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で, Rogers-Ramanujanの分割定理を示した.
自然数の分割が-差的であるとは全てのに対し, であることをいう.
Rogers-Ramanujanの分割定理においては, -差的な分割が現れた. その類似として以下の定理が知られている.
Schurの分割定理
の分割で-差的かつ, に対し, がの倍数ならばであるようなものの個数は, の分割でその和因子がを法としてと合同であるものの個数に等しい.
統一的な観点から考えるために, 次のような定義をする.
をの分割であり, -差的かつ, に対し, がの倍数ならばであるようなものの個数とする. また, を上の条件を満たす分割であって, さらにを満たすものの個数とする.
2つのRogers-Ramanujanの分割定理はがのを法としてに合同な和因子による分割の個数と等しいことと, がのを法としてに合同な和因子による分割の個数と等しいことを意味している. また, Schurの分割定理は, がのを法としてと合同な和因子による分割と等しいことを意味している. 他に, に関しても, Göllnitz, Gordonによる分割定理が知られている.
今回は, Schurの分割定理をAndrewsによる方法で示す. まず, の定義の条件を満たす, の個の和因子への分割であって, 全ての和因子がより大きいものの個数をとする.
1つ目の等式の右辺はの条件を満たす分割の中で, を和因子に持つ分割の個数である. を引くという操作はの倍数であるという性質を変えないので, そのような分割に対してそのを除いて, 残りの全ての和因子からを引いたものは, の条件を満たす分割になっている. これが全単射を与えている. 2つ目以降の等式も同様である.
と定義する.
と, 補題2は
と書き換えられる. 1つ目の等式より,
3つ目, 4つ目の等式より,
これらを2つ目の式に代入すると,
を得る.
とすると, これは
と表される.
とすると,
つまり,
を得る. よって, これを繰り返し用いて,
を得る. よって,
である. 次に,
Watsonの変換公式
において, としてから, とすると,
となる. よって,
となって定理を得る.
定理3から, Schurの分割定理は以下のように示される.
定理1の証明
Jacobiの三重積より,
となるから, この両辺の係数を比較して定理を得る.
定理3の系として, の母関数の表示も得ることができる.
定理3の証明における等式,
より, 定理3を用いて
と示される.
この系は
と変形すればより簡潔に表すこともできる. これはAppell-Lerch型の級数である.