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大学数学基礎解説
文献あり

「1/2^nは0に収束する」を証明する(1/nの部分列であることを使いながら)

2026
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経緯

 以前に書いた記事 「区間縮小法の原理で『2乗して2になる正の実数(√2)』の存在を確認する」 内で行っている$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0$の証明についてTwitterでコメントをいただきました。

 上記の記事内では、以下のステップで示しています。

① $1$以上の整数に対し、$n<2^n$が成立することを示す。
② アルキメデスの性質により、$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{n}=0$を示す。
③ ①より、$\frac{1}{2^n}<\frac{1}{n}$が成り立つので、このことと②から$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0$を示す。

 この証明に対して「$\{\frac{1}{2^n}\}$$\{\frac{1}{n}\}$の部分列であることと②を使えば、①を省略できる」という旨のご指摘いただきました。

 上記事実は当たり前に感じる方も多いと思うのですが、せっかくなので「部分列の定義」に戻りつつ、$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0$を証明していきたいと思います。

部分列

集合$N$$1$以上の整数全体とし、写像$f:N\rightarrow N$は順序を保つ単射($m,n \in N$について、$m< n$ならば$f(m)< f(n)$を満たす)であるとする。このとき、数列$\{a_n\}$に対して、$b_n=a_{f(n)}$としたとき、数列$\{b_n\}$$\{a_n\}$の部分列という。

※参考:内田伏一「集合と位相」p.143

今回のケースに当てはめてみましょう。写像$f:N\rightarrow N$$f(n)=2^n$とすれば、$m,n \in N$について、$m< n$ならば$f(m)< f(n)$を満たします。$a_n=\frac{1}{n} \ (n=1,2,3,\cdots)$として数列$\{a_n\}$を定め、$b_n=a_{f(n)}$とすると、$b_n=a_{f(n)}=\frac{1}{f(n)}=\frac{1}{2^n}$となり、$\{\frac{1}{2^n}\}$$\{\frac{1}{n}\}$の部分列であることが確認できました。

収束する数列の部分列は、元の数列と同じ収束値に収束する

数列$\{b_n\}$は数列$\{a_n\}$の部分列であるとする。$\{a_n\}$$\alpha$に収束するならば、$\{b_n\}$$\alpha$に収束する。

この命題を証明する前に、今回のケースに当てはめてみましょう。$\{\frac{1}{n}\}$$0$に収束することを示せれば、上記の命題により、$\{\frac{1}{n}\}$の部分列である$\{\frac{1}{2^n}\}$$0$に収束することがわかります。

では、 趣味の大学数学「収束する点列の部分列が収束することの証明」 を参考にしながら、まずは以下の補題を示していきます。こちらのサイトでは、一般の距離空間を対象にしていますが、本記事では1次元ユークリッド空間のみを考えていきます。

集合$N$$1$以上の整数全体とし、写像$f:N\rightarrow N$は順序を保つ単射($m,n \in N$について、$m< n$ならば$f(m)< f(n)$を満たす)であるとする。このとき、$M \in N$について$M \leqq f(M)$が成り立つ。

数学的帰納法で示す。

$f(1)$$1$以上の整数であることから、$1 \leqq f(1)$が成立する。

$k \in N$について
$$ k \leqq f(k) $$
が成立すると仮定する。両辺に$1$を加えると
$$ k+1 \leqq f(k)+1 \cdots (1) $$
となる。

$f$は順序を保つ単射なので$f(k)< f(k+1)$が成り立つ。$f(k),f(k+1)$$1$以上の整数なので
$$ f(k+1)-f(k) \geqq 1 $$
であり
$$ f(k+1) \geqq f(k)+1 \cdots (2) $$
となることがわかる。

(1)(2)より
$$ k+1 \leqq f(k)+1 \leqq f(k+1) $$
となり、$k+1 \leqq f(k+1)$が成り立つ。

以上より、すべての$M \in N$について$M \leqq f(M)$が成り立つことが示された。

この補題を使いながら、命題1を証明していきます。

命題1の証明

$\{a_n\}$$\alpha$に収束するので、任意の正の実数$\epsilon$に対し、ある$1$以上の整数$n_\epsilon$が存在して、$n>n_\epsilon$ならば
$$ |a_n-\alpha|<\epsilon \cdots (1) $$
を満たす。

$\{b_n\}$$\{a_n\}$の部分列なので、ある順序を保つ単射$f:N\rightarrow N$(集合$N$$1$以上の整数全体)が存在して、$b_n=a_{f(n)}$とかける。

ここで、補題より
$$ n_{\epsilon} \leqq f(n_{\epsilon}) \cdots (2) $$
である。

また、$f$は順序を保つ単射なので、$n \in N$について
$$ n_{\epsilon}< n \Longrightarrow f(n_{\epsilon})< f(n) \cdots (3) $$
が成り立つ。

(2)(3)より、$n_{\epsilon}< n$ならば
$$ n_{\epsilon} \leqq f(n_{\epsilon}) < f(n) $$
となるので
$$ n_{\epsilon} < f(n) $$
であることがわかる。

したがって、(1)より、$n_{\epsilon}< n$ならば
$$ |a_{f(n)}-\alpha|<\epsilon $$
を満たす。

以上より、$b_n=a_{f(n)}$であることから、任意の正の実数$\epsilon$に対し、ある$1$以上の整数$n_\epsilon$が存在して、$n>n_\epsilon$ならば
$$ |b_n-\alpha|<\epsilon $$
を満たすことがわかる。

$\lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0$

$$ \lim_{n \to \infty}\frac{1}{2^n}=0 $$

$\epsilon$を任意の正の実数とする。

アルキメデスの性質より、ある$1$以上の整数$n_\epsilon$が存在して
$$ (0<)\frac{1}{\epsilon}< n_{\epsilon} $$
を満たす。

よって、$n>n_\epsilon$を満たす、$1$以上の整数$n$について
$$ \frac{1}{\epsilon} < n $$
が成り立つ。

したがって
$$ \frac{1}{n} <\epsilon $$
となる。

よって、任意の正の実数$\epsilon$に対し、ある$1$以上の整数$n_\epsilon$が存在して、$n>n_\epsilon$ならば
$$ |\frac{1}{n}| < \epsilon $$
を満たす。

ゆえに、$\{\frac{1}{n}\}$$0$に収束する。

$\{\frac{1}{2^n}\}$$\{\frac{1}{n}\}$の部分列であることと、命題1から、$\{\frac{1}{2^n}\}$$0$に収束することがわかる。

感想など

 $f(n)=2^n$とすると、補題は「$M \in N$について$M \leqq 2^M$が成り立つ」と主張しているので、本記事の証明では、元の記事における証明ステップ「①$1$以上の整数に対し、$n<2^n$が成立することを示す」を実質的には省略できていなそうだな、と思いました。もっとシンプルな良いアプローチがあるのかもしれません。

 また、本記事の内容は「自明」で終わらせて良いことなのかもしれませんが、自分の理解のためにも長々と書いてみました。以前に書いた記事 「区間縮小法の原理で『2乗して2になる正の実数(√2)』の存在を確認する」 と同様、「この仮定、使っていいのかな…?」などと思いつつ恐る恐る証明しました。なにかやばそうであれば、ぜひコメントくださいませ(理解できる力量については自信がないですが…)。自然数や実数と仲良くなりたい!

参考文献

投稿日:20221126

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みぽ
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今日もねこがかわいい。

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