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大学数学基礎解説
文献あり

直交多項式と超幾何関数(5)〜Jacobi多項式とRodriguesの公式〜

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五回目の今回からは
いよいよ本命の古典的直交多項式列の紹介というトピックに入る。
今回はChebyshev多項式を含む1つの大きな括りである、Jacobi(ヤコビ)多項式を導入する。

実は今回もまた別の直交多項式一般論をしようと思っていたのだが
理解に時間がかかり、奥が深そうなので、何かの機会で関連記事を書くかもしれない。
半分書きかけだった記事は削除ボタンの1つで抹消されました笑
むしろこれから
具体的な計算をたくさんしていきたくなったので。

まずは手始めに...と言うほど簡単な計算でもないが、Jacobi多項式から。# 計算地獄へようこそ

(note: 実はChebyshevとJacobiの間にはGegenbaurという中間の多項式系があり
そちらを先に紹介するべきなのだろうが、議論の流れ(と伏線回収)のため順序を変えた。
Gegenbaur多項式はJacobi多項式の一例という形で紹介する)

Jacobi多項式とは

上にも書いたように、Jacobi多項式はChebyshev多項式を含むより広い直交多項式系列である。
色々な定義の仕方があるが、一番直感的にわかりやすいものを紹介すると

Jacobi多項式

α,βはともに1より大きい実数とする。
区間[1,1]上の重さ関数w(x)=(1x)α(1+x)βによってシュミットの直交化法を行った直交多項式列{Pn(α,β)(x)}をJacobi多項式と呼ぶ。
正規化はPn(α,β)(1)=(n+αn)と二項係数の値で取ることにする。

このように書くとわかりやすいのは、
α=β=1/2のときw(x)=11x2で第一種Chebyshev多項式、
α=β=1/2のときw(x)=1x2で第二種Chebyshev多項式、を含んでいる。

ただし、問題点がある。
重み関数を与えた定義では、一般項を知るのが大変、と書いた。
モーメントを成分に持つ行列から計算するモーメント法を紹介したが、現実的ではない。
(モーメント法が非現実的なのは、n次多項式を計算するのに2n2次モーメントが必要な点だろう)
また
三項間漸化式からも直交多項式を定義できることを紹介したが、
その係数も直交多項式自身のモーメントが関わってきていた。
Chebyshev多項式は三角関数から定義したので、諸性質を三角関数から示したが
Jacobi多項式はそういうように上手い関数が取れない。

どうすれば打開できたのであろうか。

Rodrigues(ロドリゲス)の公式

Chebyshev多項式の記事の復習をするが、
その時にさらに大事な性質が2つあり、
1つは微分方程式を満たす、もう1つはRodriguesの公式が成り立つ、ということであった。
Chebyshev多項式においてどのような定理であったのかを軽く復習する。

Chebyshev多項式の満たす2階微分方程式

第一種Tn(x)及び第二種Chebyshev多項式Un(x)は次の2階線形常微分方程式を満たしていた。
(1x2)Tn(x)xTn(x)+n2Tn(x)=0(1x2)Un(x)3xUn(x)+n(n+2)Un(x)=0

Chebyshev多項式におけるRodriguesの公式

Tn(x)及びUn(x)n階微分を用いて次のように計算できていた。
Tn(x)=(1)n(2n1)!!1x2dndxn(1x2)n12Un(x)=(1)n2n(n+1)!(2n+1)!11x2dndxn(1x2)n+12

さてChebyshev多項式の記事内では、微分方程式を三角関数の定義からゴリ押し計算で、
そしてRodriguesの公式はその微分方程式を用い帰納的に証明した。
が、記事内で
逆にRodriguesの公式を先に直接示すこともできる、と書いていたので
今回はそれをやってみようと思う。

Jacobi多項式に関するRodriguesの公式

Jacobi多項式Pn(α,β)(x)は次のn階微分を用いた表示で計算可能である。
Pn(α,β)(x)=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βdndxn{(1x)n+α(1+x)n+β}

