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大学数学基礎解説
文献あり

無限次元ノルム空間が局所コンパクトでないこと

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ごあいさつ

こんにちは!はっぴーたーんです!

今回は、こちらの記事 [1](削除済みなのでアーカイブです)で証明が放棄されていた『無限次元ノルム空間は局所コンパクトでないこと』を証明していきたいと思います!

それでは、やっていきましょ〜

本題

今回、証明するのは次の主張になります〜

無限次元ノルム空間は局所コンパクトでない.

ただし、この記事では局所コンパクト性の定義として『任意の点がコンパクトな近傍をもつ』を用いることにします。(ノルム空間はハウスドルフ空間なので今回は気にする必要はありませんが、他にもいくつか局所コンパクト性の定義があります [2]

定理1をちゃんと証明する為に、いくつか準備をしていきたいと思います〜(どれも有名な事実ですので、ご存知の方は適当に読み飛ばしてもらって大丈夫です!)

コンパクト性と点列コンパクト性

Xを距離空間とする. このとき, XがコンパクトであることとXが点列コンパクトであることは同値.

この命題の証明はこちら [3] を参照して下さい。

この命題とBolzano–Weierstrassの定理 [4] から、次のHeine–Borelの定理 [5] がすぐに分かります〜

Heine–Borelの定理

Rnの部分集合Aについて, 次は同値:

  • Aは(相対位相に関して)コンパクト,
  • ARnの有界閉集合.

ただし, Rnはユークリッドノルム

x:=|x1|2++|xn|2(x=(x1,,xn)Rn)

によってノルム空間とみなす.

実は、このHeine–Borelの定理におけるノルムはどのようなノルムを考えて良いことが知られています。次はそれを見ていきます〜

ノルムの同値性

Xをベクトル空間とし, 1,2X上のノルムとする. このとき, 12同値なノルム であるとは, 次が成り立つことをいう:
C1,C2>0,xX, C1x1x2C2x1.

このノルムの同値性は、文字通りX上のノルムに関する同値関係になっています〜そして、実は有限次元のときは全てノルムが同値になることが知られています!

有限次元ベクトル空間のノルムの同値性

Xを有限次元ベクトル空間とする. このとき, X上のノルムは全て同値である.

同値なノルムは同じ位相を定めることが(開球同士の包含関係を考えることで)すぐに分かります。なので、この命題からHeine–Borelの定理はノルムに依らないことが分かります。従って、有限次元ノルム空間は必ず局所コンパクトになります。

ということで、この命題を示しておきます〜

適当な同型写像を考えることでX=Rnとしてよい. また, 一方のノルムは先ほどのユークリッドノルムとしてよい.ei (1in)Rnの標準基底とする.

Rn上のノルムとする. このとき, 任意のa=(a1,an)Rnについて

|xa|xai=1n|xiai|eimax1ineii=1n|xiai|nmax1ineixa0(xa)

なので, は(ユークリッドノルムから定まる位相に関して)連続である. よって, (ユークリッド位相における)Haine-Borelの定理(と最大値・最小値の定理)からC1:=minx=1xC2:=maxx=1xが存在する.(C1,C2(0,)となっていることに注意する)

このとき, 任意のxRnについて,

x=x1xx[C1x,C2x]

となることが, このC1,C2によってが同値であることが分かる.

(証明終)

また、同値なノルムは完備性を保つことが容易に分かるので、この命題から有限次元ノルム空間は必ず完備であることが分かります〜

さて、必要な準備もおおよそ完了したので、定理1を証明するにあたって最も本質的な命題を紹介したいと思います〜

Rieszの補題 [7]

Xをノルム空間, YXの閉真部分(ベクトル)空間とし, α(0,1)とする. このとき, あるx=1なる元xXが存在して, 任意のyYに対してxy>αとなる.

この主張を用いると、定理1は次のように簡単に示すことが出来ます。

(Rieszの補題を用いた定理1の証明)

NXを原点の任意の近傍とする. 命題2より, Nが点列コンパクトでないことを確かめればよい.

{xX:x<2r}Nなるr>0を取り, 点列{xn}nXを次のように(帰納的に)定める:

  1. x1=rなるx1Xを取る.
  2. n番目まで定まっているとする. このとき, Y{x1,,xn}で張られるXの部分空間とすると, Yは有限次元ノルム空間なので完備, 従って閉部分空間であり, Xは無限次元なのでYXの真部分空間である. そこで, Rieszの補題よりxr1xk>1/2 (1kn),x=1なるxXを取ることが出来るので xn+1:=rxと定める.

このとき, xn=r<2r (nN)より{xn}nN内の点列であり, 任意のm>nについてxmxn=rr1xmr1xn>r/2なので, 任意の部分列はCauhy列とならない(特に, {xn}nは収束部分列を持たない). ゆえに, Nは(点列)コンパクトでない.

よって, Nの任意性よりXは局所コンパクトでないことが分かる.

(証明終)

では、最後にこのRieszの補題を証明していきましょ〜
証明はこちら [7] で参照されている、この証明 [8] を参考にしています〜

(Rieszの補題)

xXYをとり, R:=infyYxyとする.(このとき, Yは閉なのでR>0となる)

そこで, 任意のε>0に対して, xy<R+εなるyYをとり, x:=1xy(xy)とおく. すると,

infyYxy=infyYx1xyy=infyY1xy(xyy)=infyYx(y+y)xy=infyYxyxy>RR+ε

となる. ε>0は任意なので, α(0,1)に応じて十分小さく取ることで, 所望のxXが得られる.

(証明終)

おわりに

いかがでしたか?一見すると直感的に明らかな主張でも、ちゃんと証明しようと思うと色々準備が必要で大変なことがある、ということが分かりますね〜

それでは、平和で楽しいMathlogライフを〜

参考文献

投稿日:20231016
更新日:2024716
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投稿者

北田均・現代数学社『数理解析学概論』新訂版序文の「ほぼ独学と思われる熱心な読者」(通称「序文と初等的弱解の人」「序文の人」)こと、大類昌俊 (おおるい まさとし, Masatoshi OHRUI) さんと彼のサイト「序文とあとがきの人のブログ」に関する話題をメインに記事を投稿しています! 誹謗中傷や低評価による嫌がらせはお止め下さい。 🧞‍♂️類憐憫令

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