1
大学数学基礎解説
文献あり

ガロア群と副有限群について

499
0
$$$$

初めに

最初に投稿した記事めっちゃ間違ってました!!!ごめんなさい(´;ω;`)

記事の内容

 ガロア拡大 $L/K$ のガロア群 $G$ が、$L$ に含まれる $K$ 上の有限次ガロア拡大全体のガロア群で記述できることについて書きます。この有限次ガロア拡大全体から得られる群(命題 1 で副有限群として構成します)を $\widehat{G}$ とすると、大まかな流れは次のようになります:

#内容
$\text{Step}\ 1$$G$$\widehat{G}$ は群として同型
$\text{Step}\ 2$$G$ に位相を入れる
$\text{Step}\ 3$$G$$\widehat{G}$ は位相空間として同相

記号の定義

記号定義
$\simeq$位相群 $G_1,\ G_2$ に対して、$G_1$$G_2$ が位相群として同型
(群として同型かつ位相空間として同相)のとき、$G_1\simeq G_2$
と書く。

参考文献について

#文献
命題 1参考文献[1] p.189 定理 7.15
補題 2 【Mathpedia】命題 2.11 (基本近傍系から位相空間を定める)
補題 3参考文献[2] p.13 2.1 位相の導入
命題 4(1)参考文献[1] p.190 定理 7.18
(2) INFINITE GALOIS THEORY (DRAFT, CTNT 2020)
命題 5参考文献[1] p.190 定理 7.18
命題 6参考文献[1] p.190 問題 7.21
命題 7参考文献[1] p.190 定理 7.18

$\text{Step}\ 1$

 最初にガロア群が有限次ガロア拡大からなる副有限群と群として同型であることについて書きます。

$L/K$ をガロア拡大、$G = \text{Gal} (L/K)$ をそのガロア群、$\lbrace K_i \rbrace_{i\in I}$$L$ に含まれる $K$ 上の有限次ガロア拡大全体とする。このとき、$\text{Gal} (L/K)$$\text{Gal}(K_i/K)$ からなる副有限群に群同型である。

$\blacksquare$ 副有限群の構成
 $i \leq j\ (i,\ j\in I)$$K_i \subset K_j$ と定義することで $(I,\ \leq)$ は有向集合となる。$G_i:=\text{Gal}(K_i/K)$ に離散位相を入れ、$f_{ij}: G_j \to G_i,\ \sigma_j \mapsto \sigma_j \mid_{K_i}$ と定義すると $(\lbrace G_i\rbrace_{i\in I},\ \lbrace f_{ij}\rbrace_{i\leq j})$ は逆系となり $\widehat{G} := \displaystyle \varprojlim_{i\in I} G_i$ は副有限群である。

$\blacksquare$ 単射準同型
$$\varphi : G \to \widehat{G},\ \sigma \mapsto (\sigma\mid_{K_i})_{i\in I}$$
と定義すると $\varphi$ は単射準同型である。
$\blacksquare$ 全射
 任意の $(\sigma_i)_{i\in I} \in \widehat{G}$ をとる。$\alpha \in L$ に対して $\alpha \in K_i$ となる $i\in I$ をとり $\sigma(\alpha) := \sigma_i(\alpha)$ と定義することで $\sigma: L\to L$ を定めると $\sigma\in G$ となる(注1)。$\varphi$ の定義より $\varphi(\sigma) = (\sigma_i)_{i\in I}$ となる。

(注1) $K_i,\ K_j\ (i,\ j\in I)$ の合成体 $K_iK_j$$K$ 上有限次ガロア拡大であるから $\sigma$$i\in I$ の取り方に依存しない。

$\text{Step}\ 2$

ガロア群の基本近傍系

 基本近傍系から位相を定めます。次の補題はガロア群の部分集合族で基本近傍系の条件を満たすようなものが存在することを示しています。

$L/K$ をガロア拡大、$G = \text{Gal} (L/K)$ をそのガロア群、$\lbrace K_i \rbrace_{i\in I}$$K$ 上有限次ガロア拡大となるような $L/K$ の中間体全体とする。このとき、任意の $\sigma\in G$ に対して
$$ \mathcal{U}_\sigma = \lbrace \sigma\text{Gal}(L/K_i) \rbrace_{i\in I}$$ は、以下を満たす:
$(1)$ 任意の $U\in \mathcal{U}_\sigma$ に対して $\sigma\in U$ である。
$(2)$ 任意の $U,\ V\in \mathcal{U}_\sigma$ に対して $W\subset U\cap V$ となる $W\in \mathcal{U}_\sigma$ が存在する。
$(3)$ 任意の $U\in \mathcal{U}_\sigma$ に対して次を満たす $V\in \mathcal{U}_\sigma$ が存在する:「任意の $\tau\in V$ に対して $W\subset U$ となる $W\in \mathcal{U}_\tau$ が存在する」

