はじめに
本記事は Ono [O] の理論の拡張として, 2-colored rooted tree に付随する 進多重ゼータ値を構成し, Seki [S] で証明された 進シャッフル関係式の別証明を与える. なお, 本記事の内容は Ono-Seki-Yamamoto [OSY] で本質的に知られている.
Review on the finite multiple zeta values
正整数 に対し 代数
を考え, 離散位相を導入する. ここで は素数全体を渡る. このとき に対し を取る自然な写像 により射影極限が定まり, 極限としての位相を備えたこれを と書く. 自然な写像 , による の像を と書く. とくに を infinitely large prime という.
正整数の組 を index と呼ぶ. このとき multiple harmonic sum が
で定まり, これを用いて 進多重ゼータ値 が と定義される. 自然な射影 による の像を と書く. に関する結果については [R], [S] を参照. また, 本サイト (Mathlog) 内では [G] で の双対性が示されている.
代数 上の双線型な積 を次の規則で定める:
ここで , である. の部分代数 と ( を含む) index の 係数形式的線型和の集合 の間には, 対応
を 線型に延長することで全単射が構成される. これを と書く. また, この対応を通して index , に対し と書く. これによって, 次の定理が成り立つ.
進シャッフル関係式
任意の index , に対し
が成り立つ. ここで は の元に対し 線型に拡張しており, index と非負整数の組 に対し
とおいた.
とくに, この定理の両辺で をとり, 次を得る:
Ono [O] では, 2-colored rooted tree を用いて定理 2 の別証明を与えている.
2-colored rooted tree
2-colored rooted tree
以下の要件を満たす組 を 2-colored rooted tree という.
- は頂点の集合を , 辺の集合を とした tree である.
- は の元である (root と呼ぶ).
- は terminal をすべて含む の部分集合である.
以後 と書く. また, 辺 が頂点 を繋いでいるとき と書く.
2-colored rooted tree があるとき, 各頂点 に対し
とおく. ここで辺 に対し であり, は頂点 , の間の path である. このとき に付随した 進多重ゼータ値を
で定める. このとき次の命題が成り立つ.
2-colored rooted tree とその上の index であって, 頂点 が存在し かつ を満たすものを考える. このとき , とおくと が成り立つ.
2-colored rooted tree とその上の index であって, degree である の元が存在するものを考える. その頂点を と書き, に接続する辺をそれぞれ と書く (). このとき とおき,
によって 上の index を定めると が成り立つ.
証明はそれぞれ [O, Proposition 2.2], [O, Proposition 2.3] と全く同一である.
二つの 2-colored rooted tree であって, root のみが異なるもの , とその上の index を考える. このとき
が成り立つ. ここで は成分ごとの和であり,
とおいた.
のとき であり, そうでないとき であるから
が成り立つ. この事実と の定義および 進級数
を組み合わせることで命題を得る.
() を正整数とし,
によって 2-colored rooted tree を定める. また, この上のインデックス の成分は を除いてすべて正整数とする. このとき
とおくと
が成り立つ. ここで index と非負整数 に対し と書いた.
証明は [OSY, Theorem 3.8] と同様にして帰納法が適用できる. また, この事実より [OSY, Theorem 3.10] と同様にして定理 1 がわかる.
References
[G] ぐれぽん, Hoffmanの恒等式,
Mathlog 114
.
[O] M. Ono, Finite multiple zeta values associated with -colored rooted trees, J. Number Theory 181 (2017), 99–116;
arXiv 1609.09168
.
[OSY] M. Ono, S. Seki and S. Yamamoto, Truncated -adic symmetric multiple zeta values and double shuffle relations,
arXiv 2009.04112
.
[R] J. Rosen, Asymptotic relations for truncated multiple zeta values, J. London Math. Soc. (2) 91 (2015), 554-572;
arXiv 1309.0908
.
[S] S. Seki, The -adic duality for the finite star-multiple polylogarithms, Tohoku Math. J. (2) 71 (2019), 111-122;
arXiv 1605.06739
.