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りぼーすさんの研究についての代数的な考察

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はじめに

 この記事は りぼーすさんの研究まとめの記事 を読んでZ[ϕ]でやったらどうなるんだろうなーというのを考えた記事となります。

発想

合同式をZ[ϕ]において考えると
Fk=15(ϕk(ϕ)k)0(modn)
(ϕ2)k1(modn)と等価であり、これが成り立つとき
Fk+1=15(ϕk+1(ϕ)(k+1))1(modn)

5(ϕ)k+1((ϕ2)k+11)5(ϕ)ϕk+(1+ϕ2)=5ϕ(1ϕk)0(modn)
つまりϕk1(modn)と等価となる。

この議論から以下の表示が得られます。

(Z[ϕ]/nZ[ϕ])×におけるϕ,ϕ2の位数をordϕ,ord(ϕ2)とおくと
l(n)=ord(ϕ2)L(n)=max{l(n),ordϕ}
が成り立つ。

これを使っていくつかの命題を示してみます。

L(n)l(n)=1,2,4が成り立つ。

ϕ4l(n)=(ϕ2)2l(n)1(modn)
よりordϕ4l(n)、また
(ϕ2)2ordϕ=ϕ4ordϕ1(modn)
よりl(n)2ordϕなので
a=ordϕl(n)
とおくと2aおよび4/aは自然数となるので
a=12,1,2,4
を得る。

ordϕ=k,2k(kは奇数)のときL(n)/l(n)=1
ordϕ=4k(kは奇数)のときL(n)/l(n)=2,4
ordϕ=8k(kは自然数)のときL(n)/l(n)=2
が成り立つ。特に
L(n)/l(n)=4l(n)が奇数
が成り立つ。

 n=2のときはordϕ=l(2)=3よりL(2)/l(2)=1となるので、以下n2とする。ちなみに
ϕL(n)(ϕ)L(n)1(modn)
が成り立つのでn2においては2L(n)が成り立ちます。
 命題2の証明より
l(n)ordϕ=2,1,12,14
であることに注意する。

ordϕ=k,2kのとき

(ϕ2)2k=ϕ4k1(modn)
およびn2より
(ϕ2)k=ϕ2k11(modn)
なのでl(n)=2kを得る。

ordϕ=4kのとき

(ϕ2)2k=ϕ4k1(modn)
よりl(n)=k,2kを得る。

ordϕ=8kのとき

(ϕ2)4k=ϕ8k1(modn)
および
(ϕ2)2k=ϕ2k1(modn)
なのでl(n)=4kを得る。

nが素数のとき

(5p)=1のとき(p)=p1p2と分解され、
(5p)=1のとき(p)は素イデアルとなる。

 ppを素イデアルとし、ϕ,ϕ2(Z[ϕ]/p)×における位数をordϕ,ord(ϕ2)とおくと
l(p)=ord(ϕ2)L(p)=max{l(p),ordϕ}
が成り立つ。

 (p)=pの場合は命題1に一致するので(p)=p1p2と分解する場合を考えればよい。
 冒頭での議論から
(ϕ2)k1(modp)

(ϕ2)k1(modp1)
が等価であることと、そのようなkに対し
ϕk1(modp)

ϕk1(modp1)
が等価であることを示せばよい。
 上下は自明なのでその逆を示す。

(ϕ2)k1(modp1)のとき

 仮定の式に共役写像ϕ(ϕ)1を作用させることでp1p2に移るので
((ϕ)2)k=(ϕ2)k1(modp2)
つまり
(ϕ2)k1(modp2)
が成り立つので(p)=p1p2より
(ϕ2)k1(modp)
を得る。