$(1)$
 任意の $U\in \mathcal{U}_\sigma$ に対して $U=\sigma\text{Gal}(L/K_i)$ となる $K_i$ が存在する。$id_L\in \text{Gal}(L/K_i)$ であるから $\sigma\in U$ となる。
$(2)$
 任意の $U,\ V\in\mathcal{U}_\sigma$ に対して $U=\sigma\text{Gal}(L/K_i),\ V=\sigma\text{Gal}(L/K_j)$ となる $i,\ j\in I$ が存在する。$W:=\sigma\text{Gal}(L/K_iK_j)$ とおく $W\subset U\cup V$ となる。
$(3)$
 任意の $U\in \mathcal{U}_\sigma$ に対して $U=\sigma\text{Gal}(L/K_i)$ となる $i\in I$ が存在する。$V:=U$ とおく。次を示す:「任意の $\tau\in V$ に対して $W\subset U$ となる $W\in \mathcal{U}_\tau$ が存在する」
 $W:=\tau\text{Gal}(L/K_i)$ とおくと $W\in \mathcal{U}_\tau$ であり、$\tau\in\sigma\text{Gal}(L/K_i)$ より $W=U$ となる。

 この基本近傍系を見ると、体の拡大次数を上げるほど近傍は小さくなっていく様子がわかります。
 さて、$G$ には次のような位相が入ります:


$\mathcal{O}_G = \lbrace U \subset G \ \mid $ 任意の $\sigma\in U$ に対して $V\subset U$ となる $V\in \mathcal{U}_\sigma$ が存在する $\rbrace$

特に任意の $\sigma\in G$ に対して $\mathcal{U}_\sigma \subset \mathcal{O}_G$ です。よって $$ \lbrace\sigma\text{Gal}(L/K_i)\mid\sigma\in G,\ i\in I\rbrace$$
$G$ の開基となります。
 一方 $\widehat{G}$ の開基は、 完不コハ群の特徴づけ より


$\lbrace xN\mid x\in \widehat{G},\ N$$\widehat{G}$ の正規開部分群$\rbrace$

となります。

ガロア群が位相群をなすこと

 次の補題は $G$ がこの位相に関して位相群をなすことを主張します。

補題 2 の $\mathcal{U}_\sigma$ から定まる位相に関して $G$ は位相群となる。

 まず、任意の $i\in I$ に対して $\text{Gal}(L/K_i)$$G$ の正規部分群である。$\cdots(*)$

$\blacksquare$ 演算の連続性
 任意の $\sigma,\ \tau\in G$$\sigma\tau\subset U$ となるような任意の $U\in \mathcal{O}_G$ に対して $\sigma\tau\text{Gal}(L/K_i)\subset U$ となる $i\in I$ が存在する。$V := \sigma\text{Gal}(L/K_i),\ W := \tau\text{Gal}(L/K_i)$ とおくと $(*)$ より
$$ VW = \sigma\tau\text{Gal}(L/K_i)\subset U$$
となる。

$\blacksquare$ 逆元の連続性
 任意の $\sigma\in G$$\sigma\subset U$ となるような任意の $U\in \mathcal{O}_G$ に対して $\sigma\text{Gal}(L/K_i)\subset U$ となる $i\in I$ が存在する。$V:=\sigma\text{Gal}(L/K_i)$ とおくと $(*)$ より
$$ V^{-1} = \sigma\text{Gal}(L/K_i)\subset U$$
となる。

ガロア対応

ガロア対応

$L/K$ をガロア拡大、$G=\text{Gal}(L/K)$ をそのガロア群、$\lbrace K_i \rbrace_{i\in I}$$K$ 上有限次ガロア拡大となるような $L/K$ の中間体全体とする。このとき、以下が成り立つ:
$(1)$ $L/K$ の中間体 $M$ に対して $\text{Gal}(L/M)$$G$ の閉集合である。
$(2)$ $G$ の部分群 $H$ に対して $\text{Gal}(L/L^H)$$H$$G$ における閉包である。

$(1)$
 $\text{Gal}(L/M)$ が閉集合であることを示す。$\mathcal{F}$$K$ 上有限次拡大であるような $M/K$ の中間体全体とすると、$M=\displaystyle \bigcup_{F\in \mathcal{F}}F$ であり、
$$\text{Gal}(L/M) = \displaystyle \bigcap_{F\in \mathcal{F}}\text{Gal}(L/F)$$
となる。各 $F\in \mathcal{F}$ に対して $F'$$F\subset F'\subset L$ となるような $K$ 上の有限次ガロア拡大とすると
$$\text{Gal}(L/F')\subset \text{Gal}(L/F)$$
となる。補題 2 より $\text{Gal}(L/F')$$G$ の単位元の開近傍であるから $\text{Gal}(L/F)$$G$ の開部分群である。よって $\text{Gal}(L/F)$ は閉集合であるから $\text{Gal}(L/M)$$G$ の閉集合である。

