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でBailey対とBaileyの補題について扱った. がに関するBailey対であるとは,
を満たしていることであり, そのとき,
とすれば, もに関するBailey対になるというのがBaileyの補題であった. このに対してさらにBaileyの補題を適用してを得るが, このようにBaileyの補題を繰り返し用いることによって以下の等式を得る.
Andrews(1984)
が非負整数, がに関するBailey対であるとき,
が成り立つ.
左辺は
右辺は
となる. これは
と
がに関するBailey対であることと同値であり, それはにBaileyの補題を回適用して得られるBailey対である.
この応用として以下の等式が示される.
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の補題1よりがに関するBailey対であることは
Kroneckerデルタを用いてとして
とするとはBailey対である. よって, これを定理1に代入し, として添字を少し書き換えると定理を得る.
Andrewsの恒等式はかなり一般的な等式であるので, いくつか具体例を見ていく. まず, のとき, と書くと
となる. これはRogersの和公式のterminatingな場合である. 次に, のとき, と書くと,
となる. これは
Watsonの変換公式
である. 次にのとき, と書くと,
となる.
定理2においてとすると, 以下を得る.
この特別な場合として, とすると,
とシンプルな式になる. これより, の極限において, Jacobiの三重積を用いて
と表される. これはAndrews-Gordon関係式と呼ばれる関係式族の中の1つであり, の場合Rogers-Ramanujan恒等式
に一致する.
[1]
G. E. Andrews, Problems and prospects for basic hypergeometric functions, Theory and application of special functions, 1975, 191-224
[2]
G. E. Andrews, Multiple series Rogers-Ramanujan type identities, Pacific J. Math., 1984, 267-283