが、これは"楕円"の周長を求める際に出てくる(第2種)"楕円"積分
$\dis E_k(x)=\int^x_0\sqrt{\farc{1-k^2t^2}{1-t^2}}dt$
の派生である第1種楕円積分
$\dis K_k(x)=\int^x_0\frac{dt}{\sqrt{(1-t^2)(1-k^2t^2)}}$
の逆関数を考えたヤコビの$\mathrm{sn}$関数というもの(を複素変数に拡張したもの)が二重周期性を持つことを発端としています。

楕円関数と格子

楕円関数の具体的なステートメントは以下のようになっています。

格子

$\R$上線形独立な(つまり一方がもう一方の実数倍で表されない)複素数$\o_1,\o_2$に対して
$L=\Z\o_1+\Z\o_2=\{m\o_1+n\o_2|m,n\in\Z\}$
と表されるような集合$L$のことを格子と言う。このとき$\o_1,\o_2$のことを基本周期という。

楕円関数

複素数平面全域で定義される有理型関数$f$であってある格子$L$について
$f(z+\o)=f(z)$
が任意の$z\in\C,\o\in L$に成り立つようなもののことを楕円関数という。

例えば上で挙げたヤコビの$\mathrm{sn}$関数($k=1$)はレムニスケート周率$\varpi$について格子$L=\Z(1+i)\varpi+\Z(1-i)\varpi$の楕円関数であるみたいです( こちらの文献 参照)。

ここで楕円関数の話をする前に少し格子についての話をしておきましょう。
まず二つの格子$L,L'$の間に同値関係を定めておきます。

二つの格子$L,L'$が等価(equivalent)であるとはある複素数$\a\neq0$が存在して$L'=\a L$が成り立つことを言う。

これは格子$L$を回転させたり拡大縮小させたりしてできる格子$L'$$L$と似たようなものだよね、と言っているような感じです。そして任意の格子にはそれと等価な次のような標準形が(複数)存在します。

任意の格子$L=\Z\o_1+\Z\o_2$に対して$L_\t=\Z+\Z\t$$L$と等価となるような$\t\in\H=\{z\in\C|\Im(z)>0\}$が存在する。

$\Im(\farc{\o_2}{\o_1})=0$とするとある実数$a$が存在して$\o_2=a\o_1$となるが、これは$L=\Z\o_1+\Z\o_2$が格子であることに矛盾。
$\Im(\farc{\o_2}{\o_1})>0$のとき$\t=\frac{\o_2}{\o_1}\in\H$とおくと$L=\o_1 L_\t$となり
$\Im(\farc{\o_2}{\o_1})<0$のとき$\t=-\frac{\o_2}{\o_1}\in\H$とおくと$L=-\o_1 L_\t$となるので
主張のような$\t$が存在することがわかる。

ここで$L_\t$$L_{\t'}$が等価となるような$\t,\t'\in\H$の条件を考えてみましょう。

  • まず$L_\t=\{(m-n)+n(\t+1)|m,n\in\Z\}=1\cdot(\Z+\Z(\t+1))\quad(\t+1\in\H)$
    であるので$\t$平行移動に対して等価であることがわかります。
  • また$L_\t=\Z+\Z(-\t)=-\t(\Z(-\frac1\t)+\Z)\quad(-\farc1\t\in\H)$
    であるので$\t$反転に対しても等価であることがわかります。

平行移動と反転について等価ということはつまり$L_\t$$L_{\t'}$が等価である(必要十分)条件は$\t'$$\t$モジュラー変換
$\dis \t'=\frac{a\t+b}{c\t+d}\quad(a,b,c,d\in\Z,\;ad-bc=1)$
として表せれることだということになります。よって次の命題が言えます。

任意の格子$L=\Z\o_1+\Z\o_2$に対して$L_\t=\Z+\Z\t$$L$と等価となるような$\t\in\G\backslash\H$が一意に存在する。

更に言うと
$L_{\t+1}=L_\t,\;L_{-\farc1\t}=\farc1{\t}L_\t$
という関係から$L_\t$自身もモジュラーな性質
$\dis L_{\farc{a\t+b}{c\t+d}}=\farc1{c\t+d}L_\t\quad(a,b,c,d\in\Z,\;ad-bc=1)$
を満たすことがわかります。
 となると格子の等価な変形に対して$f(aL)=a^{-k}f(L)$のような性質を満たすような写像$f$は自然とモジュラーな性質を満たすことになってきます。まあとりあえずこんなところでもモジュラー形式が関わってくるのかと思ってもらえればいいと思います。

