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優しい解説を心掛けるリーマン幾何学~1. ベクトルとテンソル 1.2 双対ベクトル空間(1)~
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前の記事では双対ベクトル空間を定義しました。この記事では双対ベクトル空間のいくつかの性質を説明します。
定義より$V$と$V^\ast$の元から実数を作ることができます。これが双対積です。
双対積 $\langle\cdot,\cdot\rangle :V\times V^\ast\to\mathbb{R}$
を$v\in V$と$f\in V^\ast$に対して、
$$
\langle v,f\rangle=\langle f,v\rangle=f(v)
$$
と定義する。
このことから$V$を$V^\ast$の双対空間と見なすことができます。つまり$(V^\ast)^\ast\cong V$が成り立ちます。次に$V$の基底の変換に対して、$V^\ast$の双対基底はどのように変換されるかを見ます。
$V$の基底を$\{e_i\}$とし、$\{e_i\}$に関する$V^\ast$の双対基底を$\{f^i\}$とする。このとき、$V$の基底の変換
$$
e'_j=\sum_ie_ia^i_j
$$
に対して、$\{e'_i\}$に関する$V^\ast$の双対基底$\{f'^i\}$は
$$
f'^i=\sum_j(a^{-1})^i_jf^j
$$
で与えられる。
$$
f'^i=\sum_jb^i_jf^j
$$
とすると、
$$
\delta^i_j=f'^i(e'_j)=\sum_{k,l}b^i_kf^k(e_la^l_j)=\sum_{k,l}b^i_ka^l_jf^k(e_l)=\sum_{k,l}b^i_ka^l_j\delta^k_l=\sum_kb^i_ka^k_j
$$
となることから従う。
$u\in V^\ast$は
$$
u=\sum_i u_if^i
$$
と表されます。このとき、$u_i$達を$u$の成分と呼びます。$V$の基底の変換とそれに伴う成分の変換の関係を$V^\ast$に適用すればただちに次の命題を得ます。
ベクトル空間$V$の双対空間を$V^\ast$とする。$\{e_i\},\{e'_i\}$を$V$の基底とし、$\{f^i\},\{f'^i\}$を対応する双対基底とする。$u=\sum_i u_if^i\in V^\ast$の成分$\{u_i\}$は$V$の基底変換$e'_i=\sum_j e_ja^j_i$に対して、
$$
u'_i=\sum a^j_iu_j
$$
と変換される。
これで双対空間の基本事項は終わりです。次回からはテンソル空間の解説です。