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x^2-15y^2で表される素数について【前編】

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$$\newcommand{bekutoru}[1]{\displaystyle\overrightarrow{\mbox{#1}\phantom{A}\hspace{-1em}}} \newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{bunsuu}[2]{\dfrac{\,#1\,}{\,#2\,}} \newcommand{Deg}[0]{^{\circ}} \newcommand{dsqrt}[1]{\displaystyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{foo}[1]{\ifnum#12\text{それは2だよ!}\else\text{それは2じゃないよ!}\fi} \newcommand{Gal}[0]{\mathop{\rm Gal}} \newcommand{gauss}[1]{\left[\mkern1mu {#1}\mkern1mu\right]} \newcommand{I}[0]{\mathfrak I} \newcommand{kaku}[1]{\angle\mbox{#1}} \newcommand{kumiawase}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{C}_{#2}}} \newcommand{mdot}[0]{\!\cdot\!} \newcommand{O}[0]{\mathcal O} \newcommand{rui}[1]{\left\langle#1\right\rangle} \newcommand{sankaku}[1]{\triangle \mbox{#1}} \newcommand{suuretu}[1]{\left\{#1\right\}} \newcommand{tsqrt}[1]{\textstyle\sqrt{\,#1\,}} \newcommand{zyunretu}[2]{\mathord{{}_{#1}\kern-.12em{}\text{P}_{#2}}} $$

この記事は前編と後編に分かれます。

後半の目次とURL:【 https://mathlog.info/articles/908

  • 二次体$\mathbb Q(\sqrt{15})$
  • 解決に向けて
  • 合成数ではどうなの?
  • まとめ(感想)
  • 参考文献

導入

良く知られた定理として,次があります。

フェルマーの二平方和定理

$p$を奇素数とする。ある整数$x,y$が存在して,$$ p=x^2+y^2 $$
と表されるための$p$に関する必要十分条件は,$p$$4$で割った余りが$1$となることである。

余白がないことで知られる

フェルマーは上記のことを提議し,最終的にはオイラーによって解かれました。また,以下の定理も成り立ちます。

定理1の重み付きver

$p$を奇素数とするとき,
$\exists x,y\in\mathbb Z,\; p=x^2+2y^2\iff p\equiv 1,3\pmod8$
$\exists x,y\in\mathbb Z,\; p=x^2+3y^2\iff p\equiv 1,7\pmod{12}.$

これらは平方数ので考えるから,初等的(古典的)な整数論で何とかなります。(もちろん,代数的整数論を持ち込んで解くことも面白いです。)例えばそれらの証明は Wikipedia を参照してください。

では一般に$m$を正の整数として,$\bm{x^2-my^2}$で表される素数について,上記のことは言えないだろうか?ということを考えてみます。

特に今回は$m=15$の場合の考察をします。すなわち以下の問題を考えます。

$x^2-15y^2$が素数になるとき

$p$を(正の)素数とする。ある整数$x,y\in\mathbb Z$が存在して$$ p=x^2-15y^2 $$
と表せるための必要十分条件は何か?また,$$ -p=x^2-15y^2 $$
と表せるための必要十分条件は何か?

前編では実際にどんな素数が$x^2-15y^2$と表すことが出来るのかを計算機に求めさせたり予想したりします。

後編では代数的整数論の諸事実を提示し,それをこの問題にうまく対応させ,解決していきます。

プログラミングで予想しよう

とりあえず$p<200$の時に,$x^2-15y^2=\pm p$となる組があるかどうかをPythonを用いて探してもらいます。すると以下の結果になりました。(結果のみ纏めます。)

  • $p=61$で,$14^2-15\cdot3^2=61$
  • $p=109$で,$22^2-15\cdot5^2=109$
  • $p=181$で,$14^2-15\cdot1^2=181$
    $\phantom{a}$
  • $p=11$で,$2^2-15\cdot1^2=-11$
  • $p=59$で,$1^2-15\cdot2^2=-59$
  • $p=71$で,$8^2-15\cdot3^2=-71$
  • $p=119$で,$4^2-15\cdot3^2=-119$
  • $p=131$で,$2^2-15\cdot3^2=-131$
  • $p=179$で,$14^2-15\cdot5^2=-119$
  • $p=191$で,$7^2-15\cdot4^2=-191$

$p<200$までの素数の数は$46$個でしたが,そのうちの$10$個がヒットしましたね。さて分析の時間です。こんな予想が立てられます。

$\bm{x^2-15y^2}$が素数になるための条件?

$\pmod{60}$で考えれば規則が見えてくる??

  • $p\equiv 1,49\pmod{60}$ならば,$x^2-15y^2=p$は整数解を持つ?
  • $p\equiv 11,59\pmod{60}$ならば,$x^2-15y^2=-p$は整数解を持つ?

この予想を元に,$2$つばかり具体例を考えてみましょう。

2020年12月31日は素数デー

$60$で割ると$11$余る素数として,$\color{red}{\tt 20201231}$を取ってきました。なんと,$$ \bm{2428^2-15\cdot1319^2=-20201231} $$
が成り立ちます。

2021年01月01日も素数デー

$60$で割ると$1$余る素数として,$\color{red}{\tt 20210101}$を取ってきました。なんと,$$ \bm{6919^2-15\cdot1358^2=20210101} $$が成り立ちます。

こんなふざけた例でも予想が正しいならば,きっと先の予想は正しいのでしょう。しかし今やっているのはプログラミングではなく数学ですから,この予想を証明することに意味があります。後編にて本格的に考えます。いわゆる,二次体の整数論を用いた考察を行います。

とりあえずここまで見ていただきありがとうございます。

次回→ https://mathlog.info/articles/908

追記

https://mathlog.info/articles/906 にて,似たような議論がなされていますね。そちらを見てみても面白いです。具体的な例も多く,さらに異なるアプローチから攻めています。

投稿日:20201122
OptHub AI Competition

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投稿者

ぱるち
ぱるち
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数学屋さんをしています。代数,数論系に興味があり,今は楕円曲線と戯れています。Mathlogは現実逃避用という噂もあります。@f_d00123

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