1
現代数学解説
文献あり

Rogers, SlaterのBailey対2

20
0

Rogersの6ϕ5和公式
0k1aq2k1a(a,b,c,d;q)k(q,aq/b,aq/c,aq/d;q)k(aqbcd)k=(aq,aq/bc,aq/bd,aq/cd;q)(aq/b,aq/c,aq/d,aq/bcd;q)
と表される公式である. 特にd=qnとすると,
k=0n1aq2k1a(a,b,c,qn;q)k(q,aq/b,aq/c,aqn+1;q)k(aqn+1bc)k=(aq,aq/bc;q)n(aq/b,aq/c;q)n
が得られる. これを書き換えると,
k=0n1aq2k1a(1)kq12k(k1)(a,b,c;q)k(q,aq/b,aq/c;q)k(aq;q)n+k(q;q)nk(aqbc)k=(aq/bc;q)n(q,aq/b,aq/c;q)n
となる. Bailey対 として書き換えると, これは以下のように表される.

αn=1aq2n1a(1)nq12n(n1)(a,b,c;q)n(q,aq/b,aq/c;q)n(aqbc)nβn=(aq/bc;q)n(q,aq/b,aq/c;q)n
aに関するBailey対である.

今回は, この定理の系として得られるBailey対をまとめる. a1,b,cとすると以下を得る.

α0=1とする.
αn=(1)nq32n2(qn2+qn2),n1βn=1(q;q)n,n0
1に関するBailey対である.

a=q,b,cとすると以下を得る.

αn=(1)nq12n(3n+1)1q2n+11qβn=1(q;q)n
qに関するBailey対である.

系1, 系2はともにβn=1(q;q)nであるがBailey対のパラメータが違うのでαnが少し違っている.

a1,b=q12,cとすると以下を得る.

αn=1
αn=qn2(qn2+qn2),n1βn=1(q12,q;q)n,n0
1に関するBailey対である.

a=q,b=q12,cとすると以下を得る.

αn=qn2+121+qn+121+q12βn=1(q32,q;q)n
qに関するBailey対である.

a1,b=q12,c0とすると以下を得る.

α0=1
αn=qn2+qn2,n1βn=1qn2(q12,q;q)n,n0
は1に関するBailey対である.

a=q,b=q12,c0とすると以下を得る.

αn=qn21+qn+121+q12βn=1qn2(q32,q;q)n
qに関するBailey対である.

系3から系6は
1(q12,q;q)n=1(q12;q12)2n1(q32,q;q)n=1q12(q12;q12)2n+1
を用いて書き換えることができ, qq2として用いることが多いかもしれない.

a=q,b=q,cとすると以下を得る.

αn=(1)nqn21q2n+11qβn=1(q2;q2)n
qに関するBailey対である.

これらの例において, αnの方にはq-Pochhammer記号が含まれていないというところが面白いところである. このようなβnを含むような級数があったとき, Bailey対の性質を上手く用いてq-Pochhammer記号を含まない形に書き換えるという応用がある.

他にもb,cq12を代入するなどでも様々なBailey対を得ることができ, それらはSlaterの論文にまとめられているが, かなり量が多いので今回はいくつか紹介するだけにした.

参考文献

[1]
L. J. Slater, A new proof of Rogers's transformations of infinite series, Proc. London Math. Soc. (2), 1951, 460-475
投稿日:16日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
794
52424
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中