$(2)$
 $\overline{H}$$H$$G$ における閉包とすると、$(1)$ より $\overline{H}\subset \text{Gal}(L/L^H)$ となる。逆の包含を示すために $\sigma\in \text{Gal}(L/L^H)\setminus \overline{H}$ と仮定すると、$\sigma\notin \overline{H}$ より $\sigma\text{Gal}(L/K_i)\cap H=\emptyset$ となるような $i\in I$ が存在する。
$$ \mu:G\to\text{Gal}(K_i/K),\ \rho\mapsto\rho\mid_{K_i}$$
とすると、
$$ K_i^{\mu(H)} = K_i\cap L^H$$
となる。$K_i/K$ は有限次ガロア拡大であるから
$$ \mu(H) = \text{Gal}(K_i/K_i\cap L^H)$$
が成り立つ。いま $\sigma\in \text{Gal}(L/L^H)$ であるから、任意の $\alpha\in K_i\cap L^H$ に対して $\sigma(\alpha) = \alpha$ となる。よって $\sigma\mid_{K_i}\in \mu(H)$ となるから、$\sigma\mid_{K_i} = \tau\mid_{K_i}$ となるような $\tau\in H$ が存在する。したがって $\tau\in \sigma\text{Gal}(L/K_i)\cap H$ となり、$\sigma\text{Gal}(L/K_i)\cap H=\emptyset$ に矛盾する。

 ガロア対応では中間体と閉部分群が 1 対 1 に対応します。

$L/K$ をガロア拡大、$G=\text{Gal}(L/K)$ をそのガロア群、$\mathcal{M}$$L/K$ の中間体全体、$\mathcal{H}$$G$ の閉部分群全体とする。このとき、
$$ \varPhi: \mathcal{M}\to\mathcal{H},\ M\mapsto \text{Gal}(L/M)\\ \varPsi: \mathcal{H}\to\mathcal{M},\ H\mapsto L^H $$
は全単射で互いに逆写像である。

$\blacksquare$ $\varPsi\circ\varPhi=id_{\mathcal{M}}$
 任意の $M\in\mathcal{M}$ に対して $L/M$ はガロア拡大であるから $L^{\text{Gal}(L/M)} = M$ となる。よって
$$ \varPsi(\varPhi(M)) = \varPsi(\text{Gal}(L/M)) = L^{\text{Gal}(L/M)} = M$$
が成り立つ。

$\blacksquare$ $\varPhi\circ\varPsi=id_{\mathcal{H}}$
 任意の $H\in \mathcal{H}$ に対して 命題 4 より $H = \text{Gal}(L/L^H)$ となるから
$$ \varPhi(\varPsi(H)) = \varPhi(L^H) = \text{Gal}(L/L^H) = H$$
が成り立つ。

正規開部分群は有限次ガロア拡大に対応する

$L/K$ をガロア拡大、$G=\text{Gal}(L/K)$ をそのガロア群、$N$$G$ の正規開部分群とする。このとき、以下が成り立つ:
$(1)$ $L^N/K$ は有限次ガロア拡大である。
$(2)$ $N=\text{Gal}(L/L^N)$
$(3)$ $G/N\simeq \text{Gal}(L^N/K)$

$(1)$
$\blacksquare$ 分離拡大であること
 $L/K$ は分離拡大なので $L^N/K$ も分離拡大である。

$\blacksquare$ 正規拡大であること
 $\sigma$$L^N$ から $K$ の代数閉包 $\overline{K}$ への $K$ 上の埋め込みとする。$\sigma'$$\sigma$$L$ への延長とすると $\sigma' \in G$ である。$N$ は正規部分であるから、任意の $\tau\in N$ に対して $\tau \sigma' = \sigma' \tau'$ となるような $\tau'\in N$ が存在する。任意の $\alpha\in L^N$ に対して $\tau \sigma' (\alpha) = \sigma' \tau' (\alpha) = \sigma'(\alpha)$ となるから $\sigma(\alpha) = \sigma'(\alpha) \in L^N$ となる。よって $L^N/K$ は正規拡大である。

