この記事は前回の記事の続論です。
前回: https://mathlog.info/articles/606
前回の記事で考えていた問題の続きとして,以下の問題を整数論から眺めてみます。
$f(x)=x^3-3x+1$,$g(x)=x^2-2$とし,方程式$f(x)=0$について考える。このとき,以下のことを示せ。
⑴ $f(x)=0$は絶対値が$2$より小さい$3$つの相異なる実数解を持つ。
⑵ $\alpha$が$f(x)=0$の解ならば,$g(\alpha)$も$f(x)=0$の解である。
⑶ $f(x)=0$の解を小さい順に$\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3$とすれば,$$ g(\alpha_1)=\alpha_3,\quad g(\alpha_2)=\alpha_1,\quad g(\alpha_3)=\alpha_2$$
となる。
今回考えている$f(T)\in \mathbb Q[T]$の最小分解体を$L$としますと,この$L$は単拡大であることが分かっていました。以後,$$
f(T)=(T-\alpha)(T-\beta)(T-\gamma)
$$
と因数分解されるとします。(つまり$L=\Q(\alpha)=\Q(\beta)=\Q(\gamma)$です。)
さらに,関係式として
$$
\begin{cases}
\beta=\alpha^2-2\\
\gamma=\beta^2-2=-\alpha^2-\alpha+2
\end{cases}
$$
が成立しているとします。(詳しくは
前回の記事
を参照ください。)
知られている事実を使った事実の羅列となっています。証明や計算を入力する気力が起きなかっただけです。お許しください。
まずは$L$の整数底($L$の整数環$\O_L$の基底)を具体的に求めます。$f(T)$は$3$次式でしたので,$L$の整数底は$3$つの元から構成できます。
$L$のイデアル$\p=(1+\alpha)$を考えます。この$\p$については$$
\p=(1+\beta)=(1+\gamma)
$$
であることがすぐに分かります。特に$\p$は素イデアルで,$$
f(1)=3=-(1+\alpha)(1+\beta)(1+\gamma)
$$
ですので,$(3)=\p^3$です。
$\p$の分岐指数は$2$である。
$$
\begin{align}
(1+\alpha)-(1+\beta)&=\alpha-\beta\\&=\alpha-(2-\alpha^2)\\
&=-(1+\alpha)(-2+\alpha)
\end{align}
$$
である。ここでイデアル$(-2+\alpha)$について
$$
-2+\alpha=-3+(1+\alpha)
$$
が成り立つことから,$(-2+\alpha)$は$\p$の“きっかり”$1$乗で割れる。すなわち,$(1+\alpha)-(1+\beta)$は$\p$の“きっかり”$2$乗で割れ,$\p$の指数は$2$である。
ということは,拡大$L/\Q$の導手$\mathfrak f$は$\mathfrak f=3^2$であることが分かり,導手が分かったので,$L/\mathbb Q$の判別式$D$については,$$
D=\mathfrak f^2=3^4
$$
であることがわかります。この$81$という数字は,どこかで見た気がしますね。。。そうです,
前回の記事
で考えた$\delta^2$と一致します。特に,
$$
\begin{vmatrix}
1&\alpha&\alpha^2\\
1&\beta&\beta^2\\
1&\gamma&\gamma^2
\end{vmatrix}
=(\alpha-\beta)^2(\beta-\gamma)^2(\gamma-\alpha)=\delta^2=D
$$
ですので,$\suuretu{1,\alpha,\alpha^2}$が$L$の整数底になっていることが分かりました。特に$\alpha^2=\beta+2$であることから,$\suuretu{1,\alpha,\beta}$も$L$の整数底です。
次に,$L$の単数を求めてみたいです。次が成り立つことが分かります。
これは,一般化されたものとして,整数論の本に載っている事実(例えば「代数的整数論(高木)」とか)を具体的に計算したものです。事実を中心とした羅列となっています。申し訳ありません。。。
$3$次のアーベル拡大$L/\mathbb Q$について,$D$を$L$の判別式,$h$を$L$の類数,$N(A)$を,イデアル$A$の$L$におけるノルムととする。デデキント・ゼータ関数$$
\zeta_L(s)=\sum_{A}\bunsuu{1}{N(A)^s}
$$
を用いて,次が成り立つ。$$
\bunsuu{4Rh}{\sqrt D}=\lim_{s\to1}(s-1)\zeta_L(s)
$$
この定理を用いることで,単数基準$R$を求めたいのです。
今回の場合ですと,$D=81$です。また,類数$h$については$h=1$となることが計算できます(略)。従って,$$
R=\bunsuu49\lim_{s\to1}(s-1)\zeta_L(s)
$$
だと言っています。
実はこの$R$は,$$ -\begin{vmatrix} \log|\alpha|& \log|\beta|\\ \log|\beta|& \log|\gamma| \end{vmatrix} $$に等しいことが,長い計算の果てに分かります(ディリクレの単数定理を考えたように,$3$次の体でも頑張ります)。これを以て,次の定理が成り立つのです。
$L$上の単数$\rho$は,$\rho=\pm\alpha^n\beta^m$($n,m$は整数)の形に書くことが出来る。
事実の羅列になってしまい申し訳ありません。(単純に,紙で計算したものをタイポするのが辛くなったためです。)にゃーん。。。
というか,途中から大学入試の問題と言うより,拡大$L$の考察になっているじゃあないか。