楕円関数の性質

まずは格子$L=\Z\o_1+\Z\o_2$に対して基本領域$\mathcal{P}$
$\P=\C/L=\{s\o_1+t\o_2|0\leq s,t<1\}$
と定めておきましょう。これはつまり任意の$z\in\C$にある$w\in\P,\o\in L$が存在して
$z=w+\o$
が成り立つということを示していて、また$L$についての楕円関数$f$においては
$f(z)=f(w+\o)=f(w)$
が成り立つわけなので$z\in\P$についての$f$の性質がわかれば十分だということがわかります。

リウヴィルの第一定理

$\C$上正則な楕円関数は定数関数に限る。

$\C$上正則な楕円関数は有界な領域$\P$でも正則、つまり$\P$上で有界であり二重周期性から$\C$上でも有界となるが、リウヴィルの定理からそのような正則関数は定数関数に限ることがわかる。

リウヴィルの第二定理

楕円関数は$\P$上で高々有限個の極を持ち、それらの留数の和は$0$になる。

もし楕円関数$f$$\P$上で無限個の極を持つとすると(ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より)$\P$上に集積した極を持つことになり、これは$f$が有理型関数であることに矛盾。
 また$\P+v$の境界
$(\partial\P+v):v\to(\o_1+v)\to(\o_1+\o_2+v)\to(\o_2+v)\to v$
において$f$が極を持たないような$v\in\C$を取り、それに沿った(反時計回りの)周回積分を考えると留数定理より
$\dis\frac1{2\pi i}\oint_{\partial\P+v}f(z)dz=\sum_{\a:\mathrm{poles}}\mathrm{Res}(f,\a)\quad$(ただし$\a$$\P$上の$f$の極全体を渡る)
が成り立つが
$\dis\int^{\o_1+\o_2+v}_{\o_1+v}f(z)dz=\int^{\o_2+v}_vf(z+\o_1)dz=-\int^v_{\o_2+v}f(z)dz$
$\dis\int^{\o_2+v}_{\o_1+\o_2+v}f(z)dz=\int^v_{\o_1+v}f(z+\o_2)dz=-\int^{\o_1+v}_vf(z)dz$
であることに注意すると
$\dis\oint_{\partial\P+v}f(z)dz=0$
がわかるので留数の和が$0$になることがわかる。

リウヴィルの第三定理

$0$でない楕円関数は$\P$上で重複度込みで同じ数だけの零点と極を持つ。

命題4と同様にして$0$でない楕円関数$f$の零点は有限個であることがわかるので$\P+v$の境界上で$f$が零点も極も持たないような$v\in\C$を取ると、偏角の原理から
$\dis\frac1{2\pi i}\oint_{\partial\P+v}\frac{f'(z)}{f(z)}dz=(fの\P上の零点の個数)-(fの\P上の極の個数)$
が成り立つが$\frac{f'(z)}{f(z)}$も格子$L$についての楕円関数なので命題4と同様にしてこの左辺は$0$になることがわかる。

ちなみにリウヴィルの第四定理も存在していますがこの記事で使うことはないため省かせてもらいます。(詳しくは こちらの文献 の59ページ辺りで解説されています。)

奇関数の楕円関数は$\P$上で$\dis z=\frac{\o_1}2,\frac{\o_2}2,\frac{\o_1+\o_2}{2}$を零点か極に持つ。

$z=z_0=\frac{\o_1}2,\frac{\o_2}2,\frac{\o_1+\o_2}{2}$
が極でないとすると$z_0-(-z_0)=2z_0\in L$より
$f(z_0)=f(-z_0)=-f(z_0)$
つまり$f(z_0)=0$がわかる。

ワイエルシュトラスの$\wp$関数

ここからはワイエルシュトラスの$\wp$(ペー)関数という楕円関数の性質について解説していきます。

ワイエルシュトラスの$\s,\z,\wp$関数

格子$L$に対してワイエルシュトラスの$\s,\z,\wp$関数をそれぞれ
$\dis\s(z;L)=z\prod_{\substack{\o\in L\\\o\neq0}}\left(1-\farc{z}{\o}\right)e^{\frac z\o+\frac12(\farc z\o)^2}$
$\dis\z(z;L)=\frac{d}{dz}\log\s(z)=\farc1z+\sum_{\o\neq0}\left(\farc1{z-\o}+\frac1\o+\frac z{\o^2}\right)$
$\dis\wp(z;L)=-\z'(z)=\frac1{z^2}+\sum_{\o\neq0}\left(\farc1{(z-\o)^2}-\frac1{\o^2}\right)$
と定める。

