今回は、複素解析に出てくる一致の定理と呼ばれる定理を紹介します。これは、二つの正則関数がある点の周りで一致していれば、領域全体で一致してしまうということを主張する定理です。
正則関数に対してその定義域を自然に拡張する解析接続と呼ばれる操作があります。一致の定理は解析接続の一意性を保証してくれる定理です。
複素数の意味で微分可能な関数のことを正則関数と呼びます:
また、任意の点でテイラー展開が可能な関数を解析関数と呼びます:
が成り立つことをいう。
複素関数の正則性と解析性は同値であることが知られています。
今回は正則関数に対する命題として一致の定理を述べますが、解析関数に対する性質を用いて一致の定理を証明します。最も重要なのは次の定理です。
こちらの定理の証明に関しては、前回の記事 複素解析:解析関数の零点の離散性 をご覧ください。
それでは、一致の定理を見てみましょう。
をみたすとする。このとき、任意の
2つの正則関数
領域
「点列
参考:
Weierstrass theorem - Encyclopedia of Mathematics
(英語)
それでは、一致の定理の証明を見ていきましょう。
2つの関数の差を考えると、解析関数の零点の離散性から差が恒等的に0になるという証明でした。零点の離散性を示すのは少し大変でしたが、それさえ示せてしまえば比較的簡単ですね。
一致の定理の系として、次のようなものが挙げられます:
同じ定義域の正則関数が2つあったとき、「ある開集合上で一致すれば全体で一致」「ある曲線上で一致すれば全体で一致」ということがわかります。一部分で等しいことをチェックすれば全体で等しいことが分かってしまうというのが一致の定理の強力なところです。
の定義域を
が正則な拡張になっています。(収束半径が
一致の定理から、
このように、一致の定理を用いることで正則関数(解析関数)の定義域を「自然に」広げることができます。この操作を解析接続と呼んでいます。
正則関数がどのように解析接続されるか、あるいはもうこれ以上解析接続できないかといったことを調べるのは複素解析における興味深い問題の一つです。
次回は解析接続についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。それではまた!