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大学数学基礎解説
文献あり

二平方定理のとある一般化

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はじめに

 この記事ではフェルマーの二平方定理
「自然数nがある整数x,yを用いてn=x2+y2と表せることとnの非平方因子が4k+3型の素因数を持たないことは同値である」
またはヤコビの二平方定理
r2(n)=#{(x,y)Z2x2+y2=n}とおくとr2(n)=42dn(1)d12が成り立つ」
を一般化した問題

 整数a,b,cと自然数nに対してn=ax2+bxy+cy2を満たすような整数(x,y)はいくつ存在するか

のいくつか特別な場合について解説していきます。
 これにあたって 二次形式についての記事 の内容や用語をよく使うので予め目を通しておくことを推奨します。

二次形式の自己同型

 以下では二次形式f=[a,b,c]=ax2+bxy+cy2が正定値、つまりD=b24ac<0の場合を考えていきます。

 二次形式fa(x2+y2),a(x2+xy+y2)と同値でなければfを変えないような変換(自己同型)は
(XY)=(±x±y)
2つに限る。

 この補題は特に証明しませんが、これは虚二次体Q(d)に含まれる1の累乗根が
d=3のとき±1,±ω,±ω26
d=4のとき±1,±i4
d<4のとき±12
であることに起因しています。
 この補題(およびh(3)=h(4)=1)から判別式Dの原始的な二次形式fの自己同型の個数をwDとおくと
wD={6D=34D=42D<4
となることがわかります。

properな表現

 自然数nが二次形式[a,b,c]によってproperに表現可能であるとはある互いに素な整数α,γがあって
n=aα2+bαγ+cγ2
が成り立つことを言う。またそのような(α,γ)mproperな表現と言う。

 nのproperな表現(α,γ)に対し整数m(0m<2n)であってある変換
(XY)=(αγ)(xy)
によって
aX2+bXY+cY2=nx2+mxy+ly2(l=(m2D)/4n)
が成り立つようなものがただ一つ存在する。

 仮定よりα,γは互いに素なので
αδγβ=1
の整数解はβ=β0+αk,δ=δ0+γk(kは任意の整数)によって尽くされ、これに対して変換
(XY)=(αβγδ)(xy)
を考えると、ある整数m,lがあって
aX2+bXY+cY2=(aα2+bαγ+cγ2)x2+(2aαβ+b(αδ+βγ)+2cγδ)xy+(aβ2+bβδ+cδ2)y2=nx2+mxy+ly2
が成り立つ。
 いまβ=β0+kα,δ=δ0+kγより
m=2aαβ+b(αδ+βγ)+2cγδ=(2aαβ0+b(αδ0+βγ0)+2cγδ0)+2k(aα2+2bαγ+cγ2)=m0+2kn
が成り立つので
0m<2n
となるようなkおよびmが一意に存在することがわかる。

 いま[n,m,l]の判別式m24nl=b24ac=Dから
m2D(mod4n)
が成り立つので、逆に
m2D(mod4n)
なる0m<2nに対してlm24nl=Dによって定めた二次形式[n,m,l]を考えます。

 [a,b,c]によるnのproperな表現の個数は
([a,b,c]の自己同型の個数)×([n,m,l][a,b,c]と同値となるようなmの個数)
となる。

 定理3による対応(α,γ)mの挙動を考える。

m(α,γ)について

 f=[a,b,c]g=[n,m,l]が同値となるようなmに対し、その変換f(X,Y)=g(x,y)
(XY)=(αβγδ)(xy)
とおくとproperな表現(α,γ)が得られる。またこの変換の取り方はfの自己同型の個数だけあるので同じだけの(α,γ)が得られることになる(恒等でない自己同型は1を固有値に持たないのでそれぞれが違う表現を定めることもわかる)。

(α,γ)mについて

 nのproperな表現(α,γ),(α,γ)が同じmを定めるとき、
(XY)=(αβγδ)(xy),(XY)=(αβγδ)(xy)
とおくとg(x,y)=f(X,Y)=f(X,Y)なので(X,Y)(X,Y)は自己同型の関係にあり、したがって(α,γ),(α,γ)も自己同型の関係にあることがわかる。