これもまさにChebyshevの場合の一般化に過ぎないし、
こう見ると実はRodriguesの公式と重み関数はとても密接に関係してそうである。
なので、これを示す。

note: 係数がChebyshevの場合と違うのは、正規化がズレているからである。

m<nに対しxmPn(α,β)(x)が直交することを示せばよい。
11xmPn(α,β)(x)w(x)dx=(1)n2nn!11xmdndxn{(1x2)nw(x)}dx=(1)n2nn![xmdn1dxn1{(1x2)nw(x)}]11(1)n2nn!11mxm1dn1dxn1{(1x2)nw(x)}dx=(1)nm2nn!11xm1dn1dxn1{(1x2)nw(x)}dx==(1)nm!2nn!11dnmdxnm{(1x2)nw(x)}dx=(1)nm!2nn![dnm1dxnm1{(1x2)nw(x)}]11=0
となるのでPn(α,β)(x)は任意のn1次以下の多項式と直交する。
あとは正規化が成り立っていることを言えばよい。
x=1での値Pn(α,β)(1)を計算すると
Pn(α,β)(1)=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βdndxn(1x)n+α(1+x)n+β|x=1=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βk=0ndkdxk(1x)n+αdnkdxnk(1+x)n+β|x=1=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βk=0n(1)k(n+α)k(1x)n+αk(n+β)nk(1+x)k+β|x=1=(1)n2nn!k=0n(1)k(n+α)k(1x)nk(n+β)nk(1+x)k|x=1=(1)n2nn!(1)n(n+α)n(1+x)n|x=1(k=nのみ残る)=(n+α)nn!=(n+αn)
ここでnkは下降階乗であることに注意する。
以上より正規化を含めてJacobi多項式に等しいことが示された。(証明終わり)

このように部分積分を用いることで簡単に示すことができた。
次に、この公式のままでは使いにくいので少し変形する。

Rodriguesの公式の書き換え:Jacobi多項式の一般項の一表示

Jacobi多項式Pn(α,β)(x)は次のように計算できる。
Pn(α,β)(x)=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(x1)nk(x+1)k

これはRodriguesの公式からすぐに示される。すなわち
Pn(α,β)(x)=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βdndxn{(1x)n+α(1+x)n+β}=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βk=0n(nk)dkdxk(1x)n+αdnkdxnk(1+x)n+β=(1)n2nn!(1x)α(1+x)βk=0n(nk)(1)k(n+α)k(1x)nk+α(n+β)nk(1+x)k+β=(1)n2nk=0n(1)k(n+α)kk!(1x)nk(n+β)nk(nk)!(1+x)k=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(x1)nk(x+1)k
となり示された。(証明終わり)

Rodriguesの公式よりも、こちらの方が係数を求める際には使いやすい。

Jacobi多項式の諸性質

今のところ、Jacobi多項式の重み関数による定義、そこから導けたRodriguesの公式がある。
残りの性質である、直交性(長さの計算)、三項間漸化式、微分方程式、一般項を確認する。
これらはChebyshev多項式が満たしていた性質であり、同様に成立する。

まずは微分方程式から。こちらはRodriguesの公式と密接に結びついている。

Jacobi多項式の満たす微分方程式

Jacobi多項式Pn(α,β)(x)は次の二階線形微分方程式を満たす。
(1x2)y{(α+β+2)x+(αβ)}y+n(n+α+β+1)y=0
[もう1つの線形独立な解については、次の節で紹介する]

また、次の等式が成立し、Jacobi多項式の一階微分もまたJacobi多項式になる。
ddxPn(α,β)(x)=n+α+β+12Pn1(α+1,β+1)(x)

まず前半の二階線形微分方程式を満たすことだが、実はこの微分方程式は次のように変形できる。
両辺に重み関数w(x)=(1x)α(1+x)βを両辺に掛けることで
(1x2)(1x)α(1+x)βy{(α+β+2)x+(αβ)}(1x)α(1+x)βy+n(n+α+β+1)(1x)α(1+x)βy=0
さて突然だが次の式を展開すると
ddx{(1x)α+1(1+x)β+1y}=(α+1)(1x)α(1+x)β+1y+(1x)α+1(β+1)(1+x)βy+(1x)α+1(1+x)β+1y=(1x)α(1+x)βy{(α+1)(1+x)+(1x)(β+1)}+(1x)α+1(1+x)β+1y=(1x2)(1x)α(1+x)βy{(α+β+2)x+(αβ)}(1x)α(1+x)βy
となり微分方程式の一部の項が出てきた。

