そりゃ非可換アルティン環上の加群がprj. coverを持つから明らかだろ!という声が聞こえますが、はいそうです。
つまり射影対象からのright min. morphismはprj. coverであってそりゃ有限次元多元環上くらいだったらright min. morphismは存在するからOKみたなことから一般に言えるはずです(例えば[ARS](『Representation Theory of Artin Algebras』)とかはそうやって証明してたはず)。
ならなんでこれを書いているかというと、 可換アルティン環は可換アルティン局所環の直積に同型であるという発想から自然に極小射影分解が作れるよねという小ネタです。というかこれはネタばらしなのでこの時点で「あ~なるほどね」と納得できる人は読む価値はないと思います。
ちょっとまともなことを言うと↓
有限次元多元環などの非可換アルティン環の表現論においては、射影被覆(projective cover)の存在から極小射影分解が取れることは広く知られているが、可換環特有の局所環の直積への分解という性質を用いれば、より自然かつ具体的に極小射影分解が構成できることを示すのがこの記事の目的です。↑quiverとか書けば結構具体的に書けるんじゃないですか?(かければね)
以下$R$を環とし$\mathrm{mod}R$を有限生成左$R$加群からなる圏、$\mathrm{proj}R\subset\mathrm{mod}R$を射影加群からなる部分圏とします.
一応、基礎的な定義だけしておきたいと思います.
$J(R)$を$R$のJacobson根基とする. $M\in\mathrm{mod}R$ 射影分解:
$$\dots \xrightarrow{d_2} P_1 \xrightarrow{d_1} P_0 \xrightarrow{\varepsilon} M \to 0\ (P_i\in\mathrm{proj}R)$$
が極小射影分解であるとは, 任意の$i \ge 1$に対して以下を満たすこと:
$$\operatorname{Im}(d_i) \subseteq J(R) P_{i-1} \quad (\operatorname{Ker}(\varepsilon) \subseteq J(R) P_0)$$
極小射影分解は一般の環で取れるとは限らないです(双対概念である極小移入分解は取れる).
$A$を可換ネーター局所環とすると, 任意の$M\in\mathrm{mod}A$に対して極小射影分解が存在する.
実際には極小自由分解が取れます。実はこの定理自体は可換性は必要ではないです。 証明はwell-knownでAuslander-Buchsbaumとか考えるときにやると思います(気が向いたらちゃんとやります)。非可換の場合も同じアイデアで証明できます(中山を使う構成)、落ち着いて考えると明らかで自由加群からの全射の$\mathrm{Ker}$が再び有限生成となってくれるので証明が回ります。
可換アルティン環は可換アルティン環局所環の有限直積に同型である.
$A$を可換アルティン環とする.
$X=\mathrm{Spec}A $をアフィンスキーム$(X,\mathcal{O}_X)$の基底位相空間とすると, $\{x\}\subset X$は閉集合($\because$ アルティン環のクルル次元は0). ここで$X$は有限集合であるから($\because $ アルティン環の極大イデアルは有限個), $\{x\}$は開かつ閉集合である.
よって$X$は以下のように開集合で分解される:
$$
X=\coprod_{x\in X}\{x\}
$$
ここでsheafの完全列を見ると:
$$0 \longrightarrow \mathcal{O}_X(X) \xrightarrow{\ \ \ \ } \prod_{x \in X} \mathcal{O}_X(\{x\}) \xrightarrow{\ \ \ \ } \prod_{x \neq y} \mathcal{O}_X(\{x\} \cap \{y\}) \cong 0$$
であるから:
$$A\cong \mathcal{O}_X(X) \cong \prod_{x \in X} \mathcal{O}_X(\{x\})\cong \prod_{x \in X} A_x$$
多元環の表現論畑的にはこういうのがある(この記事を書こうと思った動機の一つ)
スキーム論を認めれば比較的自明な性質のみから可換アルティン環の構造が分かるという話でした。
可換アルティン環である事と0次元可換ネーター環である事は同値である.
これも非可換な場合を言及しておくと、一般に右アルティン環は右ネーター環であったりする。逆は個人的にはAss取って証明するのが好きです。
今までの事から感覚的にそうやろ!って感じがするのですが、一応手を動かしておきます。
可換アルティン環の加群は極小射影分解が取れる.
$A$を可換アルティン環とする.