この$(z;L)$$;L$の部分はしばしば省略したりしなかったりします。

$\wp$は偶関数であり、また楕円関数である。

偶関数であることは$-L=L$に注意すると
$\dis\wp(-z)=\frac1{z^2}+\sum_{\o\neq0}\left(\farc1{(z-(-\o))^2}-\frac1{(-\o)^2}\right)=\wp(z)$
とわかる。

また$\wp$関数の微分は
$\dis\wp'(z)=\sum_{\o\in L}\farc{-2}{(z-\o)^3}$
と書けるので任意の$\o\in L$$L-\o=L$に注意すると
$\dis\wp'(z+\o)=\sum_{\o'\in L}\farc{-2}{(z-(\o'-\o))^3}=\wp'(z)$
が成り立つことがわかる。つまり
$\wp(z+\o)-\wp(z)=Const.$
となるが、これに$z=-\frac\o2$を代入すると偶関数性より
$\wp(\frac\o2)-\wp(-\frac\o2)=0$
なので$\wp$の二重周期性がわかり、$\wp$は有理型関数でもあることから楕円関数となる。

$\wp'$$\P$上で$\dis z=\frac{\o_1}2,\frac{\o_2}2,\frac{\o_1+\o_2}{2}$を零点に持ち、それ以上に零点を持たない。

$\wp'$が上記の点を零点に持つことは$\wp$は偶関数なので$\wp'$は奇関数となることから命題6によりわかる。
$\wp'$$\P$上で$3$つしか零点を持たないことは
$\dis\wp'(z)=\sum_{\o\in L}\farc{-2}{(z-\o)^3}$
なので$\P$上の極が$z=0$における三位の極のみであることからリウヴィルの第三定理(命題5)によりわかる。

$\wp$$z=0$周りでローラン展開
$\dis\wp(z)=\frac1{z^2}+\sum^\infty_{n=1}(2n+1)G_{2n+1}(L)z^{2n}$
を持つ。ただし$G_{2n}(L)$はアイゼンシュタイン級数
$\dis G_{2n}(L)=\sum_{\substack{\o\in L\\\o\neq0}}\farc1{\o^{2n}}$
とした。

$f(z)=\wp(z)-\frac1z^2$とおくと$f(z)$$z=0$周りで正則であり
$\dis f^{(n)}(z)=(n+1)!\sum_{\o\neq0}\farc1{(\o-z)^{n+2}}\quad(n\geq1)$
なので$f^{(2n+1)}(z)=0$および$\wp$の定義より$f(0)=0$に注意すると$f(z)$$z=0$周りのテイラー展開
$\dis f(z)=\sum^\infty_{n=1}\frac{f^{(2n)}(0)}{(2n)!}z^{2n} =\sum^\infty_{n=1}(2n+1)G_{2n+1}(L)z^{2n}$
を持つことがわかる。

ちなみに$G_{2n}(L)$はアイゼンシュタイン級数と名付けられている通り$L=\o L_\t\;(\t\in\H)$とすると
$\dis G_{2k}(L)=\sum_{(m,n)\neq(0,0)}\frac{1}{\o^{2k}(m\t+n)^{2k}}=\frac1{\o^{2k}}G_{2k}(\t)$
とモジュラー形式のアイゼンシュタイン級数そのものになっています。

$\wp$は微分方程式
$\wp'(z)^2=4\wp(z)^3-g_2\wp(z)-g_3$
を満たす。ただし$g_2,g_3$$L$によって定まる定数で$g_2=60G_4(L),g_3=140G_6(L)$と与えられる。

$h(z)=\wp'(z)^2-4\wp(z)^3+g_2\wp(z)$
とおいたとき、$h$は楕円関数であって$\P$上で極を取るとするなら$z=0$に限るので、まずこれが$z=0$で極を持たないことを示す。

$\wp(z)^3,\wp'(z)^2$のローラン展開の$0$次以下の項を考えると命題9より
\begin{eqnarray} \wp(z)&=&z^{-2}+3G_4z^2+5G_6z^4+O(z^6) \\\wp(z)^3&=&z^{-6}(1+3Gz^4+5G_6z^6)^3+O(z^2) \\&=&z^{-6}+9G_4z^{-2}+15G_6+O(z^2) \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} \wp'(z)&=&-2z^{-3}+6G_4z+20G_6z^3+O(z^5) \\\wp'(z)^2&=&z^{-6}(-2+6Gz^4+20G_6z^6)^2+O(z^2) \\&=&4z^{-6}-24G_4z^{-2}-80G_6+O(z^2) \end{eqnarray}
であるので
\begin{eqnarray} \wp'(z)^2-4\wp(z)^3+g_2\wp(z) &=&4z^{-6}-24G_4z^{-2}-80G_6 \\&&-4z^{-6}-36G_4z^{-2}-60G_6 \\&&\quad\quad\quad\quad+60G_4z^{-2}+O(z^2) \\&=&-140G_6+O(z^2) \end{eqnarray}
$h(z)$$z=0$で極を持たないことがわかる。

