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現代数学解説
文献あり

mod 10のRogers-Ramanujan型恒等式

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今回はmod 10のRogers-Ramanujan型恒等式を示す. 以下の 両側Bailey対 に関する定理を用いる.

Berkovich-McCoy-Schilling(1996)

(αn,βn)aに関する両側Bailey対であるとき,
nZ(b,c;q)n(aq/b,aq/c;q)n(aqbc)nαn=(aq,aq/bc;q)(aq/b,aq/c;q)nZ(b,c;q)n(aqbc)nβn
が成り立つ.

特に, a=q,b=q,cとすると以下を得る.

(αn,βn)qに関する両側Bailey対であるとき,
nZq12n2+12nαn=(q2;q)(q;q)nZ(q;q)nq12n2+12nβn
が成り立つ.

また, b,cとすると以下を得る.

(αn,βn)aに関する両側Bailey対であるとき,
nZanqn2αn=(aq;q)nZanqn2βn
が成り立つ.

0nq32n2n2(q;q2)n(q;q)n=(q4,q6,q10;q10)(q;q)0nq32n2+32n(q;q2)n+1(q;q)n=(q2,q8,q10;q10)(q;q)

前の記事 において示した等式
kZ1aq4k1a(b,c;q2)kq2k2(aq2/b,aq2/c;q2)k(aq;q)n+2k(q;q)n2k(a2bc)k=(q2/a,aq2/bc,aq/b,aq/c;q2)(q,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n
において, b=a,a1とすると,
kZ(c;q2)kq2k2(q2/c;q2)k(q;q)n+2k(q;q)n2kck=(q/c;q2)n(q,q/c;q)n(q;q2)n
ここで, c0とすると,
kZ(1)kqk2+k(q;q)n+2k(q;q)n2k=q12n212n(q;q)n(q;q2)n
ここで, 系2を用いると,
(q;q)0nq32n212n(q;q)n(q;q2)n=nZ(1)nq5n2+n=(q4,q6,q10;q10)
となって1つ目の等式が得られる. 先ほどの等式
kZ1aq4k1a(b,c;q2)kq2k2(aq2/b,aq2/c;q2)k(aq;q)n+2k(q;q)n2k(a2bc)k=(q2/a,aq2/bc,aq/b,aq/c;q2)(q,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n
において, b=a,aq2とすると,
0k(1q4k+2)(c;q2)kq2k2(q4/c;q2)k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k(q2c)k=(q3/c;q2)n(q,q3/c;q)n(q3;q2)n
ここで, c0とすると,
0k(1q4k+2)(1)kqk2k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k=q12n212n(q;q)n(q3;q2)n
ここで, qn(1q4k+2)=q2k(1qn+2k+2)q2k(1qn2k)
0k((1)kqk2+k(q2;q)n+2k(q;q)n2k(1)kqk2+k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k1)=q12n2+12n(q;q)n(q3;q2)n
これは
kZ(1)kqk2+k(q2;q)n+2k(q;q)n2k=q12n2+12n(q;q)n(q3;q2)n
と書き表される. よって, これに系2を用いると,
(q;q)0nq32n2+32n(q;q)n(q;q2)n+1=nZ(1)nq5n2+3n=(q2,q8,q10;q10)
となって2つ目の等式が示される.

0n(q;q)nq12n2+n2(q;q2)n+1(q;q)n=(q;q)(q3,q7,q10;q10)(q;q)0n(q;q)nq12n2+32n(q;q2)n+1(q;q)n=(q;q)(q,q9,q10;q10)(q;q)

先ほどの等式
0k(1q4k+2)(c;q2)kq2k2(q4/c;q2)k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k(q2c)k=(q3/c;q2)n(q,q3/c;q)n(q3;q2)n
において, cとして,
0k(1q4k+2)(1)kq3k2+k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k=1(q;q)n(q3;q2)n
を得る. 1q4k+2=(1qn+2k+2)q4k+2(1qn2k)qn(1q4k+2)=q2k(1qn+2k+2)q2k(1qn2k)を用いると,
0k((1)kq3k2+k(q2;q)n+2k(q;q)n2k(1)kq3k2+5k+1(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k1)=1(q;q)n(q3;q2)n0k((1)kq3k2+3k(q2;q)n+2k(q;q)n2k(1)kq3k2+3k(q2;q)n+2k+1(q;q)n2k1)=qn(q;q)n(q3;q2)n
が得られる. これは
kZ(1)kq3k2+k(q2;q)n+2k(q;q)n2k=1(q;q)n(q3;q2)nkZ(1)kq3k2+3k(q2;q)n+2k(q;q)n2k=qn(q;q)n(q3;q2)n
と書き表される. よって, これらに系1を適用すると
(q;q)(q;q)0n(q;q)nq12n2+12n(q;q)n(q;q2)n+1=nZ(1)nq5n2+2n=(q3,q7,q10;q10)(q;q)(q;q)0n(q;q)nq12n2+32n(q;q)n(q;q2)n+1=nZ(1)nq5n2+4n=(q,q9,q10;q10)
となって示される.

参考文献

[1]
L. J. Slater, A new proof of Rogers's transformations of infinite series, Proc. London Math. Soc. (2), 1951, 460-475
[2]
L. J. Slater, Further identities of the Rogers-Ramanujan type., Proc. London Math. Soc. (2), 1952, 147-167
投稿日:15日前
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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