すなわち元の微分方程式は
ddx{(1x)α+1(1+x)β+1y}=n(n+α+β+1)(1x)α(1+x)βyw(x)1ddx{(1x2)w(x)dydx}=n(n+α+β+1)y
と同値である。(いわゆるSturm–Liouville型の変形)
ここで演算子LwLw:=w(x)1ddx{(1x2)w(x)ddx}とおくと、
示すべきはJacobi多項式が演算子Lwに関する固有値n(n+α+β+1)の固有関数であることに他ならない。


以下のやり方は他のRodrigues形の多項式にも通用する証明である。
ϕn1(x)は任意のn1次以下の多項式とする。このとき
11(LwPn(α,β)(x))ϕ(x)w(x)dx=11ddx{(1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dx}ϕ(x)dx=[(1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dxϕ(x)]11+11(1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dxdϕ(x)dxdx=11dPn(α,β)(x)dxdϕ(x)dx(1x2)w(x)dx=(多項式 Pn(α,β) と ϕ の役割を逆転させる)=11(Lwϕ(x))Pn(α,β)(x)w(x)dx=0
最後で多項式Lwϕn1次以下の多項式になることから、直交性で積分が消えたことに注意する。
従ってLwPn(α,β)(x)もまたn1次以下の任意多項式と直交し、Jacobi多項式の一意性からある定数λn(α,β)が存在して
LwPn(α,β)(x)=λn(α,β)Pn(α,β)(x)と書けていることがわかる。
さて係数λn(α,β)は最高次係数を比較することで求まる。LwPn(α,β)(x)[xn]を計算すると
(LwPn(α,β)(x))[xn]=(w(x)1ddx{(1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dx})[xn]=ddx{(1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dx}[xnw(x)]=(n+α+β+1)((1x2)w(x)dPn(α,β)(x)dx)[xn+1w(x)]=(n+α+β+1)(dPn(α,β)(x)dx)[xn1]=n(n+α+β+1)Pn(α,β)(x)[xn]
となることから、固有値の値はλn(α,β)=n(n+α+β+1)である。(証明終わり)

後半の証明

次はJacobi多項式の一階微分自体もまたJacobi多項式であるという証明をする。
これはRodriguesの公式の別表示
Pn(α,β)(x)=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(x1)nk(x+1)k
を使うことにする。すると
ddxPn(α,β)(x)=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)ddx{(x1)nk(x+1)k}=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(nk)(x1)nk1(x+1)k+2nk=0n(n+αk)(n+βnk)k(x1)nk(x+1)k1=2nk=0n1(n+αk)(n+β)(n+β1nk1)(x1)nk1(x+1)k+2nk=1n(n+α)(n+α1k1)(n+βnk)(x1)nk(x+1)k1=2nk=0n1(n+αk)(n+β)(n+β1nk1)(x1)nk1(x+1)k+2nk=0n1(n+α)(n+α1k)(n+βnk1)(x1)nk1(x+1)k=2nk=0n1{(n+αk)(n+β)(n+β1nk1)+(n+α)(n+α1k)(n+βnk1)}(x1)nk1(x+1)k
さて、中括弧内の係数は
(n+αk)(n+β)(n+β1nk1)+(n+α)(n+α1k)(n+βnk1)=Γ(n+α+1)Γ(k+1)Γ(nk+α+1)(n+β)Γ(n+β)Γ(nk)Γ(k+β+1)+(n+α)Γ(n+α)Γ(k+1)Γ(nk+α)Γ(n+β+1)Γ(nk)Γ(k+β+2)=Γ(n+α+1)Γ(k+1)Γ(nk+α+1)Γ(n+β+1)Γ(nk)Γ(k+β+1)+Γ(n+α+1)Γ(k+1)Γ(nk+α)Γ(n+β+1)Γ(nk)Γ(k+β+2)=Γ(n+α+1)Γ(k+1)Γ(nk+α+1)Γ(n+β+1)Γ(nk)Γ(k+β+2){(k+β+1)+(nk+α)}=(n+α+β+1)((n1)+α+1k)((n1)+β+1(n1)k)
と書けることに注意する。以上より
ddxPn(α,β)(x)=2nk=0n1(n+α+β+1)((n1)+α+1k)((n1)+β+1(n1)k)(x1)nk1(x+1)k=n+α+β+12Pn1(α+1,β+1)(x)
となり示すことができた。(証明終わり)