よって$h(z)$$\P$上、ひいては$\C$上で正則なのでリウヴィルの第一定理(命題3)により定数関数であり、上の式からその定数は$-140G_6=-g_3$となるので
$\wp'(z)^2-4\wp(z)^3+g_2\wp(z)=-g_3$
を得る。

見ての通り$\C^2$の点$(\wp(z),\wp'(z))$は集合($\C^2$上の曲線)
$X(g_2,g_3)=\{(x,y)\in\C^2|y^2=4x^3-g_2x-g_3\}$
に埋め込まれることになります。そんなわけで$\wp$は"楕円"関数であったことからこのような曲線$X$が"楕円"曲線と呼ばれているわけです。

$\dis\wp'(z)^2=4(\wp(z)-\wp\Big(\frac{\o_1}2\Big))(\wp(z)-\wp\Big(\frac{\o_2}2\Big))(\wp(z)-\wp\Big(\frac{\o_1+\o_2}2\Big))$
が成り立つ。

$z_0=\frac{\o_1}2,\frac{\o_2}2,\frac{\o_1+\o_2}2$に対して$f(z)=\wp(z)-\wp(z_0)$とおくと命題8より
$f(z_0)=\wp(z_0)-\wp(z_0)=0,\;f'(z_0)=\wp'(z_0)=0$
が成り立つので$f$$\P$上で$z=z_0$に二位の零点を持つことがわかる。また$\wp$の定義より$f$$\P$上の極は$z=0$の二位の極のみなのでリウヴィルの第三定理(命題5)より$f$$\P$上でこれ以上零点を持たないことがわかる。

あとは命題10の等式を
$\wp'(z)^2=4\wp(z)^3-g_2\wp(z)-g_3=4(\wp(z)-e_1)(\wp(z)-e_2)(\wp(z)-e_3)$
と因数分解したときこの左辺が$z=z_0=\frac{\o_1}2,\frac{\o_2}2,\frac{\o_1+\o_2}2$で零点を持つことと、上で示したように$\wp(z)-\wp(z_0)$$z=z_0$以外で零点を持たないことに注意するとわかる。

基本擬周期とルジャンドル関係式

続いて少しワイエルシュトラスの$\z$関数についての話をします。
上で見たように$\z'(z)=-\wp(z)$は楕円関数でしたが、$\z(z)$については残念ながら楕円関数となりません。
$\dis\z(z)=\frac1z+\sum_{\o\neq0}\left(\frac1{z-\o}+\frac1\o+\farc{z}{\o^2}\right)$
における$\farc z{\o^2}$の部分が周期性を損なわせているためですね。

ただ任意の$\o\in L$
$(\z(z+\o)-\z(z))'=\wp(z)-\wp(z+\o)=0$
なのである$z$に依らない定数$\eta(\o)$があり(ただし$z\in L$のときは$\z$が発散するので$z\not\in L$で)
$\z(z+\o)-\z(z)=\eta(\o)$
となることがわかります。さらに$\eta_1=\eta(\o_1),\eta_2=(\o_2)$とおけば
$\z(z+m\o_1+n\o_2)=\z(z)+m\eta_1+n\eta_2$
という疑二重周期(quasiperiod)を持つことがわかります。また$\eta_1,\eta_2$のことを基本擬周期といいます。

他にも擬二重周期を持つ関数として例えばテータ関数
$\dis\vartheta(\nu,\t)=\sum^\infty_{n=-\infty}q^{n^2}z^n\quad(q=e^{\pi i\t},z=e^{2\pi i\nu})$
というものがあります。テータ関数は$\nu$について
$\vartheta(\nu+m\cdot1+n\t,\t)=q^{-n^2}z^{-n}\vartheta(\nu,\t)$
という擬二重周期を持っています。

基本周期$\o_1,\o_2$と基本擬周期$\E_1,\E_2$は以下の関係式によって結びついていることがわかります。

ルジャンドル関係式

格子$L$の基本周期$\o_1,\o_2$について$0<\arg\o_2-\arg\o_1<\pi$であるものとすると
$\E_1\o_2-\E_2\o_1=2\pi i$
が成り立つ。

