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べき零群の基本性質(Normalizers grow)

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はじめに

こんにちは、MakkyoExistsです。前回の記事からだいぶ間が空いてしまいました。自律神経失調症による不眠症と片頭痛と眩暈と逆流性食道炎がひどくてまともに勉強が進まない毎日です(こうして文字に起こしてみるとだいぶ体調悪いな……笑)
まぁ自分の体なのでしょうがないですね。頑張ります。

本日はべき零群の性質として有名な以下の定理

Normalizers grow

Gをべき零群、Hを真部分群とすると、その正規化群NG(H)Hを真に含む。つまり
HNG(H)
が成り立つ。

を証明したいと思います。正規化群は以前の記事( https://mathlog.info/articles/554 )でも出てきた通りですが
NG(H):={gG|g1Hg=H}
という定義です。では見ていきましょう。

基本の定義

まずはべき零群とはなんぞやというところから定義したいと思います。既知の方は飛ばしてください。

中心列、べき零群

Gを有限群とし、{Ni}i=0rGの正規部分群の族とする。これが
1=N0N1Nr=G
という状況になっていて、さらに任意のiに対して
Ni/Ni1Z(G/Ni1)
をみたしているとする。このとき{Ni}i=0rG中心列(central series)という。一般に群が与えられたときそれが中心列を持つとは限らない。中心列を持つ群をべき零群(nilpotent group)という。

べき零群はそれ単体でも研究対象として十分広いクラスを持ちます。大事な事実がいくつかあってまずべき零群の部分群はまたべき零群になるということです。これは大元の群の中心列を部分群に制限することで示せます。またべき零群の剰余群もべき零群になります。この2つの事実はとても基本です。(リクエストがあれば証明も付けますがググれば色々出てくると思うのでハショります。)

証明

では冒頭の定理

Normalizers grow

Gをべき零群、Hを真部分群とすると、その正規化群NG(H)Hを真に含む。つまり
HNG(H)
が成り立つ。

を証明します。この証明には対応定理とよばれる、剰余群の部分群と大元の群の割ったところを含む部分群が対応しているという事実を使いますので初学者には少し誤魔化されているように感じるところがあるかもしれません。この辺も分かりづらいと感じられたら別記事を書きますので是非コメント下さい。

HGの真部分群とする。Gはべき零群なので中心列を持ち、その中心列を{Ni}i=0rとおく。中心列の定義からN0=1でありNr=Gである。Hは真部分群なので
N0=1H<G
である。ここでNkを中心列の項で、Hに含まれる最大のもの、つまり
NkH,Nk+1H
となるものとする。中心列の定義からNk+1/NkZ(G/Nk)であり、中心はどの部分群も正規化するのでZ(G/Nk)NG/Nk(H/Nk)となる。まとめると
Nk+1/NkZ(G/Nk)NG/Nk(H/Nk)=NG(H)/Nk
となる。よってNk+1NG(H)が導かれる。
(厳密にいうとここで対応定理っぽいことを言及しなければならない。)
以上より
Nk+1H,Nk+1NG(H)
がいえたのでH<NG(H)がいえた。

おわりに

どうだったでしょうか? 剰余群をとる操作を何回かするので初学者にとっては目が疲れる作業だったかもしれないですね。

ちなみに、このNormalizers growは逆も言えて、今日やったこととまとめると

Gを群とすると以下は同値である。

  1. Gはべき零群
  2. Gの任意の真部分群HについてH<NG(H)が成り立つ。

が言えます。有限べき零群には同値な条件がいくつかあって、有名なものでいうと有限べき零群はシロー群全部の直積になるというものがあります。これは有限べき零群の構造定理とも言われますね。また機会があったらこの辺も書きたいと思います。

今回も最後まで読んで頂いてありがとうございました。誤字脱字誤り箇所など見つけたら教えて下さい。また読んでみた感想もお待ちしております。

あー疲れた。不眠症ヤバいですがとりあえず横になっとこうと思います。では、また!('-'*)

投稿日:20201119
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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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