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大学数学基礎解説
文献あり

群作用の基本事項

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$$\newcommand{Ad}[0]{\operatorname{Ad}} \newcommand{alg}[0]{{\rm{alg}}} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{calF}[0]{\mathcal{F}} \newcommand{Fix}[0]{\operatorname{Fix}} \newcommand{fraS}[0]{\mathfrak{S}} \newcommand{GL}[0]{\operatorname{GL}} \newcommand{Hom}[0]{\operatorname{Hom}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{lam}[0]{\lambda} \newcommand{Lam}[0]{\Lambda} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{O}[0]{\mathcal{O}} \newcommand{oot}[0]{\Lightarrow} \newcommand{Orb}[0]{\operatorname{Orb}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Stab}[0]{\operatorname{Stab}} \newcommand{too}[0]{\Rightarrow} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

群作用の定義

この記事では左作用について考えることにする.

集合$X$に対して,$\mathfrak{S}(X)$$X$から$X$への全単射全体とする.$\mathfrak{S}(X)$は合成に関して群となり,これを$X$上の置換群(permutation group)という.

$\mathfrak{S}(\{1,\cdots,n\})=\mathfrak{S}_n$($n$次対称群)である.

$X$を集合,$\mathfrak{S}(X)$$X$上の置換群,$G$を群とする.

群準同型$\rho:G\to\mathfrak{S}(X)$が与えられたとき,$G$$X$作用する(act)といい$G\curvearrowright X$とかく.このとき,

$$a_\rho:G\times X\to X,\ (g,x)\mapsto\rho(g)(x)$$

$G$$X$への作用(action),$\rho$$G$置換表現(permutation representation)という.また$G$変換群(transformation group),$X$$G$空間($G$-space)という.

$x\in X,g\in G$に対し,$\rho$を省略して$\rho(g)(x)$$gx$と表すことが多い.

$G\curvearrowright X$とする.$x\in X$に対し,

  • $$\Orb_G(x):=\{gx\in X\mid g\in G\}$$
    $x$$G$軌道($G$-orbit)という.$Gx$ともかく.

  • $$\Stab_G(x):=\{g\in G\mid gx=x\}\le G$$
    $x$固定化部分群(stabilizer)やisotoropy群という.$G_x$$I_G(x)$ともかく.

\begin{align} x\in X^G &\Leftrightarrow\forall g\in G,gx=x\\ &\Leftrightarrow\Orb_G(x)=\{x\}\\ &\Leftrightarrow\Stab_G(x)=G \end{align}

$G\curvearrowright X$とする.$g\in G$に対して,

  • $$\Fix(g):=\{x\in X\mid gx=x\}$$
    $g$による固定点集合(fixed point set)という.$X^g$ともかく.

  • $$X^G=\bigcap_{g\in G}\Fix(g)$$
    固定点集合といい,その元を固定点(fixed point)という.

作用のクラス

  • $\exists x\in X,\Orb_G(x)=X$となるとき,$G\curvearrowright X$推移的(transitive)であるという.

  • $\forall x\in X,\Stab_G(x)=\{1\}$となるとき,$G\curvearrowright X$自由(free)であるという.

  • $G\curvearrowright X$が推移的かつ自由であるとき正則(regular)であるという.

  • $\rho$が単射のとき,$G\curvearrowright X$忠実(faithful)であるという.

$\rho$による作用$G\curvearrowright X$に関して,
$G\curvearrowright X$が推移的$\Leftrightarrow\forall x,y\in X,\exists g\in G,y=gx$
$G\curvearrowright X$が正則$\Leftrightarrow\forall x,y\in X,\exists! g\in G,y=gx$
$G\curvearrowright X$が忠実$\Leftrightarrow(\rho(g)=\id_X \too g=1)$

$\rho$による作用$G\curvearrowright X$に関して,
$$\Ker{\rho}=\bigcap_{x\in X}\Stab_G(x)$$

\begin{align} \Ker{\rho}&=\{g\in G\mid \rho(g)=\id_X\}\\ &=\{g\in G\mid \forall x\in X,\rho(g)(x)=x\}\\ &=\{g\in G\mid \forall x\in X,g\in\Stab_G(x)\}\\ &=\bigcap_{x\in X}\Stab_G(x) \end{align}

作用が自由なら忠実である.

$\rho$による作用$G\curvearrowright X$が自由だとすると,
$$\Ker{\rho}=\bigcap_{x\in X}\Stab_G(x)=\bigcap_{x\in X}\{1\}=\{1\}$$

証明からわかるように自由は忠実よりはるかに強い条件である.