例のごとく$\P+v$の境界上で$\z$が極を持たないような$v\in\C$(つまり$v\not\in L$)を取ると留数定理より
$\dis\oint_{\partial\P+v}\z(z)dz=2\pi i$
が成り立つ。ここで$0<\arg\o_2-\arg\o_1<\pi$の仮定より積分経路
$(\partial\P+v):v\to(\o_1+v)\to(\o_1+\o_2+v)\to(\o_2+v)\to v$
は反時計回りになり、
$\dis\int^{\o_1+\o_2+v}_{\o_1+v}\z(z)dz=\int^{\o_2+v}_v\z(z+\o_1)dz =\int^{\o_2+v}_v(\z(z)+\E_1)dz=\E_1\o_2-\int^v_{\o_2+v}\z(z)dz$
$\dis\int^{\o_2+v}_{\o_1+\o_2+v}\z(z)dz=\int^v_{\o_1+v}\z(z+\o_2)dz =-\E_2\o_1-\int^{\o_1+v}_v\z(z)dz$
であることに注意すると
$\dis\oint_{\partial\P+v}\z(z)dz=\E_1\o_2-\E_2\o_1=2\pi i$
がわかる。

ワイエルシュトラスの$\s$関数と$q$-展開

以下ではワイエルシュトラスの$\s$関数の擬二重周期性およびに$q$-展開、そしてワイエルシュトラスの$\z$関数の$q$-展開について解説していきます。

ワイエルシュトラスの$\s$関数は擬二重周期
$\dis \s(z+\o_k)=-e^{\E_k(z+\frac{\o_k}{2})}\s(z)\quad(k=1,2)$
を持つ。

$\dis\farc{d}{dz}\log\left(\frac{\s(z+\o_k)}{\s(z)}\right)=\z(z+\o_k)-\z(z)=\E_k$
であるので$z$に依らないある定数$A_k$があって
$\dis\s(z+\o_k)=A_ke^{\E_kz}\s(z)$
と表せれることがわかる。

また$\s$は奇関数である(これは定義から容易にわかる)のでこれに$z=-\frac{\o_k}2$を代入すると
$\dis\s(\frac{\o_k}2)=A_ke^{-\E_k\frac{\o_k}{2}}\s(-\farc{\o_k}2)=-A_ke^{-\E_k\frac{\o_k}{2}}\s(\farc{\o_k}2)$
すなわち
$A_k=-e^{\E_k\frac{\o_k}2}$
を得る。

格子$L_\t=\Z+\Z\t\;(\t\in\H)$について基本周期$1$に対応する基本擬周期を$\E$とおき$\vp$
$\dis \vp(z,\t)=e^{-\farc\E2z^2+i\pi z}\s(z;L_\t)$
とおく。このとき$\vp$$z$について擬二重周期
$\dis\vp(z+1,\t)=\vp(z,\t),\;\vp(z+\t,\t)=-e^{2\pi iz}\vp(z,\t)$
を持つ。

基本周期$\t$に対応する基本擬周期を$\E_\t$とおくと$\t\in\H$より$0<\arg\t-\arg1<\pi$なのでルジャンドル関係式(命題12)から
$\E\t-\E_\t=2\pi i$
が成り立つことに注意すると命題17から
\begin{eqnarray} \vp(z+1,\t) &=&\exp\left(-\frac\E2(z+1)^2+i\pi(z+1)\right)\cdot\exp\left(\E(z+\frac12)-\pi i\right)\s(z;L_\t) \\&=&\exp\left(-\farc\E2z^2+i\pi z\right)\s(z;L_\t)=\vp(z,\t) \\\vp(z+\t,\t) &=&-\exp\left(-\frac\E2(z+\t)^2+i\pi(z+\t)\right)\cdot\exp\left(\E_\t(z+\frac\t2)\right)\s(z;L_\t) \\&=&-\exp\left(-\E\t(z+\frac\t2)+i\pi\t\right)\cdot\exp\left(\E_\t(z+\frac\t2)\right)\vp(z,\t) \\&=&-\exp\left(-(2\pi i+\E_\t)(z+\frac\t2)+i\pi\t+\E_\t(z+\frac\t2)\right)\vp(z,\t) \\&=&-\exp(2\pi iz)\vp(z,\t) \end{eqnarray}
とわかる。

上で定めた$\vp$$q$-展開
$\dis\vp(z,\t)=\frac{w-1}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2}$
を持つ。ただし$q=e^{2\pi i\t},w=e^{2\pi iz}$とした。