(ϕ2)k1(modp1)かつϕk1(modp1)のとき

 これも仮定の式の共役を取ることで
(ϕ)k1(modp2)
が成り立ち、これに(ϕ2)k1を掛けることで
ϕk1(modp2)
つまり
ϕk1(modp)
を得る。

ordϕ=4k(kは奇数)のときL(p)/l(p)=4および(1p)=1が成り立つ。

 l(p)=k、つまり
(ϕ2)k=ϕ2k1(modp)
を示せばよい。
 (p)が素イデアルであるときはZ[ϕ]/pZ[ϕ]は体、特に整域であることからわかる。
 また(p)=p1p2と分解されるとき、整域性から
ϕ2k±1(modp1,p2)
となるが、共役を考えることで
ϕ2k±1(modp1)ϕ2k±1(modp2)()
が成り立つのでmodpを考えると
ϕ2k1(modp)
を得る。
 またこのとき
(ϕk+(ϕ)k)2=ϕ2k2+ϕ2k4(modp)
が成り立ち、ϕk+(ϕ)kは整数であるので4および1は平方剰余となる。

L(p)/l(p)=1のとき(5p)=1が成り立つ。

 命題3からordϕ=k,2k(kは奇数)、特に
ϕ2k1(modp)
となる。よって
Fk2=(ϕk(ϕ)k5)245(modp)
が成り立ち、Fkは整数であるので4/5および5は平方剰余となる。

L(p)/l(p)=2のとき(5p)=1が成り立つ。

 ordϕ=8kから命題6の証明と同様にして
ϕ4k1(modp)
が成り立つので命題7と同様にして
F2k245(modp)
がわかる。よって5は平方剰余となる。

p3(mod4),p1,4(mod5)のときL(p)/l(p)=1
p3(mod4),p2,3(mod5)のときL(p)/l(p)=2
p1(mod4),p2,3(mod5)のときL(p)/l(p)=4
p5(mod8),p1,4(mod5)のときL(p)/l(p)2
が成り立つ。

p3(mod4),p1,4(mod5)のとき

 補題4から(p)=p1p2と分解できordϕ#(Z[ϕ]/p1)×=p1が成り立つのでordϕ=k,2k(kは奇数)であり、命題3からL(p)/l(p)=1が成り立つ。

p3(mod4),p2,3(mod5)のとき

 (1p)=(5p)=1より命題6,7からL(p)/l(p)=2でなければならない。

p1(mod4),p2,3(mod5)のとき

 (5p)=(5p)=1より命題7,8からL(p)/l(p)=4でなければならない。

p5(mod8),p1,4(mod5)のとき

 一つ目の場合と同様にしてordϕ8で割り切れないことがわかるので命題3からL(p)/l(p)2となる。

+αな命題

 ここまではりぼーすさんの記事でも示されていた命題ですが、一つだけちょっとした命題を紹介しておきます。

 L(p)/l(p)=1が成り立つこととpがリュカ数Lnのある奇数項Lkを割り切ることは同値である。
特にすべての奇数k(p1)/2に対してpLkであるときL(p)/l(p)1が成り立つ。

 L(p)/l(p)=1であればある奇数kがあって
ϕ2k1(modp)
が成り立つので、これにϕkを掛けることで
ϕk+(ϕ)k=Lk0(modp)
つまりpLkであり、またpLkであるとき、
Lk=ϕk+(ϕ)k=ϕk(ϕ2k1)0(modp)
が成り立つのでordϕ2k。命題3からこれはL(p)/l(p)=1を意味する。
 またL(p)/l(p)=1が成り立つとき(5p)=1であったので2k#(Z[ϕ]/p1)×=p1つまりk(p1)/2の範囲でkを見つけることができる。

リュカ数の奇数項とその素因数分解を挙げてみると次のようになります。

kLk素因数分解p1(mod4)
111
3422
51111
7292929
9762219
11199199
13521521521
151364221131
1735713571
19934993499349
2124476222921129
2364079139461461
2516776111101151101

 この表からp=41はすべての奇数k20つまりk=5に対し41L5を満たすのでL(p)/l(p)1となる(実際ordϕ=40よりL(p)/l(p)=2となる)。
 同様にk=3,5,15からp=61k=11からp=89といったL(p)/l(p)1の例があることがわかる(実際それぞれordϕ=60,44よりL(p)/l(p)=4となる)。

p29416189101
L(p)/l(p)12441

 りぼーすさんの記事ではp1,9(mod20)の場合のL(p)/l(p)が不明となっていましたが、これを見るともうしっちゃかめっちゃかですね。

投稿日:2022113
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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