こんにちは
こんにちは、
K.Hirata
です。
これは
の第1日目の記事として書かれました。
本記事では、前加法圏と加法的関手全体の圏からへの忘却関手について基本的なことを調べます。
前半は前加法圏の話、後半は加法圏に限定する話になっています。
前提知識
圏論の基本的な概念を知っていれば、大体話の流れは分かる様にしたつもりですが、難しかったらすみません。
全体的に証明は何かを見ながらであれば埋めれる程度に雑に書いてあります。
前加法圏・加法圏の定義、モナド(monad)、代数の圏(Eilenberg-Moore 圏)、Beck の monadicity 定理あたりを知っていれば読めるかと思います。Beck の定理は最後だけ使います。
以下細かい Fact です。(この辺りを知っている人は問題なく読めるかと思います。)
- 豊穣圏と所々書いてありますが、Ab-豊穣圏とは単に前加法圏のこと。
- 特に対象が 1 つの前加法圏は単に環のこと。
- 加法圏とは、前加法圏であって、有限 biproduct (双積) をもつもの。
- 前加法圏 の間の加法的関手とは、関手 であって、Homset 間の写像 が群準同型になっているもの。
- 加法的関手はいつも biproduct を保つ。
圏 が -豊穣圏であることは"性質"か、それとも"構造"か
圏 に対して、その -豊穣化は存在しないかもしれないし、存在しても一意的とも限らない。
で言い換えると、は本質的全射ではなく、前加法圏,について圏同型があっても、は何らかのでと書けるとは限らない。
すなわち、前加法圏であるということは、圏の性質というより、むしろ構造とみるべきである。
特にモノイドに対して、それを乗法モノイドにもつ環構造の個数が 0 のもの、2 以上のものを挙げれば良い。
まず、元の数が 3 の環は全てに同型であるが、モノイドはの乗法モノイドに同型でない。
次に、を素数として、全単射を、を素因数分解してとなるとき、をへ送る写像とする。0 は 0 へ送るものとする。この全単射で、値域のの通常の環構造が定義域のに通常でない環構造を誘導する。ところでこの乗法は通常の乗法と一致する。
Ab-豊穣圏全体は Cat 上の何らかの monad の代数の圏か
上のある monadがあって、その Eilenberg-Moore 圏がになっている。
に対して、を、 とし、 で定める。
つまり、の射とは、の射の係数の線型結合のことになる。
合成は自然にから誘導されるものにする。
すると、このは自然に関手へ拡張できる。
さらに、unit を、対象に関しては identity で射をへ送る関手で定め、
multiplication を、線型結合の線型結合を展開して、一つの線型結合にまとめる関手で定めれば、はmonadになる。
この monadの代数とは、であって、
と
をみたすもの。は射の形式的な線型結合を計算する関手と思うことで、これは前加法圏と一致する。
具体的には、零射を、に対してと定める。
可換図式の 1 つ目が単位律を、
2 つ目が結合律を表す。
代数の間の射も、加法と交換する関手なので、すなわち加法的関手である。
例えば、が conservative (が同型ならも同型)であることが従う。すなわち、加法的関手が、圏の間の関手として同型なら、逆関手も加法的であることなどはこの定理からすぐわかる。
(もっと分かることがたくさんあるが省略)
加法圏であることは、圏の"性質"であるか
今度は加法圏に限定して議論する。
に入る加法圏の構造は存在するなら一意的である。
すなわち、加法圏は圏の性質とみれる。
圏が零対象と任意の biproduct を持つとき、 に対して、
で が定義でき、は零対象を経由する射とすることで、は可換モノイドになる。
さらにこの可換モノイド構造は、合成に関して双線型になり、これがを可換モノイドの圏での豊穣圏にする。
実はこれが唯一のを-豊穣圏にする構造であり、より強くこの加法がを群になることが、を加法圏とすることと同値になる。
加法圏全体は Cat 上の何らかの monad の代数の圏か
加法圏からなるの充満部分圏は、reflective full subcategory である。
前加法圏に対して、前層圏のうち、表現可能関手の有限直和で表せるものたちをで表す。をへ送る関手で、reflectionが定まる。
ちなみにこれは環に対して、有限生成自由加群と準同型たちの圏を取る操作の一般化になっている。
加法圏からなるの充満部分圏は、上 monadic である。
既に 2 つの monadic な関手 と を得ている。
これらの合成 も monadic であることが分かればいい。
そのためには、Beck の定理からが-split pair の coequalizer を create することが必要十分である。
,を加法圏とし、を加法的関手とする。次の図式
がにおけるsplit-coequalizerになっていると仮定する。特には対象に関して全射である。
すると、が monadic であったから、は前加法圏の構造を持ち、この図式はにおける coequailzer の図式にもなっている。
もし、このが加法圏であることが示せれば、これはにおける coequalizer にもなるので、証明が完了する。
の任意の対象を2つ,をとる。は対象に関して全射であるから、それぞれある,があって、
となる。今は加法的関手だから、がとの直和になる。
よっては加法圏。
追記 (12/25)
実はこの記事には誤った主張が含まれています。
それについては、
25日目
の記事をご覧ください。