別証明: Jacobi多項式の一意性を用いて示す

{ddxPn+1(α,β)(x)}が重さ(1x)α+1(1+x)β+1を持つ直交多項式列になることを示す。
同様にϕ(x)を任意のn1次以下の多項式とすれば
11{ddxPn+1(α,β)(x)}ϕ(x)(1x)α+1(1+x)β+1dx=[Pn+1(α,β)(x)ϕ(x)(1x2)w(x)]1111Pn+1(α,β)(x)ddx{ϕ(x)(1x2)w(x)}dx=11Pn+1(α,β)(x)ddx{ϕ(x)(1x2)w(x)}dx=11Pn+1(α,β)(x)(LwΦ(x))w(x)dx=0(Φ は ϕ の原始関数の一つとする)
と同様の変形ができる。ゆえにddxPn+1(α,β)(x)=ξn+1(α,β)Pn(α+1,β+1)(x)となる定数が存在する。
最高次係数を見比べることで(最高次係数は次の定理の証明内で示す)
n+12n+1(n+1)!Γ(2n+α+β+3)Γ(n+α+β+2)=ξn+1(α,β)12nn!Γ(2n+α+β+3)Γ(n+α+β+3)ξn(α,β)=n+α+β+12
が満たされていることがわかる。(証明終わり)

以上よりRodriguesの公式を用いて微分方程式を得ることができた。
(微分方程式を先に導く方が理論として自然ではある)

さて次は、三項間漸化式を導くことを目標にモーメント計算をする。

Jacobi多項式の長さの計算

以下Jacobi多項式の正規化は上の定義に準ずるものとする。(Chebyshev多項式とはズレている)
この時次の式が成立する。
11{Pn(α,β)(x)}2w(x)dx=2α+β+12n+α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(n+α+β+1)Γ(n+1)

まず最初に、Jacobi多項式Pn(α,β)(x)の最高次係数を計算したい。
Rodriguesの公式の別表示の式を用いると
Pn(α,β)(x)[xn]=2nk=0n(n+αk)(n+βnk){(x1)nk(x+1)k}[xn]=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)=2n(2n+α+βn)(Vandermondeの等式)=12nn!Γ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1)
と簡単に最高次係数の値を求めることができる。


最高次係数の値とRodriguesの公式を用いて、Pn(x)の長さを求めることができる。すなわち
11{Pn(α,β)(x)}2w(x)dx=11{(1)n2nn!(1x)α(1+x)βdndxn{(1x)n+α(1+x)n+β}}Pn(α,β)(x)w(x)dx=(1)n2nn!11{dndxn(1x)n+α(1+x)n+β}Pn(α,β)(x)dx=12nn!11(1x)n+α(1+x)n+βdndxnPn(α,β)(x)dx(n 回部分積分する)=12nn!11(1x)n+α(1+x)n+β(n!2nn!Γ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1))dx(最高次係数 ×n!)=122nn!Γ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1)11(1x)n+α(1+x)n+βdx=22n+α+β+122nn!Γ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+2)=2α+β+12n+α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(n+α+β+1)Γ(n+1)
のように計算ができる。(証明終わり)

Jacobi多項式の満たす三項間漸化式

Jacobi多項式Pn(α,β)(x)は次の三項間漸化式を満たす。
2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Pn+1(α,β)(x)=(2n+α+β+1){(2n+α+β)(2n+α+β+2)x+α2β2}Pn(α,β)(x)2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)Pn1(α,β)(x)
ただし初項はP0(α,β)(x)=1,P1(α,β)(x)=12{(α+β+2)x+(αβ)}である。

