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大学数学基礎解説
文献あり

ガロア群と副有限群について

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初めに

最初に投稿した記事めっちゃ間違ってました!!!ごめんなさい(´;ω;`)

記事の内容

 ガロア拡大 L/K のガロア群 G が、L に含まれる K 上の有限次ガロア拡大全体のガロア群で記述できることについて書きます。この有限次ガロア拡大全体から得られる群(命題 1 で副有限群として構成します)を G^ とすると、大まかな流れは次のようになります:

#内容
Step 1GG^ は群として同型
Step 2G に位相を入れる
Step 3GG^ は位相空間として同相

記号の定義

記号定義
位相群 G1, G2 に対して、G1G2 が位相群として同型
(群として同型かつ位相空間として同相)のとき、G1G2
と書く。

参考文献について

#文献
命題 1参考文献[1] p.189 定理 7.15
補題 2 【Mathpedia】命題 2.11 (基本近傍系から位相空間を定める)
補題 3参考文献[2] p.13 2.1 位相の導入
命題 4(1)参考文献[1] p.190 定理 7.18
(2) INFINITE GALOIS THEORY (DRAFT, CTNT 2020)
命題 5参考文献[1] p.190 定理 7.18
命題 6参考文献[1] p.190 問題 7.21
命題 7参考文献[1] p.190 定理 7.18

Step 1

 最初にガロア群が有限次ガロア拡大からなる副有限群と群として同型であることについて書きます。

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、{Ki}iIL に含まれる K 上の有限次ガロア拡大全体とする。このとき、Gal(L/K)Gal(Ki/K) からなる副有限群に群同型である。

副有限群の構成
 ij (i, jI)KiKj と定義することで (I, ) は有向集合となる。Gi:=Gal(Ki/K) に離散位相を入れ、fij:GjGi, σjσjKi と定義すると ({Gi}iI, {fij}ij) は逆系となり G^:=limiIGi は副有限群である。

単射準同型
φ:GG^, σ(σKi)iI
と定義すると φ は単射準同型である。
全射
 任意の (σi)iIG^ をとる。αL に対して αKi となる iI をとり σ(α):=σi(α) と定義することで σ:LL を定めると σG となる(注1)。φ の定義より φ(σ)=(σi)iI となる。

(注1) Ki, Kj (i, jI) の合成体 KiKjK 上有限次ガロア拡大であるから σiI の取り方に依存しない。

Step 2

ガロア群の基本近傍系

 基本近傍系から位相を定めます。次の補題はガロア群の部分集合族で基本近傍系の条件を満たすようなものが存在することを示しています。

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、{Ki}iIK 上有限次ガロア拡大となるような L/K の中間体全体とする。このとき、任意の σG に対して
Uσ={σGal(L/Ki)}iI は、以下を満たす:
(1) 任意の UUσ に対して σU である。
(2) 任意の U, VUσ に対して WUV となる WUσ が存在する。
(3) 任意の UUσ に対して次を満たす VUσ が存在する:「任意の τV に対して WU となる WUτ が存在する」

(1)
 任意の UUσ に対して U=σGal(L/Ki) となる Ki が存在する。idLGal(L/Ki) であるから σU となる。
(2)
 任意の U, VUσ に対して U=σGal(L/Ki), V=σGal(L/Kj) となる i, jI が存在する。W:=σGal(L/KiKj) とおく WUV となる。
(3)
 任意の UUσ に対して U=σGal(L/Ki) となる iI が存在する。V:=U とおく。次を示す:「任意の τV に対して WU となる WUτ が存在する」
 W:=τGal(L/Ki) とおくと WUτ であり、τσGal(L/Ki) より W=U となる。

 この基本近傍系を見ると、体の拡大次数を上げるほど近傍は小さくなっていく様子がわかります。
 さて、G には次のような位相が入ります:


OG={UG  任意の σU に対して VU となる VUσ が存在する }

特に任意の σG に対して UσOG です。よって {σGal(L/Ki)σG, iI}
G の開基となります。
 一方 G^ の開基は、 完不コハ群の特徴づけ より


{xNxG^, NG^ の正規開部分群}

となります。

ガロア群が位相群をなすこと

 次の補題は G がこの位相に関して位相群をなすことを主張します。

補題 2 の Uσ から定まる位相に関して G は位相群となる。

 まず、任意の iI に対して Gal(L/Ki)G の正規部分群である。()

演算の連続性
 任意の σ, τGστU となるような任意の UOG に対して στGal(L/Ki)U となる iI が存在する。V:=σGal(L/Ki), W:=τGal(L/Ki) とおくと () より
VW=στGal(L/Ki)U
となる。

逆元の連続性
 任意の σGσU となるような任意の UOG に対して σGal(L/Ki)U となる iI が存在する。V:=σGal(L/Ki) とおくと () より
V1=σGal(L/Ki)U
となる。

ガロア対応

ガロア対応

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、{Ki}iIK 上有限次ガロア拡大となるような L/K の中間体全体とする。このとき、以下が成り立つ:
(1) L/K の中間体 M に対して Gal(L/M)G の閉集合である。
(2) G の部分群 H に対して Gal(L/LH)HG における閉包である。

(1)
 Gal(L/M) が閉集合であることを示す。FK 上有限次拡大であるような M/K の中間体全体とすると、M=FFF であり、
Gal(L/M)=FFGal(L/F)
となる。各 FF に対して FFFL となるような K 上の有限次ガロア拡大とすると
Gal(L/F)Gal(L/F)
となる。補題 2 より Gal(L/F)G の単位元の開近傍であるから Gal(L/F)G の開部分群である。よって Gal(L/F) は閉集合であるから Gal(L/M)G の閉集合である。