$\blacksquare$ 有限次拡大であること
 $L^N/K$ が有限次拡大でないと仮定すると $m := [K(\theta):K] > |G/N|$ となるような $\theta\in L^N$ が存在する。$L^N/K$ は分離拡大なので $K(\theta)$ から $\overline{K}$ への $K$ 上の埋め込みはちょうど $m$ 個存在する。これらを $\lbrace \sigma_1,\ \cdots,\ \sigma_m \rbrace$ とし、$\sigma_i$$L$ への延長を ${\sigma_i}' \in G$ とする。${\sigma_i}'N = {\sigma_j}'N$ ならば ${\sigma_i}'(\theta)={\sigma_j}'(\theta)$ となり、よって $\sigma_i = \sigma_j$ となる。したがって $G/N$ は少なくとも $m$ 個の元を持つことになり、$m > |G/N|$ に矛盾する。

$(2)$
 $N$ は開部分群であるから閉集合である。よって 命題 4 より $N=\text{Gal}(L/L^N)$ となる。

$(3)$
 $G/N$ は離散位相群であるから、群同型写像
$$ G/N\to\text{Gal}(L^N/K),\ \sigma N \mapsto \sigma\mid_{L^N}$$
は同相写像となる。

$\text{Step}\ 3$

$L/K$ をガロア拡大、$G = \text{Gal} (L/K)$ をそのガロア群、$\lbrace K_i \rbrace_{i\in I}$$K$ 上有限次ガロア拡大となるような $L/K$ の中間体全体とする。このとき、$\text{Gal} (L/K)$$\text{Gal}(K_i/K)$ からなる副有限群に位相群として同型である。

 命題 1 の群同型写像
$$\varphi : G \to \widehat{G},\ \sigma \mapsto (\sigma\mid_{K_i})_{i\in I}$$
が、同相写像であることを示す。

$\blacksquare$ $\varphi$ が連続であること
 任意の $i\in I$ に対して $N_i:=\text{Gal}(L/K_i)$ とおく。
$$ \eta_i:G\to G/N_i,\ \sigma\mapsto \sigma N_i\\ \psi_i:G/N_i\xrightarrow{\sim}\text{Gal}(K_i/K),\ \sigma N_i\mapsto \sigma\mid_{K_i}\\ \pi_i:\widehat{G}\to \text{Gal}(K_i/K),\ (\sigma_i)_{i\in I}\mapsto \sigma_i $$
とすると、各写像は連続であり以下は可換図式である(注2):
$$ \xymatrix{ \large{G} \ar[rr]^-{\Large\varphi} \ar[dd]_-{\Large\eta_i} & & \large{\widehat{G}} \ar[dd]^-{\Large\pi_i} \\ & \ar@{}[]|{\LARGE\circlearrowright} & \\ \large{G/N_i} \ar[rr]_-{\Large\psi_i}^-{\Large\simeq} & & \large{\text{Gal}(K_i/K)} } $$
よって $\varphi$ は連続である。

$\blacksquare$ $\varphi^{-1}$ が連続であること
 $N$$G$ の任意の正規開部分群とすると、命題 6 より $L^N=K_j$ となる $j\in I$ が存在する。

$$ \eta_j:G\to G/N,\ \sigma\mapsto \sigma N\\ \psi_j:G/N\xrightarrow{\sim}\text{Gal}(K_j/K),\ \sigma N\mapsto \sigma\mid_{K_j}\\ \pi_j:\widehat{G}\to \text{Gal}(K_j/K),\ (\sigma_i)_{i\in I}\mapsto \sigma_j $$
とすると、各写像は連続であり以下は可換図式である:
$$ \xymatrix{ \large{G} \ar[rr]^-{\Large\varphi} \ar[dd]_-{\Large\eta_j} & & \large{\widehat{G}} \ar[dd]^-{\Large\pi_j} \\ & \ar@{}[]|{\LARGE\circlearrowright} & \\ \large{G/N} \ar[rr]_-{\Large\psi_j}^-{\Large\simeq} & & \large{\text{Gal}(K_j/K)} } $$

 また $\pi_j$ は全射開写像(注3)であるから、位相群の準同型定理により
$$ \widehat{G}/\text{Ker}(\pi_j)\simeq\text{Gal}(K_j/K)$$
が成り立つ。よって $\widehat{G}/\text{Ker}(\pi_j)$ は離散位相群であるから、$\text{Ker}(\pi_j) = \varphi(N)$ より $\varphi(N)$$\widehat{G}$ の正規開部分群である。よって $\varphi^{-1}$ は連続である。

(注2) $G/N_i$$\text{Gal}(K_i/K)$ は離散位相群であるから $\psi_i$ は位相群としての同型写像である。
(注3) $\text{Gal}(K_j/K)$ は離散位相群であるから開写像である。

参考文献

[1]
足立垣雄, ガロア理論講義, 日本評論社, 2003
[2]
福田隆, 重点解説 岩澤理論 2019年 01 月号 [雑誌]: 数理科学 別冊, サイエンス社, 2019
投稿日:202349
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

pha
25
4278
初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中