特にワイエルシュトラスの$\s$関数は$q$-展開
$\dis\s(z;L_\t)=e^{\frac\E2z^2}\farc{w^{\frac12}-w^{-\frac12}}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2}$
を持つ。

$\dis g(z,\t)=\frac{w-1}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2}$
とおいたとき$g$$\vp$と同じ擬二重周期を持ち、同じ零点を持つことを示せば
$\dis\frac{\vp(z,\t)}{g(z,\t)}$
は格子$L_\t$についての$\C$上正則な楕円関数となるのでリウヴィルの第一定理(命題3)から定数関数であることがわかり
$\dis\lim_{z\to0}\frac{\vp(z,\t)}{g(z,\t)}=1$
を示すことで証明が完結する。

同じ擬周期を持つこと

$z\mapsto z+1$において$w'=e^{2\pi i(z+1)}=w$なので
$g(z+1,\t)=g(z,\t)$
がわかり、$z\mapsto z+\t$において$w'=qw$なので
\begin{eqnarray} g(z,\t)&=&\frac{qw-1}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^{n+1}w)(1-q^{n-1}w^{-1})}{(1-q^n)^2} \\&=&\frac{qw-1}{2\pi i}\farc{1-q^{0}w^{-1}}{1-q^1w}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2} \\&=&\farc{qw-1}{w-1}\frac{1-w^{-1}}{1-qw}g(z,\t)=-w^{-1}g(z,\t)=-e^{2\pi iz}g(z,\t) \end{eqnarray}
とわかる。

同じ零点を持つこと

$g(z,\t)$$0$となるのは$w=q^m\;(m\in\Z)$のとき、つまり
$2\pi z=2\pi im\t+2\pi in$
$z=m\t+n\in(\Z\t+\Z)=L_\t$
のときに限り、逆に$z\in L_\t$であれば$g(z,\t)=0$となることがわかる。
$\vp(z,\t)=0\iff z\in L_\t$およびそれぞれが一位の零点であることは自明。

比が$1$であること

$z\sim0$における$\vp,g$の挙動を考えると$w=e^{2\pi iz}\sim 1+2\pi iz$より
$\dis\vp(z)=e^{-\frac\E2z^2+2\pi iz}z\prod_{\o\neq0}\left(1-\frac z\o\right)e^{\frac z\o+\frac12(\farc z\o)^2}\sim e^{-0+0}z\prod_{\o\neq0}(1-0)e^{0+0}=z$
$\dis g(z,\t)=\frac{w-1}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2} \sim\farc{2\pi iz}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^n\cdot1)(1-q^n\cdot1)}{(1-q^n)^2}=z$
であるので
$\dis\lim_{z\to}\frac{\vp(z,\t)}{g(z,\t)}=\lim_{z\to0}\farc zz=1$
を得る。

格子$L_\t=\Z+\Z\t\;(\t\in\H)$の基本周期$1$に対応する基本擬周期$\E(\t)$について
$\dis \E(\t)=\frac{\pi^2}{3}E_2(\t)=\frac{\pi^2}{3}\left(1-24\sum^\infty_{n=1}\frac{nq^n}{1-q^n}\right)\quad(q=e^{2\pi i\t})$
が成り立つ。

命題15より$\frac{dw}{dz}=2\pi iw$に注意すると
\begin{eqnarray} \z(z;L_\t)&=&\frac{d}{dz}\log\s(z;L_\t) \\&=&\E z+\pi i\frac{w^{\frac12}+w^{-\frac12}}{w^{\farc12}-w^{-\farc12}}+2\pi i\sum^\infty_{n=1}\left(-\frac{q^nw}{1-q^nw}+\frac{q^nw^{-1}}{1-q^nw^{-1}}\right) \end{eqnarray}
であり、
\begin{eqnarray} &&2\pi i\sum^\infty_{n=1}\left(\frac{q^nw^{-1}}{1-q^nw^{-1}}-\frac{q^nw}{1-q^nw}\right) \\&=&2\pi i\sum^\infty_{n=1}\sum^\infty_{m=1}\Big((q^nw^{-1})^m-(q^nw)^m\Big) =2\pi i\sum^\infty_{m=1}\sum^\infty_{n=1}(q^m)^n(w^{-m}-w^m) \\&=&2\pi i\sum^\infty_{m=1}\farc{q^m}{1-q^m}(w^{-m}-w^m) =4\pi\sum^\infty_{m=1}\frac{q^m}{1-q^m}\sin(2\pi mz) \end{eqnarray}
なので
$\dis\z(z;L_\t)=\E z+\pi\frac{\cos(\pi z)}{\sin(\pi z)}+4\pi\sum^\infty_{n=1}\frac{q^n}{1-q^n}\sin(2\pi nz)$
がわかる。そしてこれを微分することで
\begin{eqnarray} \wp(z;L_\t)&=&-\z'(z;L_\t) \\&=&-\E+\farc{\pi^2}{\sin^2(\pi z)}-8\pi^2\sum^\infty_{n=1}\farc{nq^n}{1-q^n}\cos(2\pi nz) \end{eqnarray}
となるので
$\dis\lim_{z\to0}\left(\farc{\pi^2}{\sin^2(\pi z)}-\frac1{z^2}\right) =\lim_{z\to0}\frac{\frac{\pi z+\sin(\pi z)}{\pi z}\cdot\frac{\pi z-\sin(\pi z)}{\pi^3z^3}}{\frac{\sin^2(\pi z)}{\pi^2z^2}}\pi^2 =\frac{1\cdot\farc13}{1}\pi^2=\frac{\pi^2}3$
に注意してこの両辺から$\frac1{z^2}$を引いて$z\to0$極限を取ることで
$\dis0=-\E+\frac{\pi^2}3-8\pi^2\sum^\infty_{n=1}\frac{nq^n}{1-q^n}$
すなわち
$\dis\E=\E(\t)=\farc{\pi^2}3\left(1-24\sum^\infty_{n=1}\frac{nq^n}{1-q^n}\right)$
を得る。

