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現代数学解説
文献あり

Rogers, SlaterのBailey対3

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前回の記事 ではRogersの6ϕ5和公式から従うBailey対をいくつか与えた. 今回は Baileyの6ψ6和公式 から従う他のBailey対を与える. まず, Baileyの6ψ6和公式
kZ1aq2k1a(b,c,d,e;q)k(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e;q)k(a2qbcde)k=(q,aq,q/a,aq/bc,aq/bd,aq/be,aq/cd,aq/ce,aq/de;q)(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,q/b,q/c,q/d,q/e,a2q/bcde;q)
において, qq2,d=qn,e=q1nとすると,
kZ1aq4k1a(b,c;q2)k(qn;q)2k(aq2/b,aq2/c;q2)k(aqn+1;q)2k(a2q2n+1bc)k=(q2,aq2,q2/a,aq2/bc,aqn+2/b,aqn+1/b,aqn+2/c,aqn+1/c,aq2n+1;q2)(aq2/b,aq2/c,aqn+2,aqn+1,q2/b,q2/c,qn+2,qn+1,a2q2n+1/bc;q2)=(q2,aq2,q2/a,aq2/bc,aq2n+1;q2)(aqn+1/b,aqn+1/c;q)(aq2/b,aq2/c,q2/b,q2/c,a2q2n+1/bc;q2)(aqn+1,qn+1;q)=(q2,aq2,q2/a,aq2/bc,aq;q2)(aq/b,aq/c;q)(aq2/b,aq2/c,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(aq,q;q)(aq,q;q)n(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n=(q2/a,aq2/bc,aq/b,aq/c;q2)(q,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(aq,q;q)n(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n
つまり,
kZ1aq4k1a(b,c;q2)k(qn;q)2k(aq2/b,aq2/c;q2)k(aqn+1;q)2k(a2q2n+1bc)k=(q2/a,aq2/bc,aq/b,aq/c;q2)(q,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(aq,q;q)n(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n
を得る. これは
kZ1aq4k1a(b,c;q2)kq2k2(aq2/b,aq2/c;q2)k(aq;q)n+2k(q;q)n2k(a2bc)k=(q2/a,aq2/bc,aq/b,aq/c;q2)(q,q2/b,q2/c,a2q/bc;q2)(a2q/bc;q2)n(aq/b,aq/c;q)n(aq;q2)n
と書き換えられる. これを特殊化して, 前の記事で行ったように様々なBailey対として書き換えることができる. 例として, まずa=qとすると,
k=n2n2(1q4k+1)(b,c;q2)kq2k2+2k(q3/b,q3/c;q2)k(q;q)n+2k+1(q;q)n2k(1bc)k=(q3/bc;q2)n(q2/b,q2/c;q)n(q2;q2)n
を得る. ここで, b,c0とすると,
k=n2n2(1q4k+1)q2k(q;q)n+2k+1(q;q)n2k=(1)nqn(q2;q2)n
ここで, 1q4k+1=(1qn+2k+1)q4k+1(1qn2k)を用いて
k=n2n2(q2k(q;q)n+2k(q;q)n2kq2k+1(q;q)n+2k+1(q;q)n2k1)=(1)nqn(q2;q2)n
つまり,
1(q;q)n2+k=0n2(q2k+q2k(q;q)n+2k(q;q)n2kq2k+1+q2k1(q;q)n+2k+1(q;q)n2k1)=(1)nqn(q2;q2)n
を得る. よって, α0=1
α2n=q2n+q2n,n1α2n+1=q2n+1q2n1,n0βn=(1)nqn(q2;q2)n,n0
とすれば, これは1に関するBailey対になる. これは一例であり, 特殊化によって他にも様々なBailey対を得ることができる.

次に, Baileyの6ψ6和公式
kZ1aq2k1a(b,c,d,e;q)k(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e;q)k(a2qbcde)k=(q,aq,q/a,aq/bc,aq/bd,aq/be,aq/cd,aq/ce,aq/de;q)(aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,q/b,q/c,q/d,q/e,a2q/bcde;q)
において, qq4,b=qn,c=q1n,d=q2n,e=q3nとすると,
kZ(1aq8k)(qn;q)4kq4nk2ka2k(1a)(aqn+1;q)4k=(q4/a,a/q,a,aq;q4)(q,q2,q3,a2/q2;q4)(aq,q;q)n(a/q;q2)n(a;q)2n
つまり,
kZ(1aq8k)q8k24ka2k(1a)(aq;q)n+4k(q;q)n4k=(q4/a,a/q,a,aq;q4)(q,q2,q3,a2/q2;q4)(a/q;q2)n(a;q)2n
を得る. a=qとすると,
kZ(1q8k+1)q8k22k(q;q)n+4k+1(q;q)n4k=(q2;q2)n1(q;q)2n
となる. これも先ほどのようにBailey対として書き直すことによって, α0=1
α4n2=0,n>0α4n1=q8n22n,n>0α4n=q8n2(q2n+q2n),n>0α4n+1=q8n2+6n+1,n1βn=(q2;q2)n1(q;q)2n
とすると, これは1に関するBailey対になる.

Rogersの6ϕ5和公式もBaileyの6ψ6の特別な場合であったことを考えると, 基本的なBailey対の多くがBaileyの6ψ6和公式から導かれるということになる.

参考文献

[1]
L. J. Slater, A new proof of Rogers's transformations of infinite series, Proc. London Math. Soc. (2), 1951, 460-475
投稿日:21日前
更新日:20日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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