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現代数学解説
文献あり

AndrewsによるSchurの分割定理の証明

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前回の記事 で, Rogers-Ramanujanの分割定理を示した.

自然数の分割(λ1,,λm)d-差的であるとは全ての1im1に対し, λiλi+1dであることをいう.

Rogers-Ramanujanの分割定理においては, 2-差的な分割が現れた. その類似として以下の定理が知られている.

Schurの分割定理

Nの分割(λ1,,λn)3-差的かつ, 1in1に対し, λi3の倍数ならばλiλi+1>3であるようなものの個数は, Nの分割でその和因子が6を法として1,5と合同であるものの個数に等しい.

統一的な観点から考えるために, 次のような定義をする.

Bd(N)Nの分割(λ1,,λn)であり, d-差的かつ, 1in1に対し, λidの倍数ならばλiλi+1>dであるようなものの個数とする. また, Cd(N)を上の条件を満たす分割であって, さらにλn>dを満たすものの個数とする.

2つのRogers-Ramanujanの分割定理はB1(N)N5を法として1,4に合同な和因子による分割の個数と等しいことと, C1(N)N5を法として2,3に合同な和因子による分割の個数と等しいことを意味している. また, Schurの分割定理は, B3(N)N6を法として1,5と合同な和因子による分割と等しいことを意味している. 他に, B2(N),C2(N)に関しても, Göllnitz, Gordonによる分割定理が知られている.
今回は, Schurの分割定理をAndrewsによる方法で示す. まず, B3(N)の定義の条件を満たす, nm個の和因子への分割であって, 全ての和因子がjより大きいものの個数をbj(m,n)とする.

以下の等式が成り立つ.
b0(m,n)b1(m,n)=b0(m1,n3m+2)b1(m,n)b2(m,n)=b1(m1,n3m+1)b2(m,n)b3(m,n)=b3(m1,n3m)b3(m,n)=b0(m,n3m)

1つ目の等式の右辺はb0(m,n)の条件を満たす分割の中で, 1を和因子に持つ分割の個数である. 3を引くという操作は3の倍数であるという性質を変えないので, そのような分割に対してその1を除いて, 残りの全ての和因子から3を引いたものは, b0(m1,n3m+2)の条件を満たす分割になっている. これが全単射を与えている. 2つ目以降の等式も同様である.

fi(x):=1+0<m,nbi(m,n)xmqn
と定義する.

Andrews(1968)

f0(x)=(x;q3)0n(q,q2;q3)n(q3;q3)nxn=(x;q)(x2;q6)0n(1)nx2nq12(9n23n)(1xq6n)(q;q)3n(x;q)3n(x2;q6)n(q6;q6)n

と, 補題2は
f0(x)f1(x)=xqf0(xq3)f1(x)f2(x)=xq2f1(xq3)f2(x)f3(x)=xq3f3(xq3)f3(x)=f0(xq3)
と書き換えられる. 1つ目の等式より,
f1(x)=f0(x)xqf0(xq3)
3つ目, 4つ目の等式より,
f2(x)=f0(xq3)+xq3f0(xq6)
これらを2つ目の式に代入すると,
f0(x)=(1+xq+xq2)f0(xq3)xq3(1xq3)f0(xq6)
を得る.
G(x):=f0(x)(x;q3)
とすると, これは
(1x)G(x)=(1+xq+xq2)G(xq3)xq3G(xq6)
と表される.
G(x)=:0nAn(q)xn
とすると, A0(q)=1
An(q)An1(q)=q3nAn(q)+q3n2An1(q)+q3n1An1(q)+q6n3An1(q),n1
つまり,
An(q)=(1+q3n1)(1+q3n2)1q3nAn1(q),n1
を得る. よって, これを繰り返し用いて,
An(q)=j=1n(1+q3j1)(1+q3j2)1q3j=(q,q2;q3)n(q3;q3)n
を得る. よって,
f0(x)=(x;q3)0n(q,q2;q3)n(q3;q3)nxn
である. 次に, Watsonの8ϕ7変換公式
0k1aq2k1a(a,b,c,d,e,qn;q)k(q,aq/b,aq/c,aq/d,aq/e,aqn+1;q)k(a2qn+2bcde)k=(aq,aq/de;q)n(aq/d,aq/e;q)n0k(aq/bc,d,e,qn;q)k(q,aq/b,aq/c,deqn/a;q)kqk
において, n,b,cとしてから, qq3,ax,dq,eq2とすると,
0k1xq6k1x(x,q,q2;q3)k(q3,xq,xq2;q3)k(1)kq9(k2)(x2q3)k=(xq3,x;q3)(xq,xq2;q3)0k(q,q2;q3)k(q3;q3)kxk
となる. よって,
f0(x)=(x;q3)0k(q,q2;q3)k(q3;q3)kxk=(xq,xq2;q3)(x;q3)0k(1xq6k)(x,q,q2;q3)k(q3,xq,xq2;q3)k(1)kq9k23k2x2k=(x;q)(x,x;q3)0k(1xq6k)(x,x;q3)k(q;q)3k(q3,q3;q3)k(x;q)3k(1)kq9k23k2x2k=(x;q)(x2;q6)0k(1xq6k)(x2;q6)k(q;q)3k(q6;q6)k(x;q)3k(1)kq9k23k2x2k
となって定理を得る.

定理3から, Schurの分割定理は以下のように示される.

定理1の証明

Jacobiの三重積より,
1+0<nB3(n)qn=limx1f0(x)=limx1(x;q)(x2;q6)0k(1xq6k)(x2;q6)k(q;q)3k(q6;q6)k(x;q)3k(1)kq9k23k2x2k=(1;q)2(q6;q6)(1+0<k(1+q3k)(1)kq9k23k2)=(q;q)(q6;q6)kZ(1)kq9k23k2=(q;q)(q6;q6)(q3,q6,q9;q9)=(q;q)(q3;q3)(q6;q6)=(q2;q2)(q3;q3)(q;q)(q6;q6)=(q2,q4,q6;q6)(q3,q6;q6)(q,q2,q3,q4,q5,q6;q6)(q6;q6)=1(q,q5;q6)
となるから, この両辺の係数を比較して定理を得る.

定理3の系として, C3(n)の母関数の表示も得ることができる.

1+0<nC3(n)qn=(q;q)(q6;q6)0n(1)nq9n(n+1)2(1q6n+3)(1+q3n+1)(1+q3n+2)

定理3の証明における等式,
f3(x)=f0(xq3)
より, 定理3を用いて
1+0<nC3(n)qn=f3(1)=f0(q3)=(q3;q)(q6;q6)0n(1)nq9n(n+1)2(1q6n+3)(1+q)(1+q2)(1+q3n+1)(1+q3n+2)=(q;q)(q6;q6)0n(1)nq9n(n+1)2(1q6n+3)(1+q3n+1)(1+q3n+2)
と示される.

この系は
0n(1)nq9n(n+1)2(1q6n+3)(1+q3n+1)(1+q3n+2)=0n(1)nq9n(n+1)2(11+q3n+111+q3n2)=nZ(1)nq9n(n+1)21+q3n+1
と変形すればより簡潔に表すこともできる. これはAppell-Lerch型の級数である.

参考文献

[1]
G. E. Andrews, On Partition Functions Related to Schur's Second Partition Theorem, Proc. Amer. Math. Soc. , 1968, 441-444
投稿日:20日前
更新日:20日前
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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