平方剰余と表現の個数

 上では合同方程式
m2D(mod4n)
によってnのproperな表現の個数が計算できることを示しました。
 ではまず
m2D(mod4n)
はいくつの解を持つのかを考えていきましょう。
 ただし以下ではnDは互いに素である場合を考えていきます。

 整数a,n(n>0)に対してクロネッカー記号(a|n)=(an)を次のように定める。
・奇素数pに対しては(a|p)をルジャンドル記号とする。
p=2,2aのときは(a|p)=(1)a218とする。
n=p|npepと素因数分解されるときは(a|n)=pn(a|p)epとする。
 このときクロネッカー記号は完全乗法的な関数となる。つまり任意のa,b,m,nに対し
(abn)=(an)(bn),(amn)=(am)(an)
が成り立つ。

 判別式Dと互いに素な自然数nに対し合同方程式
m2D(mod4n)
0m<2nなる解の個数は
pn(1+(Dp))=d|n(Dd)
となる。ただしdnの正の約数であって平方因子を持たないようなもの全体を渡るものとした。
 特に合同方程式に解が存在するためには(D|n)=1が成り立たなければならない。

 合同方程式
m2D(mod4n)
4nを法とした解の個数が2dn(D|d)となることを示せばよい。
  (Z/peZ)×の構造 とかルジャンドル記号の定義とかHenselの補題とかに注意する。

D1(mod4)のとき

 4nの素因数分解における素数pの指数をeとおくと合同式方程式
m2D(modpe)
の解の個数は
p3のとき1+(D|p)
p=2,e=2(nが奇数)のとき2
p=2,e3(nが偶数)のとき2(1+(D|p))
となるので中国剰余定理から
m2D(mod4n)
の解の個数は
2pn(1+(Dp))=2dn(Dd)
と求まる。また2n<m<0なる解と0<m<2nなる解の個数は同じであることから主張を得る。

D0(mod4)のとき

 仮定よりnは奇数となることに注意する。
 nの素因数分解における素数pの指数をeとおくと
m2D0(mod4)
の解はm0,22つ、
m2D(modpe)
の解は1+(D|p)個なので
2pn(1+(Dp))=2dn(Dd)
と求まる。

 nDと互いに素な自然数とする。このとき判別式Dの類群C(D)の完全代表系を{f1,f2,}とおくとnの表現fk(α,γ)の個数は
wDdn(Dd)
となる。特にnがある表現fk(α,γ)を持つならば(D|n)=1が成り立たなければならない。

 合同方程式
m2D(mod4n)
0m<2nなる解に対しm2=D+4nlよりn,mは互いに素、特に[n,m,l]は原始的となるのでこれはあるfkと同値となる。よって定理5から各mに対しnのproperな表現fk(α,γ)wD個得られる。また定理6よりmの取り方は
d|n(Dd)
通りであるのでnのproperな表現の個数は
wDd|n(Dd)
となる。
 いまnの表現fk(α,γ)(gcd(α,γ)=g)n/g2のproperな表現fk(α/g,γ/g)は一対一に対応するのでnの表現fk(α,γ)の総数は
wDg2nh|(n/g2)(Dh)=wDg2nh|(n/g2)(Dg2h)((D|g)0)=wDdn(Dd)(d=g2h)
と計算できる。
 また
h|(n/g2)(Dh)0(Dn/g2)=(Dn)=1
であったことから主張を得る。

 Dがある虚二次体の判別式であるとき、つまりある無平方な整数d<0が存在して
D={dd1(mod4)4dd2,3(mod4)
と表せるとき、nDと互いに素でないときもn=fk(α,γ)なる表現の個数は
wDdn(Dd)
となる。