漸化式の係数がやばい...でも序の口ですよ。今後のこと思うと。

三項間漸化式はモーメント・最高次係数を用いて計算することができていた。
復習すると次の式の通りである。
Pn+1(x)=(an+1(n+1)an(n)xan+1(n+1)an(n)L[xPn2(x)]L[Pn2(x)])Pn(x)an+1(n+1)an1(n1)(an(n))2L[Pn2(x)]L[Pn12(x)]Pn1(x)
ここで長さL[Pn2(x)]は上の定理3の帰結そのものであり、最高次係数an(n)は上で求めた通り
an(n)=2nΓ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1)
と書くことができた。
あとはモーメントL[xPn(x)2]を求めることができれば、証明が終わる。
(実はわざわざ求める必要もないが、その証明は後ほど)


モーメントを求めるにあたり、xPn(x)n階微分が必要になる。
すなわちPn(x)=k=0nakxkとおくと、
dndxnxPn(x)=dndxnk=0nakxk+1=dndxn(an1xn+anxn+1)=n!an1+(n+1)!anx
となるため、Pn(x)の最高次係数とその次の係数を決定すればよい。
最高次係数については前定理の証明で求めている。
n1次の係数については最高次係数同様にRodriguesの定理から
Pn(α,β)(x)[xn1]=2nk=0n(n+αk)(n+βnk){(x1)nk(x+1)k}[xn1]=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)l(x1)nk[xn1l](x+1)k[xl]=2nk=0n(n+αk)(n+βnk){(x1)nk[xnk](x+1)k[xk1]+(x1)nk[xnk1](x+1)k[xk]}=2nk=0n(n+αk)(n+βnk){k+(1)(nk)}=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(2kn)
さて最後の括弧の中がkの時を考えればよい。その時の和は
k=0n(n+αk)(n+βnk)k=k=1n(n+α)(n+α1k1)(n+βnk)=(n+α)k=0n1(n+α1k)(n+βnk1)=(n+α)(2n+α+β1n1)
などと書くことができる。すなわち
Pn(α,β)(x)[xn1]=2n+1k=0n(n+αk)(n+βnk)kn2nk=0n(n+αk)(n+βnk)=2n+1(n+α)(2n+α+β1n1)n2n(2n+α+βn)=2n(2n+2α)(2n+α+β1n1)n2n2n+α+βn(2n+α+β1n1)=2n(αβ)(2n+α+β1n1)=αβ2n(n1)!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)
となり最高次係数の次の係数もまた計算することができた。


以上よりL[xPn(x)2]を計算することができる。すなわち
11x{Pn(α,β)(x)}2w(x)dx=11x{(1)n2nn!(1x)α(1+x)βdndxn{(1x)n+α(1+x)n+β}}Pn(α,β)(x)w(x)dx=(1)n2nn!11{dndxn(1x)n+α(1+x)n+β}xPn(α,β)(x)dx=12nn!11(1x)n+α(1+x)n+βdndxn(xPn(α,β)(x))dx(n 回部分積分する)=12nn!11(1x)n+α(1+x)n+β(n!αβ2n(n1)!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)+(n+1)!12nn!Γ(2n+α+β+1)Γ(n+α+β+1)x)dx=122nn!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)11(1x)n+α(1+x)n+β{n(αβ)+(n+1)(2n+α+β)x}dx=122nn!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)11(1x)n+α(1+x)n+β{2n2+(2α+2)n+α+β(n+1)(2n+α+β)(1x)}dx=122nn!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1){{2n2+(2α+2)n+α+β}11(1x)n+α(1+x)n+βdx(n+1)(2n+α+β)11(1x)n+α+1(1+x)n+βdx}=122nn!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1){{2n2+(2α+2)n+α+β}22n+α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+2)(n+1)(2n+α+β)22n+α+β+2Γ(n+α+2)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3)}=122nn!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)22n+α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3){(2n+α+β+2){2n2+(2α+2)n+α+β}2(n+1)(n+α+1)(2n+α+β)}=2α+β+1n!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3){(2n+α+β){2n2+(2α+2)n+α+β}2(n+1)(n+α+1)(2n+α+β)+2{2n2+(2α+2)n+(α+β)}}=2α+β+1n!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3){(2n+α+β)(2nα+β2)+2{2n2+(2α+2)n+α+β}}=2α+β+1n!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3)(α2+β2)
求まったものの計算が爆発した。もうちょい綺麗に計算できないのかな。笑


