2
大学数学基礎解説
文献あり

漸化式の極限の精密化

136
0

はじめに

この記事は2021年度の京大作問サークル部誌に掲載したものを一部訂正して再掲したものです. boothで直近の部誌や模試も販売しているよ!

前提知識

高校以前までは漸化式からその数列がどのような値に収束するか, または発散するかということを中心に扱っている. この記事では, 漸化式から定まる数列の振る舞いをより精密に近似する.

以下のことを認める.

Stolz-Cesàroの定理

{an}, {bn} を次の2つの条件を満たす数列とする.
(1) {bn} は狭義単調増加かつ上に有界でない. または, 狭義単調減少かつ下に有界でない.
(2) 極限 limnan+1anbn+1bn が収束する. このとき次の等式が成立する.
limnanbn=limnan+1anbn+1bn

これは数列版のロピタルの定理と表現されることが多い. 証明はε-δ論法を用いる. 例えば こちら を参照.

数列の収束,発散について

高校数学では, 収束先との差を評価するなどして収束することを示していたが, 大学数学の知識を用いると簡潔に解くことができる.

数列 {an} は次の漸化式を満たしている.
a0=1,an+1=sinan(n=0,1,)
このとき, {an} の収束発散を調べ, 収束する場合はその極限値を求めよ.

帰納的に, 任意の非負整数 n に対して 0an1 が従うので, 漸化式から 0an+1an となることも従う. よって単調収束定理から {an} は収束するので, その極限値を α とおく. 漸化式で n とすると
α=sinα
となる. これより α=0 を得る.

数列 {an} が次の漸化式を満たしている.
a0=1,an+1=an(1+ean)(n=0,1,)
このとき, {an} の収束発散を調べ, 収束する場合はその極限値を求めよ.

an は単調増加であるので, 上に有界と仮定すると収束する. その収束先を α とすると α=α(1+eα) より α=0<a0 となり矛盾. よって上に有界でない. 単調増加であることと合わせると limnan= が従う.

数列の収束,発散の精密化

数列 {an} が負の無限大に発散する場合は bn=an とすると正の無限大に発散する場合に帰着され, 数列 {an}0でない実数 c に収束する場合は bn=anc とすることで, 0に収束する場合に帰着できる.

以上のことから0に収束する場合と正の無限大に発散する場合について以下では考える (実数 s に対して ans を考えるので各項を正としている).

実数列 {an} と実数値関数 f(x) が次の3つの条件を満たしているとする.

  1. 任意の自然数 n に対し anf(x) の定義域に属し, 次の式を満たす.
    an+1=anf(an)(n=1,2,3,)
  2. 任意の正の整数 n に対して an>0.
  3. ある 1 より大きい実数 s0 でない実数 α が存在して, 次の等式を満たす.
    limnan=0,limnf(an)ans=α

このとき次の等式が成立する.
limnnans1=1(s1)α

ある正の整数 n に対して f(an)=0 なら an+1=an が従うが, an0 から an=0 となり矛盾する. よって f(an)0 であることに注意する.
1an+1s11ans1=1{anf(an)}s11ans1=ans1{anf(an)}s1ans1{anf(an)}s1=ans1{anf(an)}s1ans2f(an)f(an)ansans1{anf(an)}s1=1{1f(an)an}s1f(an)anf(an)ans1{1f(an)an}s1
ここで
f(an)an=f(an)ansans10(n)
となるので
1an+1s11ans1(s1)α(n)
が従う. よってStolz-Cesàroの定理より
limn1nans1=(s1)α
が従う.

問題1の数列 {an} は次を満たしていた.
a0=1,an+1=sinan(n=0,1,)
また an0(n) であった. f(x)=xsinx とするとロピタルの定理から
limx0f(x)x3=16
となるので
limnnan2=3
となる.

実数列 {an} と実数値関数 f(x) が次の2つの条件を満たしているとする.
(1) 任意の自然数 n に対し anf(x) の定義域に属し, 次の式を満たす.
an+1=an+f(an)(n=1,2,3,)
(2) ある 1 より大きい実数 s と実数 α が存在して次の等式を満たす.
limnan=,limnansf(an)=α
このとき次の等式が成立する.
limnans+1n=(s+1)α

bn=1/an とすると
bnbn+1=bnbn1+bnf(bn1)=bn2f(bn1)1+bnf(bn1)
となる. ここで
bnf(bn1)=an1f(an)=ansf(an)an1s0(n)
となるので
bn2f(bn1)1+bnf(bn1)1bns+2=bnsf(bn1)1+bnf(bn1)α(n)
となるので定理2より直ちに従う.