 そのような個数をr(n)とおく。
 いまDの素因数pに対し
p=2であればm2D(mod42)の解は
 ・D4(mod8)のときm2,62=2(1+(D|p))
 ・D0(mod8)のときm0,42=2(1+(D|p))
pが奇素数であればm2D(modp)の解はm01=1+(D|p)
が成り立つので、gcd(n,D)が平方因子を持たなければ合同方程式
m2D(mod4n)
0m<2nなる解はd|n(D|d)個となり、したがって上と同様にしてr(n)=wDd|n(D|d)がわかる。
 またDの素因数pに対し
p=2であればm2D(mod44)の解は
 ・D12(mod16)のとき0
 ・D8(mod16)のとき0
pが奇素数であればm2D(modp2)の解は0
となるのでr(p2n)=r(n)が成り立つ。特に
d|p2n(Dd)=d|n(Dd)
が成り立つことに注意すると主張を得る。

 特にh(D)=1のときf1=[a,b,c]とおくと[a,b,c]によるnの表現の個数は
wDdn(Dd)
となります。
 例えばD=4,f1=x2+y2の場合を考えることで奇数nに対し
r2(n)=4dn(4d)=4dn(1d)=4dn(1)d12
とヤコビの二平方定理が得られることがわかります(r2(2n)=r2(n)からnが偶数の場合もわかる)。
 ちなみにnが素数の場合には次にようなことが言えます。

 素数p(D|p)=1を満たすとき、自己同型を除いて丁度2通りの表現p=fk(α,γ),fk(α,γ)が存在する。

指標と表現可能性

 以下簡単のため、フェルマーの二平方定理の素朴な一般化n=x2+Ny2を含む場合、つまりD0(mod4)の場合のみを考えます。

指標

 判別式Dの二次形式f=[a,2b,c]に対しD=D/4=b2acとおくと、Dの素因数p3に対しn=f(x,y)Dと互いに素ならば(n|p)nに依らず同じ値を取る。また
D0,3(mod4)のとき(1|n)=:δ
D0,2(mod8)のとき(2|n)=:ϵ
D0,6(mod8)のとき(2|n)=δϵ
についても同じことが言える。

  二次形式の記事 の定理4よりn=f(x,y),m=f(z,w)に対してあるX,Yが存在して
nm=X2DY2
が成り立つ。

 いまn,mDと互いに素とするとDの素因数p3に対し
nmX2(modp)
が成り立つので
(nmp)=1
つまり
(np)=(mp)
を得る。
 ここで(n|p)が不変であるためにはnp、特にDと互いに素であれば十分であることを留意しておきましょう。

 以下奇数Nに対し
(1N)=(1)N12={1N1(mod4)1N1(mod4)(2N)=(1)N218={1N±1(mod8)1N±3(mod8)(2N)=(1N)(2N)={1N1,3(mod8)1N1,3(mod8)
が成り立つことに注意してDの剰余に応じて
(anm)=1(a=1,2,2)
となることを示す。

  • D3(mod4)のとき
    n,mDと互いに素、特に奇数であったのでX,Yの一方は奇数でもう一方は偶数となる。よって
    nmX2+Y21(mod4)
    を得る。
  • D2(mod8)のとき
    同様にn,mは奇数であったのでXも奇数であり、Yの偶奇によって
    nm12Y2±1(mod8)
    を得る。
  • D6(mod8)のとき
    同様にYの偶奇によって
    nm1+2Y21,3(mod8)
    を得る。
  • D0(mod4,8)のとき
    Xは奇数なので
    nmX21(mod4,8)
    を得る。

 いまfに対して定まる不変量(|p)δ,ϵ,δϵのことを指標と呼びます。
 Dの素因数からp3なる指標の個数をrδ,ϵ,δϵも含めた指標の個数をμとおくと
μ={rD1,3(mod4)r+1D2,3(mod4),D4(mod8)r+2D0,3(mod8)
となり、 二次形式の記事 の命題10において登場したμと一致することがわかります。
 二次形式の取り方によって指標の値は様々に変わりますが、指標の値によって二次形式が定まるわけではありません。たとえばD=14のとき
((n7),(2n))=(1,1)
とする二次形式はx2+14y22x2+7y2の二つ存在します。
 このように指標の値(あるいは以下で定めるGHによる剰余類)によって定まるC(D)の部分集合を種(genus)と言います。例えばD=14の場合は
((n7),(2n))=(1,1),(1,1)
が定める2つの種{[1,0,14],[2,0,7]}{[3,2,7],[3,2,7]}が存在します。

