0
大学数学基礎解説
文献あり

ピーマン分類法を厳密に検証する(2023年共通テスト数ⅡB第3問に関連する話題)

662
0

前提

2023年共通テスト数ⅡB第3問では、次のようなピーマン分類法が出題されました。

(原文より抜粋 ここから)

(1) ある生産地で生産されるピーマン全体を母集団とし,この母集団におけるピーマン1個の重さ(単位はgを表す確率変数をXとする。mσを正の実数とし,Xは正規分布N(m,σ2)に従うとする。

(中略)

(2) (1)の確率変数Xにおいて,m=30.0,σ=3.6とした母集団から無作為にピーマンを1個ずつ抽出し,ピーマン2個を1組にしたものを袋に入れていく。このようにしてピーマン2個を1組にしたものを25袋作る。その際,1袋ずつの重さの分散を小さくするために,次のピーマン分類法を考える。

ピーマン分類法

無作為に抽出したいくつかのピーマンについて,重さが30.0g以下のときをSサイズ,30.0gを超えるときはLサイズと分類する。そして,分類されたピーマンからSサイズとLサイズのピーマンを一つずつ選び,ピーマン2個を1組とした袋を作る。

(原文より抜粋 ここまで)

実際の問題では、この後は25袋作れる確率が0.95以上となるのに必要なピーマンの個数を求めていました。しかし、私は別のところに引っ掛かりました。それは、分散が実際にどれほど小さくなるかということです。

実はこれは厳密に計算することができるので、計算してみましょう。

問題の定式化

m,σを正の実数の定数とするとき、確率分布N+(m,σ2)を以下の密度関数を持つ分布として定義する。

f(x)={22πσe(xμ)22σ2(x>m)0(xm)

また、確率分布N(m,σ2)を以下の密度関数を持つ分布として定義する。

f(x)={22πσe(xμ)22σ2(xm)0(x>m)

X1N+(m,σ2),X2N(m,σ2)のとき、V(X1+X2)を求めよ。

準備

X=X1mσ,Y=X2mσとおくと、

X,YN+(0,1),V(X1+X2)=σ2V(XY)

であることがわかります。

また、任意の連続分布S,Tに対し、

V(ST)=V(S)+V(T)2Cov(S,T)

が成り立ちますが、今回の場合はXYの同時分布がそれぞれの分布の積で与えられ、したがって独立であるため、

V(XY)=V(X)+V(Y)

が成り立ち、よって

V(X)=V(Y)

を求めればよいことがわかります。

計算

E(X)=E(Y)=022πxex22dx=22π0xex22dx=22π[ex22]0=22π=2π

E(X2)=E(Y2)=022πx2ex22dx=22π0x2ex22dx

E(X2)2=E(Y2)2=2π0x2ex22dx0y2ey22dy=2π00x2y2ex2+y22dxdy=2π00π2r5sin2θcos2θer22drdθ(x=rcosθ,y=rsinθ,dxdy=rdrdθ)=2π0r(r2)2er22dr0π2sin2θcos2θdθ

0r(r2)2er22dr=04t2etdt(r22=t,rdr=dt)=[4t2et]0+08tetdt=08tetdt=[8tet]0+08etdt=08etdt=[8et]0=8

0π2sin2θcos2θdθ0π2(sin2θ2)2dθ=0π2sin22θ4dθ=0π21cos24θ8dθ=0π218dθ=116π

よって

E(X2)2=E(Y2)2=2π8116π=1

したがって

E(X2)=E(Y2)=1

すなわち

V(X)=V(Y)=1(2π)2=12π

以上より

V(XY)=V(X)+V(Y)=(12π)=24π

がわかりました。

ピーマン分類法を使わない場合は1袋の分散は2となるので、4πだけ小さくなることがわかりました。

最後に

ここではピーマンの重さが正規分布に従うと仮定しましたが、他の分布のときは未解決です。 次の記事 で定式化しているので、どなたか解いていただければと思います。

参考文献

投稿日:2023116
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

nayuta_ito
116
36197

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中