自由作用の固定点集合

作用$G\curvearrowright X$が自由だとすると,$g\in G$に対し,
$$\Fix(g)=\{x\in X\mid gx=x\}= \begin{cases} X & \text{if $g=1$} \\ \emptyset & \text{if $g\ne 1$} \end{cases}$$

$$X^G=\bigcap_{g\in G}\Fix(g)= \begin{cases} X & \text{if $G=\{1\}$} \\ \emptyset & \text{if $G\ne\{1\}$} \end{cases} $$

重要な定理

$G\curvearrowright X$とする.$x,y\in X$に対し,
$$x\sim y\ :\Leftrightarrow\ \exists g\in G,y=gx$$
と定めると,これは同値関係であり,

$X/G:=X/{\sim}$$X$$G$による軌道空間{orbit space}という.$G$軌道は軌道空間の元である.よって$\sim$の完全代表系$I\subset X$を用いて,
$$X=\bigsqcup_{x\in I}\Orb_G(x)$$
と直和分解でき,これを$X$軌道分解という.

\begin{align} x\sim y\ &:\Leftrightarrow\ \exists g\in G,y=gx\\ &\Leftrightarrow\ y\in\Orb_G(x)\\ &\Leftrightarrow\ \Orb_G(x)=\Orb_G(y)\\ &\Leftrightarrow\ \Orb_G(x)\cap\Orb_G(y)\ne\emptyset \end{align}

Orbit-stabilizer theorem

$G\curvearrowright X$とする.$x\in X$に対し,
$$G/\Stab_G(x)\to\Orb_G(x),\ g \Stab_G(x)\mapsto gx$$
はwell-definedな全単射である.特に,
$$(G:\Stab_G(x))=|G|/|\Stab_G(x)|=|\Orb_G(x)|$$

一般に$\Stab_G(x)\ntrianglelefteq G$なので$G/\Stab_G(x)$は剰余群ではない.

Burnsideの補題

$G$を有限群とし,$G\curvearrowright X$とすると,
$$|X/G|=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}|\Fix(g)|$$

$g$に対する固定点集合の大きさの平均が軌道空間の大きさに一致することを示している.実用的には例えば首飾りの塗分けについて二面体群の作用を考えることでその組合せの総数を求めることができたりする.

作用の例

左移動作用

左移動作用

$G$を群とする.$L:G\to\mathfrak{S}(G),g\mapsto L_g$
$$L_g(h)=gh$$
で定めると,$L$によって$G\curvearrowright G$.この作用を$G$上の左移動作用という.

$h\in G$に対し,
$$\Orb_G(h)=\{gh\mid g\in G\}=G$$
より$L$は推移的である.また,
$$\Stab_G(h)=\{g\in G\mid gh=h\}=\{1\}$$
より$L$は自由でもあるから正則である.特に忠実であることから次が従う.

Cayleyの定理

任意の群はある対称群に埋込み可能,すなわちある対称群の部分群に同型である.

$L_g\in\mathfrak{S}(G)$は準同型でない.実際,$g\ne1$なら$1$$1$に移らない.

共軛作用

共軛作用

$G$を群とする.$\Ad:G\to\mathfrak{S}(G),g\mapsto\Ad_g$
$$\Ad_g(h)=g^{-1}hg$$
で定めると,$\Ad$によって$G\curvearrowright G$.この作用を$G$上の共軛作用(conjugation)という.$h\in G$に対し,
$$h^G:=\Orb_G(h)=\{g^{-1}hg\mid g\in G\}$$
$h$共役類(conjugacy class)という.

この作用について考察する.$h,g\in G$に対し,
$$\Stab_G(h)=\{g\in G\mid g^{-1}hg=h\}=C_G(h)$$
$$\Fix_G(g)=\{h\in G\mid g^{-1}hg=h\}=C_G(g)$$
である.$C_G(h)$$h$中心化群(centralizer)である.
また固定点集合は
$$G^G=\bigcap_{g\in G}C_G(g)=\{h\in G\mid \forall g\in G,g^{-1}hg=h\}=Z(G)$$
である.$Z(G)$$G$中心(center)である.
Orbit-Stabilizer theoremから次が成り立つ.

共軛類の大きさは中心化群の指数

$$|h^G|=(G:C_G(h))$$

ここで$G$が有限群のとき,軌道分解
$$G=\bigsqcup_{i\in I}h_i^G$$
によって次を得る.

類等式

$$\abs{G}=\sum_{i\in I}|h_i^G|=\sum_{i\in I}(G:C_G(h_i))$$
この式を類等式(class formula)という.

\begin{align} |h^G|=1&\Leftrightarrow h^G=\{h\}\Leftrightarrow h\in Z(G) \end{align}

に注意すると,
$$\abs{G}=|Z(G)|+\sum_{h_i\notin Z(G)}(G:C_G(h_i))$$
とかける.