表現の剰余

 判別式Dの原始的二次形式が表現し得る整数全体の(Z/DZ)×における像は
G={n(Z/DZ)×(D|n)=1}
となり|(Z/DZ)×/G|=2が成り立つ。
 また主形式I=x2Dy2が表現し得る整数全体の像HGの部分群をなし、原始的二次形式fが表現し得る整数全体の像はGHによる剰余類として表される。

 定理5より二次形式の像がGに含まれることがわかるので、あとは任意のnGに対してあるnn(modD)がある表現を持つことを示せばよい。それはディリクレの算術級数定理よりpn(modD)なる素数pが存在することと定理5系よりわかる。
 また準同型
(D|):(Z/DZ)×{±1}
に対して準同型定理を考えることで|(Z/DZ)×/G|=|{±1}|=2がわかる。
 HGの部分群をなすことはI(1,0)=1HI(x,y)I(z,w)=I(X,Y)が成り立つ(cf. 二次形式の記事 の定理4)ことからわかる((Z/DZ)×の元は有限位数なので積について閉じていることが言えれば逆元の存在もわかる)。
 そして 二次形式の記事 の補題5,6からDと互いに素なある整数aを取ってf=[a,2b,c]とおくと
af(x,y)=(ax+by)2Dy2H
つまりf(x,y)a1Hがわかる。
 逆にna1Hならばあるz,wが存在して
anz2Dw2(modD)
が成り立つのでx=a1(zbw),y=wとおくと
nf(x,y)(modD)
となることがわかる。

 n(Z/DZ)×に対しその指標の値の組を返す準同型
ψ:(Z/DZ)×{±1}μ
を考えるとψは同型
(Z/DZ)×/H{±1}μ
を誘導する。特に|G/H|=2μ1が成り立つ。

 {±1}μの各元に対し中国剰余定理からあるn(Z/DZ)×を構成することでψは全射であることがわかる。したがって準同型定理より
(Z/DZ)×/Kerψ{±1}μ
が成り立つ。
 またI(1,0)=1より定理6からHKerψがわかる。
 いまnKerψについて、D=4Dの素因数分解におけるp3の指数をeとおくと(n|p)=1よりある整数xpが存在して
I(xp,0)=xp2n(modpe)
が成り立つ。また定理6におけるδ,ϵ,δϵの不変性の証明を逆に辿り、また必要に応じてHenselすることでp=2のときもある整数x2,y2があって
I(x2,y2)n(mod2e)
が成り立つことがわかる。
 したがって中国剰余定理よりあるx,yが存在して
I(x,y)n(modD)
が成り立つ、つまりKerψHが成り立つのでH=kerψとなり主張を得る。

オイラーの便利数

 いま任意のxに対しI(x,0)=x2Hなので(xH)2=Hとなります。したがって|G/H|=2μ1と合わせてG/H(Z/2Z)μ1が成り立つことがわかります(この同型は指標を任意に一つ減らした{±1}μ1に飛ばせるらしいです)。
 そしてC(D)の元に対しGの剰余類を対応させる全射準同型写像
Ψ:C(D)G/H
を考えるとΨ(f)2=1から
C(D)2={f2fC(D)}KerΨ
つまり全射
C(D)/C(D)2G/H(Z/2Z)μ1
が構成でき、全射準同型ϕ:C(D)C(D)2を考えることで 二次形式の記事 の命題10から
|C(D)/C(D)2|=|Kerϕ|=|{ff2=I}|=2μ1
が成り立つので同型
C(D)/C(D)2G/H(Z/2Z)μ1が成り立つことがわかります。すなわちC(D)/C(D)2の各元のことを種と呼んでいたわけです。
 このことから指標の値によって定まる種に含まれる二次形式(の同値類)の個数は|C(D)2|個ということになります。特に指標の値によって二次形式を完全に区別するためには|C(D)2|=1が必要十分であり、つまり以下の主張が成り立ちます。

 h(4N)=2μ1となるようなNのことをオイラーの便利数という。
 そのようなD=4Nに対して指標の値、あるいは(Z/DZ)×における値によって二次形式は完全に区別できる。

