0

【Causality】全悪質時空2

24
0

 この記事は 全悪質時空1 の続きです。この記事の目的は 全悪質時空1 で証明された定理

時空(M,g)がreflectingでかつCTCが存在するならば、TVである。

の条件をreflectingからlocally reflectingに弱めた定理を証明することです。locally reflectingとは次のように定義される性質です。

locally reflecting

時空(M,g)がlocally reflectingであるとは、任意の点pMに対して、pの開近傍Uがあり、任意のx,yUに対して、I+(x)I+(y)I(x)I(y)が成り立つことである。

 この記事では次の定理を証明します。

時空(M,g)がlocally reflectingでかつCTCが存在するならば、TVである。

 この定理は
Kim, Jong‐Chul, and Jin‐Hwan Kim. "Totally vicious space‐times." Journal of mathematical physics 34.6 (1993): 2435-2439.
において証明されました。この記事はこの論文の証明を再編したものです。

 reflectingならばlocally reflectingですが、逆は成り立ちません。例えば、2次元Minkowski時空(ds2=dt2+dx2)から、{x; 1x1}を取り除いた時空はlocally reflectingですがreflectingではありません。

 また下図はlocally reflectingでない時空の図です。

 (そのうち載せときます)

証明

 まずこの証明にとって重要なΔ集合を定義します。

Δ集合

Δ+(p)={qM; I+(q)=I+(p)}
Δ(p)={qM; I(q)=I(p)}
Δ(p)=Δ+(p)I(p)

 future distinguishingな時空だとI+(p)=I+(q)となるときp=qなので、Δ集合が大きいほどnon-distinguishingな度合が強いことになります。

x<<xならば、I+(x)I(x)=Δ(x)

x<<xだからI+(x)I(x)である。
I+(x)I(x)Δ(x)を示す。
yI+(x)I(x)とする。
y<<xよりI+(y)I+(x)である。
y>>xよりI+(y)I+(x)である。
よってI+(y)=I+(x)となる。
同様にI(y)=I(x)となる。

I+(x)I(x)Δ(x)を示す。
yΔ(x)に対して、I±(y)=I±(x)かつx<<xであるから、
I+(y)=I+(x)xy<<xyI(x)
I(y)=I(x)xx<<yyI+(x)
である。

pMにおいてlocally reflectingであるとすると、Δ(p)は閉集合である。

Δ(p)の補集合がopenであることを示す。
xΔ(p)とする。
(i)I+(x)I+(p)であること
yI+(x)I+(p)に対して、I(y)xの開近傍
もしzI(y)Δ(p)ならyI+(z)=I+(p)となるから仮定に矛盾する
よってI(y)I(y)Δ(p)=なるyの開近傍である

(ii)I(x)I(p)であること
(i)と同様

(iii)I+(x)I+(p)=, I(x)I(p)=であること
I+(x)I+(p)だからI+(x)I+(p)である
同様にI(x)I(p)である
xのreflecting nbhdUをとる
もしUΔ(p)ならqUΔ(p)に対して、I+(x)I+(q), I(x)I(q)であるから、Uがreflecting nbfdであることに矛盾する
よってUΔ(p)=である

以上より定理2が証明されます。

定理2の証明

x<<xとなるxMが存在するから、補題1よりI+(x)I(x)=Δ(x)となる。
locally reflectingだから補題2よりΔ(x)はclosedである。
よってMは連結であるから、I+(x)I(x)=Mとなる。

感想

 Δ集合は定義からnon-distinguishingと関係の強い概念であると思われるが、
non-distinguishing non-causal non-chronological totally vicious
なのだから、totally viciousの証明にいきなり使われるのは少しギャップを感じる。Δ集合とnon-causal,non-chronological時空との関係が知りたい。

投稿日:2023419
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Submersion
Submersion
98
29359
専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中