(2)
 HHG における閉包とすると、(1) より HGal(L/LH) となる。逆の包含を示すために σGal(L/LH)H と仮定すると、σH より σGal(L/Ki)H= となるような iI が存在する。
μ:GGal(Ki/K), ρρKi
とすると、
Kiμ(H)=KiLH
となる。Ki/K は有限次ガロア拡大であるから
μ(H)=Gal(Ki/KiLH)
が成り立つ。いま σGal(L/LH) であるから、任意の αKiLH に対して σ(α)=α となる。よって σKiμ(H) となるから、σKi=τKi となるような τH が存在する。したがって τσGal(L/Ki)H となり、σGal(L/Ki)H= に矛盾する。

 ガロア対応では中間体と閉部分群が 1 対 1 に対応します。

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、ML/K の中間体全体、HG の閉部分群全体とする。このとき、
Φ:MH, MGal(L/M)Ψ:HM, HLH
は全単射で互いに逆写像である。

ΨΦ=idM
 任意の MM に対して L/M はガロア拡大であるから LGal(L/M)=M となる。よって
Ψ(Φ(M))=Ψ(Gal(L/M))=LGal(L/M)=M
が成り立つ。

ΦΨ=idH
 任意の HH に対して 命題 4 より H=Gal(L/LH) となるから
Φ(Ψ(H))=Φ(LH)=Gal(L/LH)=H
が成り立つ。

正規開部分群は有限次ガロア拡大に対応する

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、NG の正規開部分群とする。このとき、以下が成り立つ:
(1) LN/K は有限次ガロア拡大である。
(2) N=Gal(L/LN)
(3) G/NGal(LN/K)

(1)
分離拡大であること
 L/K は分離拡大なので LN/K も分離拡大である。

正規拡大であること
 σLN から K の代数閉包 K への K 上の埋め込みとする。σσL への延長とすると σG である。N は正規部分であるから、任意の τN に対して τσ=στ となるような τN が存在する。任意の αLN に対して τσ(α)=στ(α)=σ(α) となるから σ(α)=σ(α)LN となる。よって LN/K は正規拡大である。

有限次拡大であること
 LN/K が有限次拡大でないと仮定すると m:=[K(θ):K]>|G/N| となるような θLN が存在する。LN/K は分離拡大なので K(θ) から K への K 上の埋め込みはちょうど m 個存在する。これらを {σ1, , σm} とし、σiL への延長を σiG とする。σiN=σjN ならば σi(θ)=σj(θ) となり、よって σi=σj となる。したがって G/N は少なくとも m 個の元を持つことになり、m>|G/N| に矛盾する。

(2)
 N は開部分群であるから閉集合である。よって 命題 4 より N=Gal(L/LN) となる。

(3)
 G/N は離散位相群であるから、群同型写像
G/NGal(LN/K), σNσLN
は同相写像となる。

Step 3

L/K をガロア拡大、G=Gal(L/K) をそのガロア群、{Ki}iIK 上有限次ガロア拡大となるような L/K の中間体全体とする。このとき、Gal(L/K)Gal(Ki/K) からなる副有限群に位相群として同型である。

 命題 1 の群同型写像
φ:GG^, σ(σKi)iI
が、同相写像であることを示す。

φ が連続であること
 任意の iI に対して Ni:=Gal(L/Ki) とおく。
ηi:GG/Ni, σσNiψi:G/NiGal(Ki/K), σNiσKiπi:G^Gal(Ki/K), (σi)iIσi
とすると、各写像は連続であり以下は可換図式である(注2):
GφηiG^πiG/NiψiGal(Ki/K)
よって φ は連続である。

φ1 が連続であること
 NG の任意の正規開部分群とすると、命題 6 より LN=Kj となる jI が存在する。

ηj:GG/N, σσNψj:G/NGal(Kj/K), σNσKjπj:G^Gal(Kj/K), (σi)iIσj
とすると、各写像は連続であり以下は可換図式である:
GφηjG^πjG/NψjGal(Kj/K)

 また πj は全射開写像(注3)であるから、位相群の準同型定理により
G^/Ker(πj)Gal(Kj/K)
が成り立つ。よって G^/Ker(πj) は離散位相群であるから、Ker(πj)=φ(N) より φ(N)G^ の正規開部分群である。よって φ1 は連続である。

(注2) G/NiGal(Ki/K) は離散位相群であるから ψi は位相群としての同型写像である。
(注3) Gal(Kj/K) は離散位相群であるから開写像である。

参考文献

[1]
足立垣雄, ガロア理論講義, 日本評論社, 2003
[2]
福田隆, 重点解説 岩澤理論 2019年 01 月号 [雑誌]: 数理科学 別冊, サイエンス社, 2019
投稿日:202349
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投稿者

pha
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初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

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  1. 初めに
  2. 記事の内容
  3. 記号の定義
  4. 参考文献について
  5. $\text{Step}\ 1$
  6. $\text{Step}\ 2$
  7. ガロア群の基本近傍系
  8. ガロア群が位相群をなすこと
  9. ガロア対応
  10. ガロア対応
  11. 正規開部分群は有限次ガロア拡大に対応する
  12. $\text{Step}\ 3$
  13. 参考文献