以下, U とは実数 a が存在して (a,) と表される開集合とする (a= を含める).

実数列 {an}U 上微分可能である実数値関数 f(x) が次の2つの条件を満たしているとする.

  1. 任意の自然数 n に対し anf(x) の定義域に属し, 次の式が成立する.
    an+1=an+ef(an)(n=1,2,3,)
  2. ある 1 より大きい実数 s と正の実数 α が存在して, 次の等式を満たす.
    limnan=,limxf(x)=,limxf(x)xs=α

このとき次の等式が成立する.
limnans+1logn=s+1α

f(x)UC1 級ならば, (2)の limxf(x)= は(2)の3つ目の式から従うので必要ない.

(2)より十分大きいある自然数 N が存在してn>N ならば an>0 である. また n の場合を考えているので, 以下では n>N とする. まず, 実数値関数 g(x)
g(xs+1)=log{(x+ef(x))s+1xs+1}
を満たすように定める. このとき
exp{g(ans+1)}={an+ef(an)}s+1ans+1=an+1s+1ans+1
となる. bn=ans+1 とすると
bn+1=bn+eg(bn)
となる. ロピタルの定理から
f(x)=αs+1xs+1+o(xs+1)
となる. よってlimxef(x)x=0 と微分の定義式から
limxxsef(x)(x+ef(x))s+1xs+1=limx{(1+ef(x)x)s+11ef(x)x}1=1s+1
となる. つまり
1(x+ef(x))s+1xs+1=xsef(x)s+1+o(xsef(x))
ゆえに
ddxg(xs+1)=(s+1)(1f(x)ef(x))(x+ef(x))s(s+1)xs(x+ef(x))s+1xs+1={xsef(x)+o(xsef(x))}{(1f(x)ef(x))(xs+o(xs))xs}=f(x)+o(f(x))=αxs+o(xs)
となり, 左辺が (s+1)xsg(xs+1) となるので,
limxg(x)=αs+1
が従う. また
1bn+2bn+11bn+1bn=eg(bn+1)eg(bn)=eg(bn+eg(bn))eg(bn)=eg(bn+eg(bn))g(bn)1g(bn+eg(bn))g(bn)g(bn+eg(bn))g(bn)eg(bn)
ここで, 平均値の定理より
limxg(x+eg(x))g(x)eg(x)=limxg(x)=αs+1
となる. 特に g(bn+eg(bn))g(bn)0 であるので微分の定義式から
limneg(bn+eg(bn))g(bn)1g(bn+eg(bn))g(bn)=1
が従う. 以上から
limn(1bn+2bn+11bn+1bn)=αs+1
となるので, Stolz-Cesàroの定理から
limn1n(bn+1bn)=limn1bn+2bn+11bn+1bn(n+1)n=αs+1
となる. 再びStolz-Cesàroの定理から
limnbnlogn=limnbn+1bnlog(n+1)logn=limnn(bn+1bn)log(1+1n)n=s+1α
が従うので bn=ans+1 より題意は示された.

問題2の数列 {an} は次の漸化式を満たしてた.
a0=1,an+1=an(1+ean)(n=0,1,)
このとき limnan= であり, f(x)=xlogx として定理5を適用すると
limnanlogn=1

実数列 {an}U2階微分可能である実数値関数 f(x) が次の2つの条件を満たしているとする.

  1. 任意の自然数 n に対し anf(x) の定義域に属し, 次の式が成立する.
    an+1=an+f(an)ant(n=1,2,3,)
    ただし, t1 より大きい実数とする.
  2. ある 0 でない実数 s と正の実数 α が存在して, 次の等式を満たす.
    limnan=,limxf(x)={(s>0)0(s<0),limxf(x)=0,limxx2f(x)(logx)s1=sα

このとき次の等式が成立する.
limnant+1n(logn)s=α(t+1)s1

条件(2)から次が従う.
limxf(x)(logx)s=α,limxxf(x)(logx)s1=sα

条件(2)より十分大きい実数 x に対して f(x)>0 となる. より十分大きい自然数に対して f(an)>0 となることに注意する.
以下では n が十分大きいときを考える. 次のように関数 f~(x) を定める.
f~(xt+1)={x+f(x)xt}t+1xt+1=(t+1)f(x)+o(f(x))
このとき, 次の式が成立する.
an+1t+1={an+f(an)ant}t+1=ant+1+f~(ant+1)
また f~(xt+1) を微分すると
(t+1)xtf~(xt+1)=(t+1){1+xf(x)tf(x)xt+1}{x+f(x)xt}t(t+1)xt=(t+1){1+xf(x)tf(x)xt+1}(xt+o(xt))(t+1)xt=(t+1)f(x)+o(xt)
より
limxxt+1f~(xt+1)(logx)s1=sα

