お久しぶりです、AGAです。今回は複素関数をベクトル場で表した関数について考えたことをまとめてみました。
複素関数も(二次元の)ベクトル場も$\mathbb{R}\to\mathbb{R}$の関数と考えることによって同一視してグラフとしてプロットする、というのはよく聞いたことがありますが、これはどうしても断続的な格子点上の矢印となってしまいます。
そこで、私はベクトルは速度とみることもできる、というのも思い出し、以下のように定義してみました。
複素関数$f(z)$に対して
$x'+y'i=f(x+yi)$を満たす実関数$x,y:\mathbb{R}\to\mathbb{R}$の組を$f$の積分曲線と呼ぶ
いくつかの積分曲線の像の和集合上で「積分曲線が動く」と言うことにする
以下便宜上積分曲線の変数を$t$と置きます
$x'+y'i=x+yi$
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x'= x\\
y'= y
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
これを解くと、
$z$の積分曲線は$(x,y)=(C_1e^t,C_2e^t)$
これは原点で動かないか$原点を通る直線$上を動く
$x'+y'i=x+yi$
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x'= -y\\
y'= x
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
これを解くと、
$z$の積分曲線は$(x,y)=(C_1\cos(t),C_2\sin(t))$
これは原点で動かないか$原点を中心とする円$上を動く
以下、関数の零点で動かない積分曲線は明らかなので省略することもあります。
$k$は整数とする
自然数$n$に対して$f(z)=z^n$の積分曲線は
$ある実数a(\neq0)が存在して、aiの(n-1)乗根からの距離の総積がaとなる曲線$上か、偏角が$\frac{2\pi}{n-1}$の整数倍の直線上を動く(スクロールできます)
$n=2$のとき円
$n=3$のときレムニスケートになります
自然数$n$に対して$f(z)=z^n$の積分曲線は
$r^{n-1}=C\sin(n-1)\theta \ (Cは任意の実数)と表せる曲線$上か、偏角が$\frac{2\pi}{n-1}$の整数倍の直線上を動く(スクロールできます)
$f$の積分曲線$(x,y)について$
$x=r\cos\theta,y=r\sin\theta$とおく
このとき$x'=r'\cos\theta-r\theta'\sin\theta,
y'=r'\sin\theta+r\theta'\cos\theta$
$(x+yi)^n=r^n(\cos n\theta+i\sin n\theta)$より
\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} r'\cos\theta-r\theta'\sin\theta = r^n\cos n\theta\\ r'\sin\theta+r\theta'\cos\theta = r^n\sin n\theta \end{array} \right. \end{eqnarray}
$$ \iff\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} r'\cos^2\theta-r\theta'\sin\theta\cos\theta = r^n\cos n\theta\cos\theta\\ r'\sin^2\theta+r\theta'\cos\theta\sin\theta = r^n\sin n\theta\sin\theta\\ r'\sin\theta\cos\theta+r\theta'\cos^2\theta = r^n\sin n\theta\cos\theta\\ r'\sin\theta\cos\theta-r\theta'\sin^2\theta = r^n\cos n\theta\sin\theta\\ \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
$$ \iff\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} r'= r^n\cos (n-1)\theta\cdots(1)\\ r\theta' = r^n\sin (n-1)\theta\cdots(2)\\ \end{array} \right. \end{eqnarray} $$
$$\Longrightarrow (r^{n-1})'\sin (n-1)\theta=r^{n-1}(\sin (n-1)\theta)'$$
$$\Longrightarrow r^{n-1}=C\sin (n-1)\theta \ (Cは任意の実数), \ \sin (n-1)\theta=0$$
これらはそれぞれ、$r^{n-1}=C\sin((n-1)\theta) \ (Cは任意の実数)と表せる曲線$偏角が$\frac{2\pi}{n-1}$の整数倍の直線を表している
n=5, C=1の場合の$r^{n-1}=\sin(n-1)\theta$
補題から$r^n=a\sin n\theta$と表せる曲線が$ある実数a(\neq0)が存在して、aiのn乗根からの距離の総積がaとなる曲線$であることを示せば十分
$ai$の$n$乗根のうち偏角が最小なものを$\zeta_n$とおく
このとき$ある実数a(\neq0)が存在して、aiのn乗根からの距離の総積がaとなる曲線$は
$$\prod_{k=0}^{n-1}|z-\zeta_n^k|=a$$
を満たす$z$の集合であるといえる
左辺は$z$について$ai$の$n$乗根を全て根にもつモニック多項式であるから
$|z^n-ai|=a$
$(z^n-ai)(\bar{z}^n+ai)=a^2$
$z^n\bar{z}^n-ai(z^n-\bar{z}^n)=0$
$z=re^{i\theta}$とおくと(極形式表示)
$r^{2n}=2ar^n\sin n\theta$
$r=0$(原点)または$r^n=a\sin n\theta$(求めたかった曲線)$\blacksquare$
いつも通り適当に考えた議論ですが、先行研究や、より良い名称、感想、批判、質問等があればコメントください。
最後にいくつか予想を書いておきます。
複素関数$f$について
$$fが連続関数\iff fの積分曲線が存在する$$
二つの連続な複素関数$f,g$について
$$積分曲線の像全体の集合が一致する\iff \exists h:\mathbb{C}\to\mathbb{R},(h\neq0),\forall z\in\mathbb{C}, f(z)=h(z)g(z)$$
連続な複素関数$f$,複素数$a$について
$$\exists c\in\mathbb{C},あるcfの積分曲線x,yについて\lim_{t\to\infty}x+yi=a\iff f(a)=0 $$
連続な複素関数$f$について
$$\exists c\in\mathbb{C},あるcfの積分曲線x,yが周期関数\Longrightarrow x+yiの像囲まれた領域内にa\in\mathbb{C}が存在し f(a)=0 $$
2022/11/22 22:40 更新
予想の関数に条件を課しました。
2022/12/25 25:14
今更ながら$\dot{z}=f(z)$を解けばいいことに気づきました
2022/11/22 22:40 更新
微分幾何学に類似の概念があったので
名称を「動点」から「積分曲線」に変更しました。