まずはこの記事の主役であるシムソン線とシュタイナー線を導入します. 証明中に出てくる有向角については こちらの記事 [3]を参照してください.
三角形
次のように角度計算できる.
高校数学の美しい物語 では複素座標でも証明されています.
三角形
シュタイナー線はシムソン線を2倍に相似拡大したものなので明らか.
シムソン線とシュタイナー線
この章では, シムソン線に関連する構図をいくつか紹介します. 構図と言っても数オリで使えるわけではなさそうです.
三角形
定理1と同様に
よりよい.
シムソン線に平行な直線
垂心を
定理2と同様に
よって, 3点
垂心を通るシュタイナー線
EGMO(p.59)では, 命題4は別の方法で(命題3を用いて)証明されています. 気になる方は参照してください. 命題4とは逆に,
垂心を
反シュタイナー点
これを使うとEGMOの問題が瞬殺できます.
どの辺の長さも相異なる鋭角三角形
反シュタイナー点についてより詳しく知りたい方は こちらの資料 を参照してください.
さて, 次はミケル点の登場です.
完全四辺形をなす4直線
命題6と先ほどの命題4を合わせると, 次の定理が証明できます. これはEGMO (pp.198-200)では根軸を用いて証明されています.
完全四辺形をなす4直線
ミケル点を
ガウス・ボーデンミラーの定理
2つのシムソン線がなす角は簡単に表すことができます.
三角形
シムソン線のなす角
外接円の直径の両端点におけるシムソン線に関してはさらに面白い結果が知られています.
三角形
2本のシムソン線の交点を
対蹠点におけるシムソン線
実はこの対蹠点におけるシムソン線が9点円上で直交するという事実は氷山の一角にすぎず, さらに強い主張が存在します. それについてはまた別の記事でいつか書こうと思いますが, 興味のある方はPoncelet pencilで調べてみてください.
(結論から言うと, この2本のシムソン線はある直角双曲線の漸近線になっており, その双曲線はジェラベク双曲線やキーペルト双曲線などの仲間です.)
シムソンの定理の拡張は, 清宮俊雄をはじめとする日本人数学者によってかなり前から研究されていました. 今回はそのうち有名な2つの結果を紹介します.
三角形
『シムソンの定理拡張における発想の分析』を参照.
三角形
『シムソンの定理拡張における発想の分析』を参照.
これらの定理については僕もあまり知らないので詳しくは言えないのですが, お気持ち的にはどちらも三角形+2点に対してシムソン線の類似物を定めているとみることができます.
ある円に半径がその3分の1である円が内接しながら転がるとき, 動円の円周上の定点の軌跡をデルトイドといいます. 下の図は外接円上の点を動かしたときのシムソン線の軌跡を表示したものです. なにやらきれいな正三角形のような図形が浮かび上がっていると思いますが, これがデルトイドです.
シュタイナーデルトイド
三角形
数研通信の記事 で初等的に証明されている.
12/11の るささんの記事 にシュタイナーデルトイドとモーリーの三角形の話が出てきて面白かったです.
三角形に傍接円なるものがあるじゃないですか. だったら傍接放物線があったっておかしくないですよね. (雑)
三角形
傍接放物線
ここまでの話では, シムソン線を「三角形とその外接円上にある点」について定まるものとして, シムソン線自体の性質をたくさん見てきました. 残る2章では, 三角形の世界を離れ, より多くの図形(例えば四角形や多角形など)にシムソン線の類似物を定めていきます.
まず次の命題をご覧ください.
円に内接する四角形
見た目はなんかヤバそうな感じがしますが, 丁寧にAngle-chaseをすれば簡単に示すことができます.
実は命題12はより強い主張があり,
三角形
このとき, 命題12でシムソン線を垂足円に置き換えた次の定理が成り立ちます.
垂心系をなさない4点
より, 4点
よって, 4点
オイラー・ポンスレ点
オイラー・ポンスレ点は垂足円の応用事例として「こんなのがあるよ」という紹介にとどめてもよかったのですが, それだとシムソンの定理と同じく「ふ~ん」となって終わりかねないので, せっかくなのでオイラー・ポンスレ点に関する面白い事実を1つ紹介します.
漸近線が直交する双曲線を直角双曲線といいます. 直角双曲線は初等幾何と円錐曲線のつながりにおいてとても重要で, 代表的な双曲線であるジェラベク双曲線, キーペルト双曲線, フォイエルバッハ双曲線などはすべて直角双曲線です. これらの双曲線はいずれも三角形の五心やオイラー線に関わるものですが, 実はオイラー・ポンスレ点と直角双曲線も密接に関係しています.
3点
本質でないので省略. 幾何教程(下)(pp.298-299)ではパスカルの定理を用いて証明されている.
4点
垂心系をなさない4点
簡単な角度計算より,
一方,
同様にして
\mathcal{H}の中心はオイラー・ポンスレ点
これを使うとこんなことが示せます.
垂心系をなさない4点
4点
オイラー・ポンスレ点の一致
4点をそれぞれの垂心に置き換えることでオイラー・ポンスレ点を共有する4点の組が次々と作られるの, 面白いですよね. さらに, 命題16において
最後にシムソン線を四角形, 多角形の世界まで広げていきます.
円に内接する四角形
四角形のシムソン線
私はこの事実を
このサイト
で知りました. 証明が載っていなかったので自分で示しましたが, ミケル点からの垂線の足の構図に帰着されるのは面白いです.
そして五角形やそれ以上の多角形の場合もミケル点からの垂線の足による議論でこの命題が成立することが示せるはずです.
円に内接する
さて, ひとつ前の章で垂足円を導入したときと同じように, 「外接円上の点」にしか定義されないという制約はなくしたいわけです. そこで, 円に内接するとは限らない四角形に対し, 任意の点における垂足円を定義します.
命題17において, シムソン線を垂足円に置き換えればうまくいきそうな感じがしますが, 1つ問題があります. 命題17をそのまま拡張すると, 4つの垂足円に
しかし, 実はこの場合4つの垂足円は本質的に4直線, つまりシムソン線と変わりません. その理由となるのが次の補題です.
四角形
このとき, 5点
同様にして, 4点
(下の図で
垂足円の束
実は補題20はミケルの定理の特殊な場合に他なりません.
1点
反転されたミケル点
「一般の位置にある4直線」と「1点を共有する4円」は本質的にほとんど同じとみなせます. なぜなら4円を共有点を中心に 反転 すれば4直線に移るからです. 従って, 次のようにすれば四角形の垂足円が定義できます.
四角形
四角形の垂足円
最後の命題は少し無理やり感がありますね... 「だから何」とか言わないでください.