  • $$\Ker{\Ad}=\bigcap_{g\in G}C_G(g)=Z(G)$$
    より,$\Ad$が忠実$\ \Leftrightarrow\ Z(G)=\{1\}$
  • $G\ne\{1\}$なら$\Orb_G(1)=\{1\}$より推移的でない.
  • $G\ne\{1\}$なら$\Stab_G(1)=G$より自由でない.

$\Ad_g:G\to G$は同型であり,$\Ad:G\to\Aut(G)$とできる.

部分群集合への共軛作用

部分群集合への共軛作用

$G$を群,$H\le G$$X:=\{P\mid P\le G\}$とする.
$\Ad:H\to\mathfrak{S}(X),\ g\mapsto\Ad_g$
$$\Ad_g(P)=g^{-1}Pg$$
で定めると,$\Ad$によって$H\curvearrowright X$
$$P^H:=\Orb_H(P)=\{g^{-1}Pg\mid g\in H\}$$
の元を$P$$H$に関する共軛部分群という.

$$\Stab_H(P)=\{g\in H\mid g^{-1}Pg=P\}=H\cap N(P)$$
である.但し,
$$N(P):=\{g\in G\mid g^{-1}Pg=P\}$$
$P$正規化群(normalizer)である.

Orbit-Stabilizer theoremから次が従う.

共軛部分群の数は正規化群の指数

$$|P^H|=(H:H\cap N(P))$$
特に,$$|P^G|=(G:N(G))$$

$H=G$のときの固定点集合は
$$G^G=\bigcap_{g\in G}\{P\le G\mid g^{-1}Pg=P\}=\{P\mid P\trianglelefteq G\}$$

剰余類集合への作用

$G$を群,$H\le G$とする.$\rho\colon G\to \mathfrak{S}(G/H)$
$$\rho(g)\colon G/H\to G/H,\ kH\mapsto (gk)H$$
で定めると,$G\curvearrowright G/H$

$$\Orb_G(H)=\{gH\mid g\in G\}=G/H$$
よりこの作用は推移的である.また$k\in G$に対し,
\begin{align} \Stab_G(kH) &=\{g\in G\mid (gk)H=kH\}\\ &=\{g\in G\mid k^{-1}gk\in H\}\\ &=\{g\in G\mid g\in kHk^{-1}\}\\ &=kHk^{-1} \end{align}

線型表現

$K$を体,$V$$K$線形空間とする.$\GL(V)$$V$上の正則線型変換全体とすると$\GL(V)\le\mathfrak{S}(V)$である.そこで,
$$\iota\colon \GL(V)\to \mathfrak{S}(V)$$
を包含写像とすると$\iota$によって$\GL(V)\curvearrowright V$

線型表現

$G$を群とするとき,準同型
$$\rho\colon G\to\GL(V)$$
が与えられたとき,$(V,\rho)$$G$表現(representation)という.当然$G$の表現があれば$G$$V$に作用する.

スカラ倍作用

係数体$K$を加法群とみて$G=K$とし,
$$\rho(k)\colon V\to V,v\mapsto kv$$
で定めると$\rho$によって$K\curvearrowright V$.これはスカラ倍による作用である.

一般線型群の作用

$V=\R^n,G=\GL_{n}(\R)$とすれば,表現行列と線型変換の対応
$$\rho\colon \GL_{n}(\R)\to \GL(\R^n)$$
によって$\GL_{n}(\R) \curvearrowright \R^n$

同変写像

$X,Y$を集合,$G$を群とし,$G\curvearrowright X,Y$とする.このとき写像$f\colon X\to Y$
$$\forall g\in G,\forall x\in X,\;f(gx)=gf(x) $$
を充たすとき,$f$$G$-同変写像($G$-equivariant map)であるという.

$G\curvearrowright X,Y$の置換表現をそれぞれ$\rho_1,\rho_2$とすると,$f$$G$-同変である条件は,
$$\forall g\in G,\;f\circ\rho_1(g)=\rho_2(g)\circ f $$
と表せる.

$G\curvearrowright X,Y$とする.このとき$G$-同変写像$f\colon X\to Y$は写像
$$\overline{f}\colon X/G\to Y/G,\;\Orb_G(x)\mapsto \Orb_G(f(x))$$
を誘導する.

$\overline{f}$のwell-definednessを示す.
$\Orb_G(x)=\Orb_G(y)$とすると,$\exists g\in G,y=gx$である.このとき$f(y)=f(gx)=gf(x)$より,$\Orb_G(f(x))=\Orb_G(f(y))$を得る.

続き

群作用の定義や周辺の概念を圏論的に見直す こちらの記事 に続きます.

参考文献

[1]
佐藤隆夫, 基本群と被覆空間, 裳華房, 2025
投稿日:20251215
更新日:9日前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

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投稿者

基本的に教科書に書いてるような基礎的な内容をまとめたりすることが多いかと思います.誤りがあった場合は教えて頂けると助かります.

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