お久しぶりです. 今回はタイトルの通り$n^2$が$F_n$($n$番目のフィボナッチ数)を割り切る正整数$n$を全て求めたいと思います. 前提知識は特にありませんが, 前回までの結果を使います.
数列$\{F_n\}^\infty_{n=-\infty}$を$F_0=0,F_1=1,F_{n+2}=F_{n+1}+F_n$$(n\in\Z)$で定め, フィボナッチ数列と呼ぶ. この集合に登場する整数をフィボナッチ数と呼ぶ.
任意の$n,m\in\Z$に対し$F_{n+m+1}=F_nF_m+F_{n+1}F_{m+1}$が成立する.
任意の$n,m\in\Z$に対し$F_{n+m}F_{n-m}=F_n^2-(-1)^{n+m}F_m^2$が成立する.
$p\neq5$は素数.
$p\equiv1, 4\pmod5$のとき$p|F_{p-1}$
$p\equiv2, 3\pmod5$のとき$p|F_{p+1}$
$n^2$が$F_n$を割り切る正整数$n$は$1, 12$のみである.
前回の結果で$p\neq5$は$F_{p\pm1}$を割り切るというのがあったので添え字と$p$の$1$のずれをうまくマスターデーモンみたいに生かせそうです.
$n=1$はok, $n>2$とし, $p$を$n$の最小の素因数とする.
$p\equiv1, 4\pmod5$のとき
$p|F_n$かつ$p|F_{p-1}$より$p|F_{\gcd(n, p-1)}$である(零点の周期性より). $p$の最小性より$F_{\gcd(n, p-1)}=F_1=1$なので不適.
$p\equiv2, 3\pmod5$のとき
$p|F_n$かつ$p|F_{p+1}$より$p|F_{\gcd(n, p+1)}$である. $p$が奇素数のとき, その最小性より$\gcd(n, p+1)$は$1$である. $p=2$のとき, $\gcd(n, p+1)$は$1$か$3$である. よって, $p=2$かつ$3|n$がわかる. この場合はあとで考える.
また, $p=5$のとき$p|F_n$に留意する.
マスターデーモンの手法を踏襲すれば, 次は$F_n$が$p$で割り切れる回数を評価したいです.
素数$p$のオーダーを$v_p$で書く.
$v_2(F_n)= \left\{
\begin{array}{ll}
2+v_2(n) & n\equiv0\pmod6\\
1 & n\equiv3\pmod6 \\
0 & \text{otherwise}
\end{array}
\right.$
$v_3(F_n)= \left\{ \begin{array}{ll} 1+v_3(n) & n\equiv0\pmod4 \\ 0 & \text{otherwise} \end{array} \right.$
$v_5(F_n)=v_5(n)$
が成立する.
じゅんにーさんの記事
がそのまま適用できます. が, 式をこねくり回してもできるので書き留めておきます.
方針としては, $F_{kn}$をフィボナッチ数の公式で$F_n$と$F_{n-1}$の式にするというものです.
$p=2$
$n\not\equiv0\pmod6$の場合は明らか. $F_{2n}=F_{n}(F_{n+1}+F_{n-1})$であり, $v_2(F_{n+1}+F_{n-1})= \left\{
\begin{array}{ll}
1 & n\equiv0\pmod6\\
2 & n\equiv3\pmod6 \\
\end{array}
\right.$であることが$\bmod8$でわかるのでよい.
$p=3$
$n\not\equiv0\pmod4, n\not\equiv0\pmod3$の場合は明らか. $n$が偶数のとき, 以下が成立する.
$F_{3n}F_{n}=F_{2n}^2-F_{n}^2=F_{n}^2((F_{n+1}+F_{n-1})^2-1)$
$\bmod9$で頑張ると, $4|n$のとき$v_3((F_{n+1}+F_{n-1})^2-1)=1$なので示された.
$p=5$
$F_{5n}F_n=F_{3n}^2-(-1)^nF_{2n}^2=(F_{2n}^2-(-1)^nF_{n}^2)^2-(-1)^nF_{2n}^2$
$S_n:=F_{n+1}+F_{n-1}=\dfrac{F_{2n}}{F_n}=F_n+2F_{n-1}$とおくと,
$\begin{align*}
&F_{5n}F_n\\
=&(F_{2n}^2-(-1)^nF_{n}^2)^2-(-1)^nF_{2n}^2\\
=&(F_n^2S_n^2-(-1)^nF_n^2)^2-(-1)^nF_n^2S_n^2\\
=&F_n^2((S_n^2-(-1)^n)^2-(-1)^nS_n^2)\\
=&F_n^2(S_n^4-3(-1)^nS_n^2+1)
\end{align*}
$
であり, $S_n=5n+k$のように置いて頑張ると$S_n^4-3(-1)^nS_n^2+1\equiv5\pmod{25}$なので示された.
正直かなり結果論的な手法なのでじゅんにーさんの記事を参照することをお勧めします.
先ほどの$2$パターンをつぶしていきます.
$v_5(n)=v_5(F_n)\ge2v_5(n)$より$v_5(n)=0$ ,これは不適.
$2|F_n$なので$3|n$であり, このとき$3|F_n$より$4|n$である. すなわち$12|F_n$である. $v_2(F_n)$を考えよう.
補題より
$2+v_2(n)=v_2(F_n)\ge2v_2(n)$より$v_2(n)\le2$なので, $v_2(n)=2$
$1+v_3(n)=v_3(F_n)\ge2v_3(n)$より$v_3(n)\le1$なので, $v_3(n)=1$
ここで, $5|n$の場合は上と同じ議論で不適であるので, $7$以上の素数で$n$を割り切るものが存在したとし, 最小のものを$p$とおく. このとき, $p|F_{\gcd(n, p\pm1)}$である. $p$の最小性より$\gcd(n, p\pm1)$は高々$12$であるが, このとき$p|144$となり$p\ge7$に矛盾.
$n=12$は条件を満たす.
以上より, 求めるべき$n$は$1, 12$
冪の差なので$2^n-1$とかと似た振る舞いをしてマスターデーモンとほとんど同じように解けるということです. 多分.