またこれより
limxxf~(x)(logx)s1=sα(t+1)s1
が従う. また
f~(xt+1)={1+xf(x)tf(x)xt+1}{1+f(x)xt+1}t1
の両辺を微分して整理すると
(t+1)xtf~(xt+1)=xt2[{xf(x)+f(x)tf(x)}x(t+1){xf(x)tf(x)}]{1+f(x)xt+1}t+{1+xf(x)tf(x)xt+1}txf(x)(t+1)f(x)xt+2{1+f(x)xt+1}t1=x2f(x)2txf(x)+t(t+1)f(x)xt+2{1+f(x)xt+1}t+{1+xf(x)tf(x)xt+1}txf(x)(t+1)f(x)xt+2{1+f(x)xt+1}t1
よって
limxx2t+2f~(xt+1)(logx)s1=limx[x2f(x)2txf(x)(t+1)(logx)s1{1+f(x)xt+1}t+txf(x)(t+1)(logx)s1{1+xf(x)tf(x)xt+1}{1+f(x)xt+1}t1+tf(x)(logx)slogxxt+1{(1+t)f(x)xf(x)}{1+f(x)xt+1}t1]=sα2tsα+tsαt+1=sα
これより
limxx2f~(x)(logx)s1=sα(t+1)s1
以上から t=0 のときのみ示せば良いことがわかる. より以下では t=0 のとき成立することを示す. 次のように数列 {bn} を定める.
bn=(an+1an)1s=f(an)1s
ここで実数値関数 g(x)=f(x)1s で定めると
limxg(x)logx=limx{f(x)(logx)s}1s=α1s
となる. また
limxxg(x)=limxxf(x)f(x)1s1s=limxxf(x)s(logx)s1{f(x)(logx)s}1s1=α1s
さらに
limxx2g(x)=limxx2s{f(x)f(x)1s1+(1s1)f(x)2f(x)1s2}=limx1s[x2f(x)(logx)s1{f(x)(logx)s}1s1+(1s1)1logx{xf(x)(logx)s1}2{f(x)(logx)s}1s2]=α1s
となる.
また xg(x) の極限の式より十分大きい実数 M が存在して x>M のとき g(x)>0 となる. より g(x) は狭義単調増加となり, x>M の範囲で逆関数を持つ. このとき
bn+1=g(an+1)=g(an+f(an))=g(bns+g1(bn))
となる. また g(x) は単調増加より
g(xs+g1(x))x=g(xs+g1(x))g(g1(x))>0
となる. より実数値関数 h(x) を次のように定義できる.
h(x)=log{g(xs+g1(x))x}
このとき
bn+1=bn+eh(bn)
となるので h(x) の極限を調べれば良い.
h(x)={sxs1+(g1)(x)}g(xs+g1(x))1g(xs+g1(x))x
y=g1(x) とすると x のとき y
h(x)={sg(y)s1+1g(y)}g(g(y)s+y)1g(g(y)s+y)g(y)
となる. ここで平均値の定理より
g(g(y)s+y)g(y)g(y)s=g(c1(y))
かつ y<c1(y)<y+g(y)s となる実数 c1(y) が存在する. このとき
1<c1(y)y<1+g(y)sy

limyg(y)sy=limy{g(y)logy}s(logy)sy=0
よって挟み撃ちの原理より
limyc1(y)y=1
となる. よって y のとき c1(y) に注意すると
limyy(logy)s{g(g(y)s+y)g(y)}=limyyc1(y){g(y)logy}sc1(y)g(c1(y))=α1s+1
また
limyy(logy)ssg(y)s1g(g(y)s+y)=limys{g(y)s+y}g(g(y)s+y)yg(y)s+y1logy{g(y)logy}s1=0
となる. また再び平均値の定理から
g(g(y)s+y)g(y)g(y)s=g(c2(y))
かつ y<c2(y)<y+g(y)s となる実数 c2(y) が存在する. このとき先程と同様にして
limyc2(y)y=1
が従う. よって
limyy(logy)s{g(g(y)s+y)g(y)1}=limyy(logy)sg(y)sg(y)g(g(y)s+y)g(y)g(y)s=limy{g(y)logy}s1yg(y){yc2(y)}2c2(y)2g(c2(y))=α
となる. 以上から
limxh(x)=limy{sg(y)s1+1g(y)}g(g(y)s+y)1g(g(y)s+y)g(y)=limyy(logy)s{sg(y)s1g(g(y)s+y)+g(g(y)s+y)g(y)1}[y(logy)s{g(g(y)s+y)g(y)}]1=α1s
よって定理4より
limnbnlogn=α1s
となる. bn=(an+1an)1s より
limnan+1an(logn)s=α
となる. ここで次の極限を考える.
limn(n+1){log(n+1)}sn(logn)s(logn)s
平均値の定理より n<cn<n+1 なる実数 cn が存在して
(n+1){log(n+1)}sn(logn)s=(logcn)s+s(logcn)s1
ここで, 挟み撃ちの原理より limncnn=1 となることに注意すると
limnlogcnlogn=limn1logn(logn+logcnn)=1
が従うので
limn(n+1){log(n+1)}sn(logn)s(logn)s=limn{(logcnlogn)s+slogn(logcnlogn)s1}=1
よってStolz-Cesàroの定理より
limnann(logn)s=limnan+1an(n+1){log(n+1)}sn(logn)s =limnan+1an(logn)s(logn)s(n+1){log(n+1)}sn(logn)s=α
となるので題意は示された.