 いま定理5より判別式Dの二次形式による整数nの表現の個数は
wDd|n(Dd)
であることまではわかっていましたが、どのfkが何個の表現を持つかまではわかりませんでした。
 しかしD=4Nが便利数であるときはnDによる剰余によってnを表現するような二次形式はただひとつしか存在しないことになります。例えばN=21は便利数であることが知られていますが、nが判別式D=84の二次形式によって表現可能であるとき
n=x2+21y2((n3),(n7),(1n))=(1,1,1)n=3x2+7y2((n3),(n7),(1n))=(1,1,1)n=2x2+2xy+11y2((n3),(n7),(1n))=(1,1,1)n=5x2+4xy+5y2((n3),(n7),(1n))=(1,1,1)
が成り立つことがわかります。
 ちなみに残念ながら便利数は無数には存在せず、高々66個しか存在しません。実際おまけとして紹介するように65個の便利数が発見されており、66個目の便利数が存在するかどうかは未解決問題らしいです。

表現n=x2+Ny2の個数

 前節での議論から以下の主張が成り立つことがわかります。

 N8で割り切れない便利数とする。nD=4Nと互いに素であるとき
n=x2+Ny2
となるような整数(x,y)の個数は
wD2r2p|N(1+(np))d|n(Dd)=wD2r2d|Nd|n(nd)(4Nd)
となる。ただしdNの正の約数であって平方因子を持たないもの全体を渡るものとした。

 N8で割り切れないとき指標の個数μは高々r+1個であり、指標は一つ無視しても種は上手く定まるということだったのでr個の指標(n|p)の値によってnがどの二次形式によって表現されるかが決定できる。特にI=x2+Ny2によって表現されるためには(n|p)=1であることが必要十分であったので
12r3p|N(1+(np))={1p,(n|p)=10p,(p|n)=1
に注意すると定理5より主張を得る。

 さらに便利数Nが平方因子を持たないときはnDと互いに素でない場合も表現の個数を数え上げることができます。

 便利数Nが平方因子を持たずN3(mod4)を満たすとき、
n=x2+Ny2
となるような整数(x,y)の個数は
wD2r2d|Nd|n(±dn/d)(4N/dd)
となる。ただし符号は±d1(mod4)となるように取るものとした。

 そのような個数をr(n)とおく。
 いま仮定よりD=4Nは虚二次体Q(N)の判別式となるので定理5系からnの判別式D=4Nの二次形式による表現の個数は
wDd|n(4Nd)
となる。またNの素因数pに対しr(p2n)=r(n)が成り立つことにも注意する。
 そして定理6の証明において言及したようにnNと互いに素であれば指標(n|p)は不変なのでnが偶数のときもnがどの二次形式で表現されるかは(n|p)の値によって決まることに注意する。

 いまNのどの素因数pに対してもnp2で割り切れない場合を考える。
 このときgcd(N,n)=g,h=N/g,n=n/gとおくと
n=X2+NX2
であればXgで割り切れなければならないので(X,Y)=(gx,y)とおくと
n=gx2+hy2
が成り立つ。
 Nは無平方なのでghは互いに素であり、nNと互いに素であるのでf=[g,0,h]の定める指標の値は
(np)={(g|p)ph(h|p)pg
となることがわかる。したがってnfによる表現の個数は定理10と同様にして
wD2r2ph(1+(gp)(np))2pg(1+(hp)(np))d|n(4Nd)=wD2r2d|Nd|n(ga)(ha)(nd)(4Nd)
と表せる。ただしa=gcd(g,d)=gcd(n,d),a=d/aとした。
 これをクロネッカー記号の相互法則(後述)に注意して変形すると
(ga)=(gd/a)(ha)=(N/ga)=(4N/da)(d/aa)(g/aa)=(4N/da)(ad/a)(g/aa)(ad/a(mod4))(nd)=(n/gd)=(n/ad)(g/ad)=(±dn/a)(g/ad)(4Nd)=(4N/dd)(±dd)
つまり
(ga)(ha)(nd)(4Nd)=(±dn/ad)(4N/dad)(g/ad/a)2=(±dn/ad)(4N/dad)
が成り立ち、ad(adn)を再びdとおくとgcd(g,d)gcd(g,d)のとき
(±dn/d)(4N/dd)=0
が成り立つことと合わせて
r(n)=wD2r2d|Nd|n(±dn/d)(4N/dd)
を得る。
 またNの素因数pに対してdp2nかつdnのとき
pdのとき(4N/dd)=0
pdかつdpnのとき(±dp2n/d)=0
pdかつdpnのとき(4N/dd)=0
が成り立つので上の式はnp2nにおいて不変であり、一般のnに対して
r(n)=wD2r2d|Nd|n(±dn/d)(4N/dd)
を得る。

