こんにちはMakkyoExistsです。体調が悪かったのと自分のゼミの準備で前回から少し間があいてしまいました。本日も前回に引き続き位相空間論の基礎事実を解説したいと思います。本日紹介する定理はこちらです。
$X$をハウスドルフ空間とし$S$を$X$のコンパクト集合とする。このとき$S$は閉集合となる。
普段位相空間論を触らない僕としてはこういう定理まとめるのは新鮮ですね。ではやっていきましょう。
この章では前回の記事 (https://mathlog.info/articles/354) で定義したものを引用してまとめておきます。
$X$を集合とし、$\mathcal{O}$を$X$の部分集合から成る族とする($\mathcal{O}$は必ずしも$X$の部分集合を「全て」取ってきているわけではない。)
$\mathcal{O}$が次の3条件をみたすとき、$X$に位相(topology)が与えられたといい、$\mathcal{O}$に属する$X$の部分集合を$X$の開集合(open set)、$\mathcal{O}$を開集合系(open set system)という。
位相が与えられた集合を位相空間(topology space)という。
$X$を位相空間、$\mathcal{O}$を$X$の開集合系とする。
$X$の部分集合$F$について、$F$の補集合$F^c$が$\mathcal{O}$に属するとき、$F$を閉集合(closed set)という。閉集合全体の集合を$\mathcal{F}$で表すと以下の3条件
が成り立つ。
$X$を位相空間、$S$を$X$の部分集合とする。$X$の開集合族$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$が
$$
S \subset \displaystyle\bigcup_{\lambda \in \Lambda}{U_i}
$$
をみたすとき$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$を$S$の開被覆(open covering)という。
$X$を位相空間、$S$を$X$の部分集合とする。ここで、$S$の「任意の」開被覆$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$に対し、
$$
S \subset \displaystyle\bigcup_{i = 1}^{n}{U_i}
$$
となる$U_{\lambda_1}, U_{\lambda_2}, \dots ,U_{\lambda_n}$ ($\lambda_1, \lambda_2, \dots, \lambda_n \in \Lambda$)がとれるとき、$S$をコンパクト集合(compact subset)という。
引き続きこの章でも基本の定義を確認していきます。まずは開近傍系の定義をします。
$X$を位相空間、$a \in X$とする。$a$を含む$X$の開集合を$a$の(開)近傍(open neighborhood)といい、$a$の開近傍全体の集合を$\mathscr{U}(a)$で表す。$\mathscr{U}(a)$を$a$の全近傍系(total neighborhood system)という。
まぁ単純にその点$a$を含む開集合を全部集めたものということですね。 前回の記事 で閉集合の公理を「定義」してそれから位相を定めることもできることに軽く触れたのですが、同じように近傍系の公理を「定義」して位相を定めることもできます。ここでは省略します。
次に内点の定義です。
$X$を位相空間、$S$を$X$の部分集合とし$a \in S$とする。ここで
$$
a \in U \subset S
$$
となるような$a$の開近傍$U$がとれるとき、$a$を$S$の内点(interior point)という。また$S^{\circ}$を$x$の内点全体の集合とするとき$S^{\circ}$を$S$の内核(interior kernel)という。
定義から$S^{\circ} \subset S$になることは自明ですね。感覚的に内点とは$x$のまわりを「少し膨らませても」また$S$に入ってくる点という感じです。内核には次の大事な性質があります。
これから何が分かるかというと$S^{\circ}$は$S$に含まれる最大の開集合ということになり、$S$自体が開集合であることと$S^{\circ} = S$が成り立つのは同値になります。ある部分集合Sが開集合であることを示したいとき、$S$の任意の点が$S$の内点になることを示せばよいことになりますね。
大事な性質なので本当はもう少し説明と証明を付けたいのですが、また次回(があれば)そこで書きます。冒頭で紹介した定理の証明方法もこのロジックが使われています。
最後にハウスドルフ空間の定義をします。
$X$を位相空間とする。相異なる任意の2点$a, b \in X$に対し、
$$
U(a) \cap U(b) = \emptyset
$$
となるような$a$の開近傍$U(a)$と$b$の開近傍$U(b)$がとれるとき$X$をハウスドルフ空間(Hausdorff space)という。
つまりハウスドルフ空間とは$X$の任意の相異なる2点が、共通部分を持たない開集合で分離できるということです。ハウスドルフ性を仮定すると、ある意味"病的な"空間を考えなくていいことになります。距離が定義出来る空間はハウスドルフ空間になりますし、ハウスドルフ空間では点列が収束するとすれば、その収束先は唯一に定まることも分かりますが、ここでは本筋から逸れるのでこの辺にしておきます。
ではここで冒頭の定理
$X$をハウスドルフ空間とし$S$を$X$のコンパクト集合とする。このとき$S$は閉集合となる。
を示したいと思います。$S$が閉集合であることを示したいので、その補集合である$S^c$が開集合であることを示せばよいことになります。そのためには任意の$S^c$の点$x$が$S^c$の内点であることを言えばよいですね。ではやっていきましょう。
任意に$x \in S^c$をとる。また任意の$y \in S$に対し$x \ne y$であり、かつ$X$はハウスドルフ空間空間なので
$$
U_y(x) \cap V_x(y) = \emptyset
$$
となるような$x$の開近傍$U_y(x)$と$y$の開近傍$V_x(y)$がとれる。このとき
$$
S \subset \displaystyle \bigcup_{y \in S}V_x(y)
$$
が成り立つ。よって$\{ V_x(y)\}_{ y \in S}$は$S$の開被覆であることがわかる。ここで$S$はコンパクト集合なので有限個の元$y_1, y_2, \dots, y_n \in S$によって
$$
S \subset \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}V_x(y_i)
$$
とできる。また
$$
U = \displaystyle \bigcap_{i = 1}^{n}U_{y_i}(x)
$$
とすると、開集合の定義にある3条件の2.より$U$は$X$の開集合。また各$U_{y_i}(x)$は$x$を含む開集合なので$x \in U$となる。さらに各$i$に対して$U_{y_i}(x) \cap V_{x}(y_i) = \emptyset$なので、
$$
U_{y_i}(x) \cap \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}V_{x}(y_i) = \emptyset
$$
となる。よって
$$
U \cap S \subset U \cap \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}V_{x}(y_i) \subset U_{y_i}(x) \cap \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}V_{x}(y_i) = \emptyset
$$
となり$U \cap S$は空集合で、
$$
x \in U \subset S^c
$$
が言えた。つまり任意の$S^c$の元は$S^c$の内点であることがわかり、$S^c$は開集合($S$が閉集合)となる。
いやーまとめるのって疲れますね…。教科書書く人とか授業をする大学の先生たちの大変さがわかりました…笑 今回証明した定理と前回の定理は定期テストとかで
ハウスドルフのコンパクトはクローズド、コンパクトのクローズドはコンパクト
という雰囲気で使ってました笑
覚え方、というとあんまり良い響きではないですがまぁそんな感じです。
書いてると疲れてきましたが、明日発表するゼミのまとめをしなきゃいけないので本業に取り掛かります。
あ、論文の投稿もしなきゃいけなかった。。頑張ります。。
と、いうことで。こんなくだらない最後の文章まで読んで頂きありがとうございました笑 コメントや誤植の指摘などお待ちしております。良いねだけでもめっちゃ嬉しいです!
では、また!('-'*)