0

優しい解説を心掛けるリーマン幾何学~1. ベクトルとテンソル 1.3 テンソル(1)~

228
0

 前回の記事: 優しい解説を心掛けるリーマン幾何学~1. ベクトルとテンソル 1.2 双対ベクトル空間(2)~
 次回の記事:

 テンソルの解説です。代数学の環論においてテンソル積空間の構成から理解しておくのが一番どの文脈でも適用出来て汎用性が高いと思いますが、その方法は少し道が長くなるので、差し当たって多様体論の基本的内容を理解するために最小限の導入にします。

テンソル

 n次元ベクトル空間をV、その双対空間をVとします。Vの元は線形写像VRであり、またVの元もVRと見なせました。これらはベクトルまたはコベクトルを1つ引数に取る線形関数であり、これを一般化すれば複数のベクトルやコベクトルを引数に取る線形関数を考えることができそうです。
 例えば、Vの基底を{ei}とし、v=iviei, w=jwjejとするとき、n×nの行列Aを使って、v,wに対して、
tvAw=(v1vn)(a11a1nan1ann)(w1wn)=i,jviwjaij
という量を対応させることで2つのベクトルを引数に持つ関数が得られます。この関数をf(v,w):=tvAwと書くと、
f(av1+bv2,w)=t(av1+bv2)Aw=atv1Aw+btv2Aw=af(v1,w)+bf(v2,w)
となり、1つ目の引数に対して線形です。また同様に2つ目の引数に対しても線形です。このように各引数に対する線形性を多重線形性といいます。
 これを一般化してテンソルを定義します。

テンソル

多重線形写像
T:V××Vr ×V××Vs R
(r,s)型テンソルという。r+sをテンソルTの階数(ランク)という。(r,s)型テンソルの集合をT(r,s)と書く。

 n×nの行列は(2,0)型、(1,1)型、(0,2)型テンソルなどと見なすことができます(また後で触れますが、2階のテンソルのある基底に関する表現は行列となります)。

テンソル空間

 T(r,s)には和とスカラー倍が以下のように定義されます。ここではT(1,2)を例にとっていますが、一般のT(r,s)に対しても同じです。
T,ST(1,2), v1V, η1,η2V(T+S)(v1,η1,η2):=T(v1,η1,η2)+S(v1,η1,η2)(αT)(v1,η1,η2):=αT(v1,η1,η2)
 これによりT(r,s)は明らかに実ベクトル空間となります。T(r,s)をベクトル空間とみなしたものをテンソル空間と呼びます。

 次にテンソル空間の基底を構成します。Vの基底を{ei}Vの双対基底を{fi}とします。T(1,2)の元eifjfk
eifjfk(f,em,en):=δiδmjδnk
として、各引数に対して多重線形に拡張して定義します。
さらにTT(1,2)に対して、
Tjki:=T(fi,ej,ek)
Tの基底{ei},{fi}に関する成分と呼びます。このとき任意のTT(1,2)
T=i,j,kTjkieifjfk
と表されるので、集合{eifjfk}T(1,2)において完全性を満たします。また独立性も{ei}{fi}の独立性を繰り返し使うことで成り立つことが分かります。よってこの集合がテンソル空間T(1,2)の基底となります。

 次回はテンソルの同値、存在、成分の変換性、縮約について述べます。

投稿日:20221218
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Submersion
Submersion
98
30008
専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中