以上を元に、三項間漸化式の係数を決定する。三項間漸化式
Pn+1(x)=(an+1(n+1)an(n)xan+1(n+1)an(n)L[xPn2(x)]L[Pn2(x)])Pn(x)an+1(n+1)an1(n1)(an(n))2L[Pn2(x)]L[Pn12(x)]Pn1(x)
の係数3つをそれぞれ計算する。まずPn(x)の係数のうちxの1次の係数は
an+1(n+1)an(n)=12n+1(n+1)!Γ(2n+α+β+3)Γ(n+α+β+2)×2nn!Γ(n+α+β+1)Γ(2n+α+β+1)=(2n+α+β+2)(2n+α+β+1)2(n+1)(n+α+β+1)

次にPn(x)の係数のうち定数項は
an+1(n+1)an(n)L[xPn2(x)]L[Pn2(x)]=(2n+α+β+2)(2n+α+β+1)2(n+1)(n+α+β+1)×2α+β+1n!Γ(2n+α+β)Γ(n+α+β+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(2n+α+β+3)(α2+β2)×2n+α+β+12α+β+1Γ(n+α+β+1)Γ(n+1)Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)=α2+β22(n+1)(n+α+β+1)2n+α+β+12n+α+β

最後にPn1(x)の係数は
an+1(n+1)an1(n1)(an(n))2L[Pn2(x)]L[Pn12(x)]=an+1(n+1)an(n)an1(n1)an(n)L[Pn2(x)]L[Pn12(x)]1=(2n+α+β+2)(2n+α+β+1)2(n+1)(n+α+β+1)2n(n+α+β)(2n+α+β)(2n+α+β1)×2α+β+12n+α+β+1Γ(n+α+1)Γ(n+β+1)Γ(n+α+β+1)Γ(n+1)2n+α+β12α+β+1Γ(n+α+β)Γ(n)Γ(n+α)Γ(n+β)=(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)
以上よりJacobi多項式の満たす三項間漸化式は
Pn+1(α,β)(x)=((2n+α+β+2)(2n+α+β+1)2(n+1)(n+α+β+1)xα2+β22(n+1)(n+α+β+1)2n+α+β+12n+α+β)Pn(α,β)(x)(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Pn1(α,β)(x)
となり、分母を払うことで題意の三項間漸化式が得られた。(証明終わり)

愚直にL[xPn(x)2]を求めたが計算量が爆増してしまった。
実は三項間漸化式の係数だけなら、モーメントを求めずに華麗に計算する方法がある。

(別証明:L[xPn(x)2]を求めなくてもよい)

長さと最高次係数はわかっているところまでは上に同じである。
すなわち、三項間漸化式は
2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Pn+1(α,β)(x)=(2n+α+β+1){(2n+α+β)(2n+α+β+2)x+Cn}Pn(α,β)(x)2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)Pn1(α,β)(x)
と書けているとする。
ここでJacobi多項式の正規化Pn1(α,β)(1)=(n+αn)を考えてx=1を代入する
まずn+1n1の項をまとめて
2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Pn+1(α,β)(1)+2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)Pn1(α,β)(1)=2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Γ(n+α+2)Γ(n+2)Γ(α+1)+2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)Γ(n+α)Γ(n)Γ(α+1)=Γ(n+α+1)Γ(n+1)Γ(α+1){2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)n+α+1n+1+2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)nn+α}=(n+αn){2(n+α+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)+2n(n+β)(2n+α+β+2)}
さて中括弧内は、定理の形を見ると2n+α+β+1で割れるはずである。
それを念頭に変形すると
2(n+α+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)+2n(n+β)(2n+α+β+2)=2(n+α+1)(n+α+β+1){(2n+α+β+1)1}+2n(n+β){(2n+α+β+1)+1}=(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)}2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)=(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)}2(n+α+1)22(n+α+1)β+2n2+2nβ=(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)}2(α+1)(2n+α+1)2(α+1)β=(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)}2(α+1)(2n+α+β+1)=(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)2(α+1)}
と無事に括り出すことができた。以上より
2(n+1)(n+α+β+1)(2n+α+β)Pn+1(α,β)(1)+2(n+α)(n+β)(2n+α+β+2)Pn1(α,β)(1)=(n+αn)(2n+α+β+1){2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)2(α+1)}
である。これがnの項でのx=1における値
(2n+α+β+1){(2n+α+β)(2n+α+β+2)+Cn}(n+αn)に一致しており
Cn=2(n+α+1)(n+α+β+1)+2n(n+β)2(α+1)(2n+α+β)(2n+α+β+2)=2n2+2(2α+β+2)n+2(α+1)(α+β+1)+2n2+2nβ2(α+1)4n22(2α+2β+2)n(α+β)(α+β+2)=2(α+1)(α+β+1)2(α+1)(α+β)(α+β+2)(定数項のみ残る)=2(α+1)(α+β)(α+β)(α+β+2)=(α+β)(αβ)=α2β2
となり正しくCnの値も求めることができた。(証明終わり)