ついでに途中で出てきた式
$\dis\z(z;L_\t)=\E z+\pi\frac{\cos(\pi z)}{\sin(\pi z)}+4\pi\sum^\infty_{n=1}\frac{q^n}{1-q^n}\sin(2\pi nz)$
$\E(\t)$$q$-展開を代入することで次の系が得られます。

ワイエルシュトラスの$\z$関数は$q$-展開
$\dis\z(z;L_\t)=\farc{\pi^2}3z^2+\pi\cot\pi z+4\pi\sum^\infty_{n=1}\frac{q^n}{1-q^n}(\sin(2\pi nz)-2\pi nz)$
を持つ。

おまけ:ヤコビの三重積

上で見てきたように$\vp$
$\vp(z+1,\t)=\vp(z,\t),\;\vp(z+\t,\t)=-e^{2\pi iz}\vp(z,\t)$
という擬二重周期性を持ち
$\dis\vp(z,\t)=\frac{w-1}{2\pi i}\prod^\infty_{n=1}\frac{(1-q^nw)(1-q^nw^{-1})}{(1-q^n)^2}$
という無限積による$q$-展開を持っていたのでした。

これに類似して
$\dis\vartheta(\nu,\t)=\sum^\infty_{n=-\infty}q^{n^2}z^n\quad(q=e^{\pi i\t},z=e^{2\pi i\nu},\Im(\t)>0)$
で定義されるヤコビのテータ関数は
$\vartheta(\nu+1,\t)=\vartheta(\nu,\t),\;\vartheta(\nu+\t,\t)=e^{-\pi i\t-2\pi i\nu}\vartheta(\nu,\t)$
という擬二重周期性を持ち
$\dis\vt(\nu,\t)=\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})$
という無限積による$q$-展開を持っています。
その証明の流れも$\vp$と全く同様となります。以下でその証明を見ていきましょう。

ヤコビの三重積

$\dis\vt(\nu,\t)=\sum^\infty_{n=-\infty}q^{n^2}z^n =\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})$
が成り立つ。

一応流れを書いておくと
$\dis \T(z,\t)=\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})$
とおいたとき$\T$$\vt$と同じ擬二重周期を持ち、同じ零点を持つことを示せば
$\dis\frac{\vt(\nu,\t)}{\T(\nu,\t)}$
は格子$L_\t$についての$\C$上正則な楕円関数となるのでリウヴィルの第一定理(命題3)から定数関数であることがわかり、またこれを$c(\t)$とおくと
$\dis c(\t)=c(4^{-1}\t)=\lim_{n\to\infty}c(4^{-n}\t)=c(0)=Const$
が成り立つことがわかり
$\dis\lim_{\t\to i\infty}\frac{\vt(\nu,\t)}{\T(\nu,\t)}=1$
を示すことで証明が完結する。

