はじめに
前回,体上の多項式環はであることを確かめました。
ところで,多項式の値をにするはどこにあるのでしょうか。の中に 収まる のか,はたまたから はみ出る のでしょうか。からはみ出たとして,をどこまで 拡大すれば収まるようにできるのでしょうか。
目次
1.多項式の根
2.代数拡大
多項式の根
根・代数的数・超越的数
- を体とする。の元を係数にもつ多項式を上の多項式[1]という。
- 上の多項式に対し,がを満たすとき,を多項式の根という。
- に対し,を根にもつでない上の多項式が存在するとき,を上代数的数といい,そうでないとき上超越的数という。
ならばはを根にもつでない上の多項式となるから,は上代数的数である。
ここで,「上」という語を強調しておきたい。我々が多項式を考えるとき,それをどの体で考えているのかが非常に重要になるからだ(たとえば例の四つ目がそうである)。
根・代数的数・超越的数
- はともに上の多項式[2]*である。
- の根はの根は である。
- は上代数的である。(これはの根である)
- ネイピア数円周率 [3]* は上__超越的であるが上__代数的である。
を除外する理由
代数的数や超越的数の定義からを除外するのは,の任意の元はという多項式の根になるため,を含めて考えてもしかたがないからである。
代数拡大
代数拡大
が代数拡大であるとは,の任意の元が上代数的数であることをいう。
定義をもう少し平たい言葉で説明しよう。要は,が代数拡大であるとは,のどんな元もでないある上の多項式の根になっているということだ。
代数拡大
- は代数拡大である。
- 上代数的数の全体は体をなし,は代数拡大である。
- は代数拡大でない。(などは上超越的数である)
を__代数的数体__という。が体をなすことの証明はより多くの知識を必要とする。
は代数拡大
とすると,を満たすが存在する。とすれば,はを根にもつ上の多項式である。□
ここで,前回予告していた代数拡大と有限次拡大を関係づける定理を証明する。
を有限次拡大とし,とする。このとき,の任意の元に対し,個の元を考えると,これらは一次従属なので,すべてはではないが存在して
を満たす。ゆえに,はを根にもつでない上の多項式であるから,は上代数的数である。は任意であったから,は代数拡大であることがわかる。□
ガロア理論②
での拡大次数を例にあげたが,この二つはどちらも有限次拡大であった。したがって定理からこれらは代数拡大でもあることがわかる。
逆
逆は成り立たない。たとえば,は代数拡大であるが無限次拡大である。
前々回の記事で,「は偶然か?」という問いを残したのを覚えているでしょうか。次回の記事で,その問いに対する答えを与えます。
[1]: 本記事では,単に「多項式」と言ったときは一変数で項が有限個のものを指します。ここではとしておきます。 [2]: は上多項式でもあるし上多項式でもあります。 [3]: が上超越的であることを示すには解析的知識が必要となるのでここでは扱いません。