定理2, 3の精密化について

定理3の状況に加えて, 正の実数 t と実数 β が存在して
limnant{ansf(an)α}=β
となるとする. このとき次が成立する.
(1) t<s+1 のとき
limn{ans+1(s+1)αn}s+1nst+1=(s+1)2st+2βs+1(st+1)s+1αt

(2)t=s+1 のとき
limnans+1(s+1)αnlogn=βα+sα2
(3)t>s+1 のとき
limnans+1(s+1)αnlogn=sα2

ロピタルの定理などから次の式が従うことに注意する.
limx0(1+x)s+11(s+1)xx2=s(s+1)2
次にそれぞれの場合について考えていく.
(1)t<s+1 のとき
limnant{an+1s+1ans+1(s+1)α}=limn[{1+f(an)an}s+11(s+1)f(an)an{f(an)an}2ans+t1f(an)2+(s+1)ant{ansf(an)α}]=(s+1)β
より
limnnts+1{an+1s+1ans+1(s+1)α}=limn(ans+1n)ts+1ant{an+1s+1ans+1(s+1)α}={(s+1)α}ts+1(s+1)β
となるのでStolz-Cesàroの定理より
limnans+1(s+1)αnn1ts+1=limn[{an+1s+1(s+1)α(n+1)}{ans+1(s+1)αn}]{(n+1)1ts+1n1ts+1}1=limnnts+1(n+1)1ts+1n1ts+1nts+1{an+1s+1ans+1(s+1)α}=(s+1)2β{(s+1)α}ts+1st+1
となる. この式の両辺を s+1 乗することにより示された.
(2)t=s+1 のとき
limnans+1{an+1s+1ans+1(s+1)α}=limn[{1+f(an)an}s+11(s+1)f(an)an{f(an)an}2an2sf(an)2+(s+1)ans+1{ansf(an)α}]=s(s+1)2α2+(s+1)β
よって
limnn{an+1s+1ans+1(s+1)α}=limnnans+1ans+1{an+1s+1ans+1(s+1)α}=βα+sα2
となるのでStolz-Cesàroの定理より
limnans+1(s+1)αnlogn=limn[{an+1s+1(s+1)α(n+1)}{ans+1(s+1)αn}]{log(n+1)logn}1=limnn{an+1s+1ans+1(s+1)α}log(1+1n)n=βα+sα2
より示された.
(3)t>s+1 のとき
limnans+1{an+1s+1ans+1(s+1)α}=limn[{1+f(an)an}s+11(s+1)f(an)an{f(an)an}2an2sf(an)2+(s+1)ans+1{ansf(an)α}]=s(s+1)2α2
となる. あとは(2)と同様にすると示される.

定理2の状況に加えて, 正の実数 t と実数 β が存在して
limn1ant{f(an)ansα}=β
となるとする. このとき, 次が成立する.
(1)t<s1 のとき
limn1nst1{1ans1(s1)αn}s1=(s1)2st2βs1(st1)s1αt
(2)t=s1 のとき
limn1logn{1ans1(s1)αn}=βα+sα2
(3)t>s1 のとき
limn1logn{1ans1(s1)αn}=sα2

証明は先程とほとんど同様であるので省略する.

おわりに

計算量が膨大すぎてこれ以上の精密化はしていません. 暇な方はやってみてね!(鬼畜)

参考文献

投稿日:112
更新日:112
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

へ
23
2501
京大作問サークル

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. 前提知識
  3. 数列の収束,発散について
  4. 数列の収束,発散の精密化
  5. 定理2, 3の精密化について
  6. おわりに
  7. 参考文献