フィボナッチ数列の研究まとめの続きです. フィボナッチ数列を群論の視点で扱うことで素数で割った余りの周期がわかるという話を書いていきます.
前提知識
- 数2Bまでの知識
- 集合, 写像についての記法, 用語が一通りわかる
- 群論についてある程度(正規部分群, ラグランジュの定理など. 赤雪江2章くらいまで)
- 線形代数を少し使う
また,
前回の記事
を先に読むことを推奨します.
前回までのまとめ
フィボナッチ数列
数列をで定め, フィボナッチ数列と呼ぶ. この集合に登場する整数をフィボナッチ数と呼ぶ.
最近気づいたのですが, 加法定理が沿え字の加法について言及しているのに乗法定理はフィボナッチ数自体の乗法について言及していて一貫性がないですね. まあ添え字の整数倍の計算に便利なのでいいでしょう(適当).
これらはそれぞれ, フィボナッチ数をで割った余りを考えたときに何個周期でが出てくるか, 何個周期で余りが循環するか, ということを表しています(
まとめ2
参照).
前前回と前回の主定理のまとめ
任意の正整数に対しての値はのいずれかになる. 特にを以外の素数としたときの値は以下の表で与えられる.
の値
フィボナッチ数を群論的に捉えたい!
群の定義
を素数とする.
に以下のような演算を入れると可換モノイド(アーベル群の公理から逆元の存在を除いたもの)になる.
やるだけ
閉じていること, 可換性
自明.
単位元の存在
が単位元である.
結合性
よりok.
また, 以下の補題よりここから群を構成できます.
をモノイドとする. このとき, の加逆元全体は群構造を持つ.
結合性, 単位元の存在は明らか.
閉じていることはが可逆のときなのでok.
可逆性はが可逆のときはの逆元なのでok.
-フィボナッチ群
定義3のモノイドに補題を適用して構成された群を-フィボナッチ群と呼ぶことにし, と書く.
です. (前々回思い付きでとか適当に記号作ってて発狂しそう. あとで別の表記に直します. )
-フィボナッチ群の性質
さて, 前の章でいきなり非自明な演算を出されていきなり結合性が成り立つことが示されいきなりフィボナッチ数の名を借りて命名され意味が分からないと思うのでこれがフィボナッチ数列とどう関係あるか書きます. 以下の元を単にと書きます. また, 以下の演算は特に断りのない限り-フィボナッチ群での演算です.
-フィボナッチ群の性質2
として取り得るもの全体はの巡回部分群になる. さらに位数はである.
なのでこの中で非可逆元の個数を数え上げればよい.
においてを固定し逆元の存在を考える.
となり
であるので, これがでになることと逆元を持たないことは同値である(が体になることから実数のように行列演算ができる). がでない奇素数のとき, を固定すると
となることから, のときつずつ非可逆元が存在し, のときは存在せず, のときはつずつ非可逆元が存在する(感覚的な書き方をしているが厳密には平方完成して平方剰余を考えればok). のときはいずれの場合ものみ逆元を持たない. さらに, のときも逆元は持たないことを併せて主張は示された.
これらの話からなんとなく周期を考えられそうなことが分かると思います.
また, 実はのときはを加えて成分ごとの加法を入れると体になり, とを同一視することによって代数と見ることができます. この演算は成分ごとにの元倍していることと同じ演算になっています.
周期を考える
以下をでない素数とします.
の再命名
前々回の, すなわち上のフィボナッチ数列におけるの後に登場しうる元に群構造を入れたものをと書くことにする.
任意のについてとが共通の元を持つときそれらは一致し, かつが必要十分である.
概略
一致することは一般の群の剰余類の議論よりok.
十分性はうまく整数をとりを掛けることで示される.
必要性は第一成分がの元であるという性質はをかける操作によって保たれることからわかる.
一般にをアーベル群の部分群としたときはの部分群になるのでよい.
でのイメージ図です.
のイメージ
のとき
今回の内容でものときのようにできる. が, この場合は前回の命題10みたいにでをとって
として, Fermatの小定理からとすることもできる.
のとき
である. とラグランジュの定理, 命題7より はの約数, 従ってはの約数. また, まとめ2の主定理よりとなる. のとき前回の補題7よりは奇数, 特にであるので, いずれにしてもである.
おわりに
群論の視点で考えると周期が分かるというお話でした!急いで書いたのでミスがあったら教えてください. あとのときに標数位数の有限体になることからもう少し色々言えそうな気もしています. 今後の課題です.
フィボナッチ数の研究まとめもあと回くらいでひと段落すると思います. 最後まで読んでいただきありがとうございます!次回はもう少し競技数学っぽい視点で書こうと思っています.