この記事では、完全不連結コンパクトハウスドルフ位相群 $G$ の部分群 $H$ が $G$ において稠密となる必要十分条件について書きます⭐
基本近傍系について以下の定義は 【Mathpedia】定義 2.5 (基本近傍系) を参考にさせていただきました。
位相空間 $X$ の部分集合族 $\mathcal{U}$ が $x\in X$ の基本近傍系であるとは、以下の条件を満たすことをいう:
$(1)$ 任意の $U\in \mathcal{U}$ は $x$ の近傍である。
$(2)$ $x$ の任意の近傍 $V$ に対して、 $U\subset V$ となる $U\in \mathcal{U}$ が存在する。
次の補題によって完全不連結コンパクトハウスドルフ位相群の基本近傍系がわかります。
$G$ を完全不連結コンパクトハウスドルフ位相群、$\mathcal{U}$ を $G$ の正規開部分群全体とする。このとき、$\mathcal{U}$ は $G$ の単位元 $e$ の基本近傍系である。
◆ $\mathcal{U}$ が $(1)$ の条件を満たすこと
開部分群は $e$ の開近傍である。
◆ $\mathcal{U}$ が $(2)$ の条件を満たすこと
完全不連結コンパクトハウスドルフ位相群における単位元の開近傍について
の命題 1 より、$e$ の任意の開近傍 $U$ に対して $N\subset U$ となる $N\in \mathcal{U}$ が存在する。
単位元の基本近傍系 $\mathcal{U}_e$ は重要です。$g\in G$ とすると同相写像 $G \ni x \mapsto gx \in G$ によって $\mathcal{U}_e$ から $g$ の基本近傍系 $\mathcal{U}_g$ が定まるからです。
稠密について以下の定義は、 【Mathpedia】定義 4.10 (稠密) と 【Mathpedia】命題 4.11 (部分集合が稠密であることの言い換え) を参考にさせていただきました。
位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が $X$ において稠密であるとは、$X$ の空でない任意の開集合 $U$ に対して $U\cap A \neq \emptyset$ が成り立つことをいう。
これはどんな開集合を選んでもその中に $A$ の元が入り込んでくることを表しています。$X$ のどの点に対してもその点のかなり近いところに $A$ の点がいるようなイメージです。(「$A$ が $X$ において稠密 $\Longleftrightarrow$ $A$ の閉包は $X$ に等しい」が成り立ちます。)
メイントピック以下の命題は参考文献[1] p.190 定理7.17証明中を参考にさせていただきました。
$G$ を完全不連結コンパクトハウスドルフ位相群、$H$ を $G$ の部分群、$\mathcal{U}$ を $G$ の正規開部分群全体とする。このとき、以下は同値である:
$(1)$ 任意の $N\in \mathcal{U}$ に対して $G=HN$ である。
$(2)$ $H$ は $G$ において稠密である。
◆$(1) \Longrightarrow (2)$
$U$ を $G$ の空でない任意の開集合とすると、$gN \subset U$ となるような $g\in G$ と正規開部分群 $N$ が存在する。$G=HN$ より $gN=hN$ となるような $h\in H$ が存在する。$h \in U$ でもあるから $U\cap H \neq \emptyset$ となる。したがって $H$ は $G$ において稠密である。
◆$(2) \Longrightarrow (1)$
$H$ は $G$ において稠密であるから、任意の $g\in G$ に対して $H \cap gN \neq \emptyset$ となる。よって $g\in HN$ である。