なんで最初からこうしないのだ。って話かもしれないが。
実は、1での値を先に計算しておくと、L[Pn2(x)]の値も不要だったりする。
長さの値は性質として欲しいので本末転倒であるが。

さて、最後にJacobi多項式の一般項を与えたいと思う。
これもChebyshev多項式同様に、(1x)を基準とする超幾何級数で書き表される。

Jacobi多項式の一般項(超幾何)

上で定められたJacobi多項式の一般項は次のように書き表される。
Pn(α,β)(x)=(n+αn)k=0n(n)k(n+α+β+1)kk!(α+1)k(1x2)k=:(n+αn)2F1(n,n+α+β+1;α+1;1x2)
なお、最高次係数とその次の係数が綺麗に書けたのはただの偶然で、一般の次数は綺麗に書けない。

いわゆる2F1型の超幾何級数であり、(n)kの形を含んでいるので無限和にはならず多項式になる。
このような超幾何級数はterminateする、と言われる。

Rodriguesの公式を変形した表示を思いだす。
さらにx1=(1x)及びx+1=2(1x)とおくことで
Pn(α,β)(x)=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(x1)nk(x+1)k=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(1)nk(1x)nk{2(1x)}k=2nk=0n(n+αk)(n+βnk)(1)nk(1x)nkl=0k(kl)2l(1)kl(1x)kl(二項展開)=2nk=0nl=0k(n+αk)(n+βnk)(kl)2l(1)nl(1x)nl=2nk=0nl=nkn(n+αk)(n+βnk)(knl)2nl(1)l(1x)l(lnl)=l=0nk=nln(n+αk)(n+βnk)(knl)2l(1)l(1x)l(k,l の順序の取り替え)=l=0nk=0l(n+αnk)(n+βk)(nknl)(1)l(1x2)l(knk)=l=0nk=0l(n+βk)Γ(n+α+1)Γ(nk+1)Γ(α+k+1)Γ(nk+1)Γ(nl+1)Γ(lk+1)(1)l(1x2)l=l=0nk=0l(n+βk)Γ(n+α+1)Γ(nl+1)Γ(α+l+1)Γ(α+l+1)Γ(α+k+1)Γ(lk+1)(1)l(1x2)l=l=0nΓ(n+α+1)Γ(nl+1)Γ(α+l+1)k=0l(n+βk)(α+llk)(1)l(1x2)l=l=0nΓ(n+α+1)Γ(nl+1)Γ(α+l+1)(n+α+β+ll)(1)l(1x2)l=(n+αn)l=0nΓ(n+1)Γ(α+1)Γ(nl+1)Γ(α+l+1)Γ(n+α+β+l+1)Γ(l+1)Γ(n+α+β+1)(1)l(1x2)l=(n+αn)l=0n(n)l(n+α+β+1)ll!(α+1)l(1x2)l
となり、示すことができた。(証明終わり)

