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現代数学解説
文献あり

Andrewsの恒等式2

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前回の記事 でBailey対によりAndrewsの恒等式を示した. 今回はq1における場合を考える. 以下, (αn,βn)a-Bailey対と言ったときは
βn=k=0nαk(nk)!(a+1)n+k
を満たすこととする. 前回の記事の定理1, 定理2はq1においてそれぞれ次のようになる.

Nが非負整数, (αn,βn)a-Bailey対であるとき,
0n(1)n(b1,,br,c1,,cr,N)n(1+ab1,,1+abr,1+ac1,,1+acr,1+a+N)nαn=(1+a,1+abrcr)N(1+abr,1+acr)N0n1nr(N)nr(br+crNa)nr(j=2r(bj,cj)nj(1+abj1,1+acj1)nj(1+abj1cj1)njnj1(njnj1)!)(b1,c1)n1βn1
が成り立つ.

N,rが非負整数であるとき,
0n(a+2n)(a,b1,,br+1,c1,,cr+1,N)na(1+ab1,,1+abr+1,1+ac1,,1+acr+1,1+a+N)nn!=(1+a,1+abr+1cr+1)N(1+abr+1,1+acr+1)N0=n0n1nr(N)nr(br+1+cr+1Na)nrj=1r(bj+1,cj+1)nj(1+abj,1+acj)nj(1+abjcj)njnj1(njnj1)!
が成り立つ.

定理1から定理2を導出する場合は, a-Bailey対
αn:=a+2na(a)nn!(1)nβn:=δn,0
を用いれば良い. 定理2の例として, r=0,1の場合はq類似の場合と同じように古典的な超幾何級数の和公式, 変換公式になる. r=2の場合, (b1,c1,b2,c2,b3,c3)=(b,c,d,e,f,g)として,
0n(a+2n)(a,b,c,d,e,f,g,N)na(1+ab,1+ac,1+ad,1+ae,1+af,1+ag,1+a+N)nn!=(1+a,1+afg)N(1+af,1+ag)N0nm(f,g,N)m(1+ad,1+ae,f+gNa)m(1+ade)mn(mn)!(1+abc,d,e)n(1+ab,1+ac)nn!
となる. 定理2においてNとすると以下のようになる.

rが非負整数であるとき,
0n(1)n(a+2n)(a,b1,,br+1,c1,,cr+1)na(1+ab1,,1+abr+1,1+ac1,,1+acr+1)nn!=Γ(1+abr+1)Γ(1+acr+1)Γ(1+a)Γ(1+abr+1cr+1)0=n0n1nrj=1r(bj+1,cj+1)nj(1+abj,1+acj)nj(1+abjcj)njnj1(njnj1)!
が成り立つ.

具体例として, 全てのbi,ciaとした場合と, c1として他のbi,ciaとした場合
0n(1)n(2n+a)((a)nn!)2r+3=sinπaπ0n1nrj=1r(a)nj2nj!2(1a)njnj1(njnj1)!0n(2n+a)((a)nn!)2r+2=sinπaπ0n1nr(a)n12n1!2j=2r(a)nj2nj!2(1a)njnj1(njnj1)!(r>0)
となる. さらに, Nを非負整数として, 両辺をaに関して偏微分してからaNとして整理すると, これらは
0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)2r+3=(1)N0n1nrj=1r(Nnj)2(N+njnj1N)0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)2r+2=(1)N0n1nr(Nn1)2j=2r(Nnj)2(N+njnj1N)(r>0)
と表せる. 表示から分かるように, これらは整数であるが, それは左辺の表示からは明らかではなく, 2007年にKrattenthaler-Rivoalによって証明された. r=0,1,2のとき, これらは
0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)3=(1)N0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)4=(1)Nn=0N(Nn)2=(1)N(2NN)0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)5=(1)Nn=0N(Nn)2(N+nn)0n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)6=(1)Nn=0N(Nn)2k=0n(N+nkN)(Nk)20n(1+(N2n)k=1n1k)(Nn)7=(1)Nn=0N(Nn)2k=0n(N+nkN)(Nk)2(N+kk)
となる. 3行目の
n=0N(Nn)2(N+nn)
はApéry数と呼ばれているものであり, 特によく研究されている数列である. 他の例として子葉さんの記事, 数列のルジャンドル変換とアペリー数列 においてもAndrewsの恒等式の応用が書かれている.

参考文献

[1]
C. Krattenthaler, T. Rivoal, Hypergéométrie et fonction zêta de Riemann, Mem. Amer. Math. Soc., 2007, 87
投稿日:27日前
更新日:15日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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