この記事は前編と後編に分かれます。
後半の目次とURL:【 https://mathlog.info/articles/908 】
良く知られた定理として,次があります。
$p$を奇素数とする。ある整数$x,y$が存在して,$$
p=x^2+y^2
$$
と表されるための$p$に関する必要十分条件は,$p$を$4$で割った余りが$1$となることである。
フェルマーは上記のことを提議し,最終的にはオイラーによって解かれました。また,以下の定理も成り立ちます。
$p$を奇素数とするとき,
$\exists x,y\in\mathbb Z,\; p=x^2+2y^2\iff p\equiv 1,3\pmod8$,
$\exists x,y\in\mathbb Z,\; p=x^2+3y^2\iff p\equiv 1,7\pmod{12}.$
これらは平方数の和で考えるから,初等的(古典的)な整数論で何とかなります。(もちろん,代数的整数論を持ち込んで解くことも面白いです。)例えばそれらの証明は Wikipedia を参照してください。
では一般に$m$を正の整数として,$\bm{x^2-my^2}$で表される素数について,上記のことは言えないだろうか?ということを考えてみます。
特に今回は$m=15$の場合の考察をします。すなわち以下の問題を考えます。
$p$を(正の)素数とする。ある整数$x,y\in\mathbb Z$が存在して$$
p=x^2-15y^2
$$
と表せるための必要十分条件は何か?また,$$
-p=x^2-15y^2
$$
と表せるための必要十分条件は何か?
前編では実際にどんな素数が$x^2-15y^2$と表すことが出来るのかを計算機に求めさせたり予想したりします。
後編では代数的整数論の諸事実を提示し,それをこの問題にうまく対応させ,解決していきます。
とりあえず$p<200$の時に,$x^2-15y^2=\pm p$となる組があるかどうかをPythonを用いて探してもらいます。すると以下の結果になりました。(結果のみ纏めます。)
$p<200$までの素数の数は$46$個でしたが,そのうちの$10$個がヒットしましたね。さて分析の時間です。こんな予想が立てられます。
$\pmod{60}$で考えれば規則が見えてくる??
この予想を元に,$2$つばかり具体例を考えてみましょう。
$60$で割ると$11$余る素数として,$\color{red}{\tt 20201231}$を取ってきました。なんと,$$
\bm{2428^2-15\cdot1319^2=-20201231}
$$
が成り立ちます。
$60$で割ると$1$余る素数として,$\color{red}{\tt 20210101}$を取ってきました。なんと,$$ \bm{6919^2-15\cdot1358^2=20210101} $$が成り立ちます。
こんなふざけた例でも予想が正しいならば,きっと先の予想は正しいのでしょう。しかし今やっているのはプログラミングではなく数学ですから,この予想を証明することに意味があります。後編にて本格的に考えます。いわゆる,二次体の整数論を用いた考察を行います。
とりあえずここまで見ていただきありがとうございます。
次回→ https://mathlog.info/articles/908
https://mathlog.info/articles/906 にて,似たような議論がなされていますね。そちらを見てみても面白いです。具体的な例も多く,さらに異なるアプローチから攻めています。