絶対(Chebyshev多項式同様)係数の漸化式を立てた方が楽だった気しかしない。

Jacobi多項式が含んでいる直交多項式

Jacobi多項式は次のように名前がつけられた直交多項式を含んでいる。

  • Gegenbaur多項式: α=βの時
  • (Gegenbaur多項式の中の)Chebyshev多項式: α=β=±1/2の時
  • (Gegenbaur多項式の中の)Legendre多項式: α=β=0の時
    Pn(x)=12nn!dndxn(1x2)n,w(x)=1
  • associated Legendre多項式(Legendreの陪多項式): (n+1/2)m(1x2)m/2Pnm(m,m)(x)
    これはJacobi多項式そのものではないが、関連して。球座標のSchrödinger方程式でよく見る。
  • Zernike多項式: (1)(nm)/2xmP(nm)/2(m,0)(12x2)
    Zernike多項式は単位円上で定義された直交多項式列で、工学部門での応用がある。

Jacobi微分方程式のもう一つの解

note: これは2F1の微分方程式の解に他ならないが、超幾何的意味付けは別記事で行う。

Chebyshev多項式の場合は、第一種の方程式のもう一つの解は第二種と重さの積、逆も然り
そのようなある種の対称性が垣間見えたが、
Jacobi多項式全体として見るとそのようなものはない。

Jacobi多項式の満たす二階線形微分方程式のもう一つの線型独立解は、超幾何級数の形で冪級数
Qn(α,β)(x)=(1x)α2F1(nα,n+β+1;1α;1x2):=(1x)αk=0(nα)k(n+β+1)kk!(1α)k(1x2)k
で与えられ、terminateせず多項式や有理式には一般的にはならない。(ただし(x)kは上昇階乗)

(証明は超幾何の回に後回しということにしておきたい、必要があれば加筆します)

第一種Chebyshev多項式の場合

α=β=1/2を代入することで、上の超幾何級数Qn(α,β)(x)
Qn(1/2,1/2)(x)=(1x)122F1(n+12,n+12;32;1x2)
一見terminateはしていないように見える。ここで2F1の変換公式
2F1(ca,cb;c;z)=(1z)a+bc2F1(a,b;c;z)
を使うことで上の式は
Qn(1/2,1/2)(x)=(1x22)122F1(n+1,n+1;32;1x2)=1x22Un1(x)n
みたいな形になり、第二種Chebyshev(すなわちJacobi)が出てきた。
# 色々未定義すぎてごめんなさい

なお同様の変換公式を一般の場合に使うと
Qn(α,β)(x)=(1x)α2F1(nα,n+β+1;1α;1x2)=(1x)α(1+x2)β2F1(n+1,nαβ;1α;1x2)
となり、特にα+βが整数のときはterminate超幾何級数を因子にもつ。
Question: Qn(α,β)(x)がterminate超幾何級数を因子に持ったり、Jacobiで書けるのはα+βZだけか?
(αZのような明らかにterminateする場合は除く)
(私もよく知りません...どこか本に書いてないかな)

・・・ということもあって、微分方程式においては適切に「多項式になる解」を選ぶ必要がある。
(原点での正則関数である解、として一意的に定まる: Qn(x)は無限遠点での漸近展開を持つ解)
そこのあたりは超幾何微分方程式を書く記事への私への課題としておこう。

終わりに

大事な注意であるが、
実はJacobi多項式の満たす等式は他にも山のようにある。
またそれらの等式について述べる気になったら、
別で記事を立てようと思う。

記事の量が爆増したのは想定の範囲外だった。まだまだ改善のため絶賛編集中。
と言うか、任意の記事・本・論文が証明を端折ってて泣きたい。
そんなものではあるんだけどね。

次の記事はLaguerre多項式。ではまた次の記事で。

参考文献

[1]
Jie Shen, Tao Tang, Li-Lian Wang, Spectral Methods Algorithms, Analysis and Applications, Springer Series in Computational Mathematics, Springer Berlin, Heidelberg, 2011
投稿日:2024520
更新日:2024529
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整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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  1. Jacobi多項式とは
  2. Rodrigues(ロドリゲス)の公式
  3. Jacobi多項式の諸性質
  4. Jacobi微分方程式のもう一つの解
  5. 終わりに
  6. 参考文献