$M\in\mathrm{mod}A$として$X=\mathrm{Spec}A$とする. 定理2で得られた同型に$-\otimes M$を施すと(有限直積(直和)とテンソルは交換するから):
$$M\cong A\otimes M\cong \prod_{x \in X} A_x\otimes M\cong \prod_{x \in X}M_x \ (\cong \bigoplus_{x\in X}M_x)\ (\because|X|<\infty)$$
定理3より$A_x$は0次元可換ネーター局所環であるから定理1より任意の$x\in X$に対して:
$$\dots \xrightarrow{d_{2, x}} P_{1, x} \xrightarrow{d_{1, x}} P_{0, x} \xrightarrow{\varepsilon_x} M_x \to 0$$
が極小射影分解となる様に取れる. (つまり, $\operatorname{Im}(d_{j, x}) \subseteq \mathfrak{m}_x P_{j-1, x},\ \operatorname{Ker}(\varepsilon_x) \subseteq \mathfrak{m}_x P_{0, x}$)
ここで各次数$j \ge 0$について, 各局所成分の射影加群および微分射の直和をとると:
$$P_j := \bigoplus_{x \in X} P_{j, x}$$
$$d_j := \bigoplus_{x \in X} d_{j, x} : P_j \to P_{j-1}$$
$$\varepsilon := \bigoplus_{x \in X} \varepsilon_x : P_0 \to M$$
これにより, 完全列$P_\bullet \to M \to 0$が得られる, ここで!(直積の素イデアルってどうやって書けましたっけというやつ):
$$J(A) \cong \bigoplus_{x \in X} \mathfrak{m}_x$$
と書けることを思い出すと:
$$\operatorname{Im}(d_j) = \bigoplus_{x \in X} \operatorname{Im}(d_{j, x}) \subseteq \bigoplus_{x \in X} \mathfrak{m}_x P_{j-1, x} = J(A) P_{j-1}$$
であるからこれは極小射影分解になっている.
射影分解とかって計算してなんぼなきがするので、具体例を提示します。 折角スキーム論で証明したので(スキーム論を使っていると言えるのか?)多項式環で見てみようと思います(多分もっと本質的な例はありますが、計算がめんどくさいのでこれにします)。
Toy model
$k=\mathbb{C}$に対して, $A = k[x]/(x^2(x-1))$とする。
$\mathfrak{m}_1 = (x),\ \mathfrak{m}_2 = (x-1)$と定めるとヒルベルトの零点定理とかから$\mathrm{Spec}A=\{\mathfrak{m}_1,\mathfrak{m}_2\}$である.
中国剰余定理とかから:
$$A \cong k[x]/(x^2) \times k[x]/(x-1)(\cong A_{\mathfrak{m}_1}\times A_{\mathfrak{m}_2})$$
$M = k[x]/(x(x-1))\in \mathrm{mod}A$に対して:
$M_{\mathfrak{m}_1} \cong k[x]/(x(x-1)) \otimes_{A} A_{\mathfrak{m}_1} \cong k[x]/(x)$
$M_{\mathfrak{m}_2} \cong k[x]/(x(x-1)) \otimes_{A} A_{\mathfrak{m}_2} \cong k[x]/(x-1)$
射影分解すると:
$$\dots \xrightarrow{\times x} A_{\mathfrak{m}_1} \xrightarrow{\times x} A_{\mathfrak{m}_1} \xrightarrow{\pi_1} M_{\mathfrak{m}_1} \to 0$$
$$0 \to A_{\mathfrak{m}_2} \xrightarrow{\mathrm{id}} M_{\mathfrak{m}_2} \to 0$$
が得られる(実際に極小になっている).
故に$M$の極小射影分解:
$$\dots \xrightarrow{\times x} A_{\mathfrak{m}_1} \xrightarrow{\times x} A_{\mathfrak{m}_1} \xrightarrow{d_1} A \xrightarrow{\pi} M \to 0$$
が得られた.
つまり局所化して、成分ごとに最適な分解を作ってから足し合わせるという視点を持てば、$\mathfrak{m}_2$側の成分(この例だと体)はもう分解が終わっているから、$P_1$ 以降は$\mathfrak{m}_1$側の成分だけが生き残るんだなみたいな気持ちです。
射影分解の形を見るとこれFrobenius環ですね(そりゃフロベニウス環の直積はフロベニウス環でしょより)。