この記事では
前回の記事
に引き続いてモジュラー形式のお話を、今回はアイゼンシュタイン級数
とラマヌジャンのデルタ
に焦点を当てて解説していきます。
モジュラー形式の
の他にランベルト級数
という展開をすることがあります。
フーリエ級数とランベルト級数は以下のような関係によって変換し合うことができます。
数列
が成り立つ。またこのとき
が成り立つ。ただし
前者はメビウスの反転公式である。また後者については
とわかる。
アイゼンシュタイン級数は以下のように定義される級数のことを言います。
自然数
と定められる関数のことをそれぞれアイゼンシュタイン級数、正規化アイゼンシュタイン級数と言う。
いま
という関係があることがわかります。
またアイゼンシュタイン級数は重さ
が成り立つことから(
前回の記事
の命題3と合わせて)わかります。
上のように
いまアイゼンシュタイン級数の
自然数
が成り立つ。
部分分数展開の記事
で紹介したように
という部分分数展開を持ち、これを
が成り立つ。
また
と
がわかり、これを
これを用いると
が成り立つ。ただし
とした。
リプシッツの公式から
とランベルト級数展開できる。
またゼータ関数の特殊値は
と表せたので結局
が成り立ち、あとは
ところで上で定義したアイゼンシュタイン級数では
が条件収束になる(絶対収束しない)ことが関わっているのだと思います。(ちなみに後で見るように実は重さ
ですが
とおくと
が成り立つ。
また以下で登場するラマヌジャンのデルタの対数微分を取ると
が成り立つ。
このとき
から、この両辺を対数微分することで
すなわち
を得る。
ちなみに一般に
を対数微分することで
となることがわかります。
ラマヌジャンのデルタとは次に定義されるような関数のことを言います。
と定められる関数
の係数として定まる数列
以下に示すようにラマヌジャンのデルタは重さ
ここで出てくるラマヌジャンの
この性質により逆数
いま
というものを考えましょう。イータ関数は次のフーリエ展開を持ちます。
が成り立つ。特に
と表せる。
楕円関数の記事
のおまけとして示したヤコビの三重積
において
を得る。あとは
に注意するとわかる。
いま
なのでディリクレ指標
と定めると
と表すことができます。このことからイータ関数は以下の関数等式を持ちます。
とおくと
が成り立つ。特に
が成り立つ。
ディリクレ指標
が成り立つ。このとき
と計算できるので
を得る。
また
と表せるので
がわかる。
以上により
を持つことがわかり、これを
つまり
上でも触れた通り重さ
更に
および
が成り立つ。
はそれぞれ重さ
は重さ
は重さ
あとは
に注意すると
を得る。
重さ
が成り立つ。
であることは
前回の記事
の命題8系として示した。
であることは、任意の
であったことから、
が成り立つ。
任意の
を得る。(直和であることは明らか)
また任意の
を得る。
が成り立つ。
いま任意の
および
を得る。
また任意の
つまり
が成り立つ。
と求まり、補題12より
という漸化式が成り立つことからわかる。
が成り立つ。
とおくと
であるので
つまり
がわかる。
いま
がわかるので、明らかに
を得る。
上では触れていなかったが
が直和であることは次にようにしてわかる。
いまある
が成り立つとする。このとき
となるが
よって
上ではモジュラー形式のなす環
が
となることを見ました。
さて余談ですが
このことから
は微分演算に対して閉じた環となったりします。
ちなみにこの環
以上がモジュラー形式の基本的な理論の一端となりますが、折角なので発展的な話としてラマヌジャンの
素数
によて定めると
が成り立つ。
より
となることを示せばよい。
そのことは
かつ
が成り立つことから
とわかる。
に注意すると
を得る。
素数
が成り立つ。ただし自然数ではない実数
補題6とその証明で見たように
が成り立ってるのでこの両辺の
ラマヌジャンの
任意の素数
が成り立つことを示せばよい。
と、
とわかる。
いま
が成り立つとすると定理14において
がわかるので
と
が成り立つことがわかる。
ラマヌジャンの
と定めるとこれはオイラー積表示
を持つ。
と分解できるので
が成り立つことを示せばよい。
いま定理14において
から
であって、また
なので
すなわち
を得る。
ちなみにここで現れる
の判別式
が成り立つことを主張するのがラマヌジャン予想と呼ばれています。ラマヌジャン予想は長年未解決でありましたが1974年に肯定的に解決されたそうです。
が成り立つ。特に素数
が成り立つ。
定理7
の両辺において
の各係数が整数であることに注意して、法
がわかり、
を得る。