こんにちは!はっぴーたーんです!
今回は、こちらの記事 Ohrui(削除済みなのでアーカイブです)で証明が放棄されていた『無限次元ノルム空間は局所コンパクトでないこと』を証明していきたいと思います!
それでは、やっていきましょ〜
今回、証明するのは次の主張になります〜
無限次元ノルム空間は局所コンパクトでない.
ただし、この記事では局所コンパクト性の定義として『任意の点がコンパクトな近傍をもつ』を用いることにします。(ノルム空間はハウスドルフ空間なので今回は気にする必要はありませんが、他にもいくつか局所コンパクト性の定義があります loc_cpt)
定理1をちゃんと証明する為に、いくつか準備をしていきたいと思います〜(どれも有名な事実ですので、ご存知の方は適当に読み飛ばしてもらって大丈夫です!)
$X$を距離空間とする. このとき, $X$がコンパクトであることと$X$が点列コンパクトであることは同値.
この命題の証明はこちら afujioka を参照して下さい。
この命題とBolzano–Weierstrassの定理 B_W から、次のHeine–Borelの定理 H_B がすぐに分かります〜
$\mathbb R^n$の部分集合$A$について, 次は同値:
ただし, $\mathbb R^n$はユークリッドノルム
$$\|x\| := \sqrt{|x_1|^2 + \dots +|x_n|^2} \quad (x = (x_1, \dots, x_n) \in \mathbb R^n)$$
によってノルム空間とみなす.
実は、このHeine–Borelの定理におけるノルムはどのようなノルムを考えて良いことが知られています。次はそれを見ていきます〜
$X$をベクトル空間とし, $\|\cdot\|_1, \|\cdot\|_2$を$X$上のノルムとする. このとき, $\|\cdot\|_1$と$\|\cdot\|_2$が 同値なノルム であるとは, 次が成り立つことをいう:
$$\exists C_1, C_2 > 0, \forall x \in X,\ C_1 \|x\|_1 \le \|x\|_2 \le C_2 \|x\|_1.$$
このノルムの同値性は、文字通り$X$上のノルムに関する同値関係になっています〜そして、実は有限次元のときは全てノルムが同値になることが知られています!
$X$を有限次元ベクトル空間とする. このとき, $X$上のノルムは全て同値である.
同値なノルムは同じ位相を定めることが(開球同士の包含関係を考えることで)すぐに分かります。なので、この命題からHeine–Borelの定理はノルムに依らないことが分かります。従って、有限次元ノルム空間は必ず局所コンパクトになります。
ということで、この命題を示しておきます〜
適当な同型写像を考えることで$X = \mathbb R^n$としてよい. また, 一方のノルムは先ほどのユークリッドノルムとしてよい.$e_i\ (1 \le i \le n)$を$\mathbb R^n$の標準基底とする.
$\|\cdot\|'$を$\mathbb R^n$上のノルムとする. このとき, 任意の$a = (a_1, \dots a_n) \in \mathbb R^n$について
\begin{align} \left| \|x\|' - \|a\|' \right| &\le \|x-a\|' \\ &\le \sum_{i=1}^n |x_i - a_i| \|e_i\|' \\ &\le \max_{1\le i \le n} \|e_i\|' \sum_{i=1}^n |x_i - a_i| \\ &\le n \max_{1\le i \le n} \|e_i\|' \|x-a\| \\ &\to 0 \quad (x \to a) \end{align}
なので, $\|\cdot\|'$は(ユークリッドノルムから定まる位相に関して)連続である. よって, (ユークリッド位相における)Haine-Borelの定理(と最大値・最小値の定理)から$C_1 := \min_{\|x\| = 1} \|x\|'$と$C_2 := \max_{\|x\| = 1} \|x\|'$が存在する.($C_1, C_2 \in (0, \infty)$となっていることに注意する)
このとき, 任意の$x \in \mathbb R^n$について,
$$\|x\|' = \|x\| \left\| \frac{1}{\|x\|} x \right\|' \in \left[ C_1\|x\|, C_2 \|x\| \right]$$
となることが, この$C_1, C_2$によって$\|\cdot\|$と$\|\cdot\|'$が同値であることが分かる.
(証明終)
また、同値なノルムは完備性を保つことが容易に分かるので、この命題から有限次元ノルム空間は必ず完備であることが分かります〜
さて、必要な準備もおおよそ完了したので、定理1を証明するにあたって最も本質的な命題を紹介したいと思います〜
$X$をノルム空間, $Y$を$X$の閉真部分(ベクトル)空間とし, $\alpha \in (0, 1)$とする. このとき, ある$\|x\| = 1$なる元$x \in X$が存在して, 任意の$y \in Y$に対して$\|x − y\| > \alpha$となる.
この主張を用いると、定理1は次のように簡単に示すことが出来ます。
$N \subseteq X$を原点の任意の近傍とする. 命題2より, $N$が点列コンパクトでないことを確かめればよい.
$\{x \in X : \|x\| < 2r \} \subset N$なる$r > 0$を取り, 点列$\{x_n\}_n \in X$を次のように(帰納的に)定める:
このとき, $\|x_n\| = r < 2r\ (n \in \mathbb N)$より$\{x_n\}_n$は$N$内の点列であり, 任意の$m > n$について$\|x_m - x_n\| = r\|r^{-1}x_m - r^{-1}x_n\| > r/2$なので, 任意の部分列はCauhy列とならない(特に, $\{x_n\}_n$は収束部分列を持たない). ゆえに, $N$は(点列)コンパクトでない.
よって, $N$の任意性より$X$は局所コンパクトでないことが分かる.
(証明終)
では、最後にこのRieszの補題を証明していきましょ〜
証明はこちら Riesz で参照されている、この証明 Riesz_prf を参考にしています〜
$x' \in X \setminus Y$をとり, $R := \inf_{y \in Y} \|x' - y\|$とする.(このとき, $Y$は閉なので$R > 0$となる)
そこで, 任意の$\varepsilon > 0$に対して, $\|x' - y'\| < R + \varepsilon$なる$y' \in Y$をとり, $x := \frac{1}{\|x' - y'\|}(x' - y')$とおく. すると,
\begin{align} \inf_{y \in Y} \|x - y\| &= \inf_{y \in Y} \left\|x - \frac{1}{\|x' - y'\|} y \right\| \\ &= \inf_{y \in Y} \left\| \frac{1}{\|x' - y'\|}(x' - y' - y) \right\| \\ &= \frac{\inf_{y \in Y} \left\| x' - (y' + y) \right\|}{\|x' - y'\|} \\ &= \frac{\inf_{y \in Y} \left\| x' - y \right\|}{\|x' - y'\|} \\ &> \frac{R}{R+\varepsilon} \end{align}
となる. $\varepsilon > 0$は任意なので, $\alpha \in (0, 1)$に応じて十分小さく取ることで, 所望の$x \in X$が得られる.
(証明終)
いかがでしたか?一見すると直感的に明らかな主張でも、ちゃんと証明しようと思うと色々準備が必要で大変なことがある、ということが分かりますね〜
それでは、平和で楽しいMathlogライフを〜