同じ擬周期を持つこと

$\nu\mapsto\nu+1$において$z\mapsto z$なので
$\vt(\nu+1,\t)=\vt(\nu,\t),\;\T(\nu+1,\t)=\T(\nu,\t)$
がわかり、$\nu\mapsto\nu+\t$において$z\mapsto q^2z$なので
\begin{eqnarray} \vt(\nu+\t,\t)&=&\sum^\infty_{n=-\infty}q^{n^2+2n}z^n \\&=&(qz)^{-1}\sum^\infty_{n=-\infty}q^{(n+1)^2}z^{n+1}=(qz)^{-1}\vt(\nu,\t) \\\T(\nu+\t,\t)&=&\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n+1}z)(1+q^{2n-3}z^{-1}) \\&=&\frac{1+q^{-1}z^{-1}}{1+qz}\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1}) \\&=&(q\t)^{-1}\T(\nu,\t) \end{eqnarray}
を得る。

同じ零点を持つこと

$\T(\nu,\t)$$0$となるのは$z=-q^{2m+1}\;m\in\Z$のとき、つまり
$2\pi i\nu=\pi i+(2m+1)\pi i\t+2\pi in$
$\nu=\frac{\t+1}{2}+m\t+n\in(\frac{\t+1}2+\Z\t+\Z)=(\frac{\t+1}2+L_\t)$
のときに限り、これは一位の零点となる。($\Im(\t)>0$より$|q|<1$つまり$1-q^{2n}\neq0$に注意する)
また
\begin{eqnarray} \vt(\frac{\t+1}{2},\t) &=&\sum^\infty_{n=-\infty}e^{\pi in^2\t+\pi in(\t+1)} \\&=&\sum^\infty_{n=-\infty}(-1)^ne^{\pi i(\t+\frac12)^2-\frac14\pi i\t} \\&=&\sum^\infty_{n=0}(-1)^ne^{\pi i(\t+\frac12)^2-\frac14\pi i\t} +\sum^\infty_{n=0}(-1)^{n+1}e^{\pi i(-n-1+\frac12)^2-\frac14\pi i\t} \\&=&0 \end{eqnarray}
なので$\T(\nu,\t)$$0$となるとき$\vt(\nu,\t)$$0$となることがわかる。

比が$1$であること

以上より
$\dis c(\t)=\frac{\vt(\nu,\t)}{\T(\nu,\t)}$
$\nu$に依らない関数であり
$\nu=\frac12$において$z=-1$$\nu=\frac14$において$z=i$$\t\mapsto4\t$において$q\mapsto q^4$なので
\begin{eqnarray} \vt(\frac12,\t) &=&\sum^\infty_{n=-\infty}(-1)^nq^{n^2} \\\vt(\frac14,\t) &=&\sum^\infty_{n=-\infty}i^nq^{n^2} \\&=&\sum^\infty_{n=-\infty}(-1)^nq^{(2n)^2} +\sum^\infty_{n=1}i^{2n-1}q^{(2n-1)^2}+\sum^\infty_{n=1}(-i)^{2n-1}q^{(-(2n-1))^2} \\&=&\sum^\infty_{n=-\infty}(-1)^nq^{4n^2}=\vt(\frac12,4\t) \\ \\\T(\frac12,\t) &=&\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1-q^{2n-1})^2 \\\T(\frac14,\t) &=&\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+iq^{2n-1})(1-iq^{2n-1}) \\&=&\prod^\infty_{n=1}\Big((1-q^{4n})(1-q^{4n-2})\Big)(1+q^{2(2n-1)}) \\&=&\prod^\infty_{n=1}\Big((1-q^{8n})(1-q^{8n-4})\Big)(1-q^{4(2n-1)}) \\&=&\prod^\infty_{n=1}(1-q^{8n})(1-q^{4(2n-1)})^2=\T(\frac12,4\t) \end{eqnarray}
つまり
$\dis c(\t)=\frac{\vt(\farc14,\t)}{\T(\farc14,\t)}=\frac{\vt(\frac12,4\t)}{\T(\farc12,4\t)}=c(4\t)$
が成り立つ。よって$\t\mapsto4^{-1}\t$とすることで
$\dis c(\t)=c(4^{-1}\t)=\lim_{n\to\infty}c(4^{-n}\t)=c(0)$
$c(\t)$$\t$にも依らないことがわかる。

そして$\t\to i\infty$において$q\to0$なので
$\dis\lim_{\t\to i\infty}\vt(\nu,\t) =\lim_{q\to0}\Big(1+\sum_{n=1}^\infty q^{n^2}(z^n+z^{-n})\Big)=1$
$\dis\lim_{\t\to i\infty}\T(\nu,\t) =\lim_{q\to0}\prod^\infty_{n=1}(1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})=1$
つまり
$\dis c(\t)=\lim_{\t\to i\infty}c(\t)=1$
を得る。

参考文献

投稿日:2021330
更新日:20221026

投稿者

主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。