クロネッカー記号の相互法則

 互いに素な整数m,nに対しm=2em,n=2fn(m,nは奇数)とおくと
(mn)(n|m|)=(1)m12n12
が成り立つ。

 奇数x,yに対して
(x1)+(y1)xy1(mod4)
が成り立つことに注意すると求める式の両辺はm,nについて完全乗法的である。したがってm,nが素数または±1の場合を確かめればよい。
 この記事ではクロネッカー記号(a|n)n0の場合は定義していないのでn>0ということにする。
m=±1またはn=1のときは自明
m=2またはn=2のとき
(2a)=(a2)=(1)a218
よりわかる。
m,nが奇素数のときは平方剰余の相互法則である。

おまけ:オイラーの便利数の分類

 便利数は有限個しか存在しないということだったので、定理11が適用できるNは完全に列挙することができます。というわけでここでは65個の便利数をその4,8による剰余や素因数分解によって分類していきます。

N1(mod4)

N素因数分解rμ定理11
1101
5512
9312×
131312
213,723
25512×
333,1123
373712
453,523×
573,1923
855,1723
933,3123
1053,5,734
1337,1923
1653,5,1134
1773,5923
25311,2323
2733,7,1334
3453,5,2334
3573,7,1734
3855,7,1134
13653,5,7,1344

N3(mod4)

N素因数分解rμ定理11
3311×
7711×
153,522×

N2(mod8)

N素因数分解rμ定理11
2201
102,512
182,312×
422,3,723
582,2912
1302,5,1323
2102,3,5,734
3302,3,5,1134

N6(mod8)

N素因数分解rμ定理11
62,312
222,1112
302,3,523
702,5,723
782,3,1323
1022,3,1723
1902,5,1923
4622,3,7,1134

N4(mod8)

N素因数分解rμ定理11
4201×
122,312×
282,712×
602,3,523×

N0(mod8)

N素因数分解rμ定理11
8202×
16202×
242,313×
402,513×
482,313×
722,313×
882,1113×
1122,713×
1202,3,524×
1682,3,724×
2322,2913×
2402,3,524×
2802,5,724×
3122,3,1324×
4082,3,1724×
5202,5,1324×
7602,5,1924×
8402,3,5,735×
13202,3,5,1135×
18482,3,7,1135×

参考文献

[1]
Leonard E Dickson, Introduction to the Theory of Numbers, Dover, New York, 1951, pp. 72-84
[2]
David A. Cox, Primes of the form x² + ny², Wiley, 1989, pp. 53-57
[3]
I. J. Zucker, M. M. Rpbertson, A systematic approach to the evaluation of Σ (m,n>0)(am2+bmn+cn2)-s, Journal of Physics A Mathematical and General, 1976, pp. 1215-1225
投稿日:2023124
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子葉
子葉
1105
274714
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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  1. はじめに
  2. 二次形式の自己同型
  3. properな表現
  4. 平方剰余と表現の個数
  5. 指標と表現可能性
  6. 指標
  7. 表現の剰余
  8. オイラーの便利数
  9. 表現n=x2+Ny2の個数
  10. おまけ:オイラーの便利数の分類
  11. 参考文献