はじめに
次の問題について考えてみました:
位相空間とそれらの間の写像について,次の2条件は同値か?
(i) は連続である.
(ii) 任意のの点列とについて,ならばである.
下にネタバレがあるので考えたい人は注意してください.
なお,一般に位相空間の点列がに収束するとは,「任意のの開近傍に対してがあり,任意のに対してとなる」ことをいいます.このときなどと書くのはいつも通りです.点列に対して収束先は存在することも存在しないこともあり,存在するとしても一意とは限りません.
まず簡単な方から
(i)(ii)は,実はどんなについても成り立ちます.
位相空間と写像が(i)を満たせば,(ii)も満たす.
が連続だとしよう.となるについてを言いたい.そこでの開近傍を取る.このときの連続性からはの開近傍であるから,収束の定義からがあり任意のに対して,つまりである.これはであることを示している.
はい.って感じですね.
逆は成り立つか?
成り立つ場合もあります.例えばが密着位相の場合ですが,これはつまらないですね.について条件を課すと成り立つ場合もあります.
問題1の状況で,が第一可算公理を満たすという仮定の下だと(ii)ならば(i)が成り立つ.
(ii)の仮定の下,と,の近傍を取る.このときがの近傍であることを言えばよい.の可算な基本近傍系を取る.必要ならばを考えることでは単調非増加だとしてよい.がの近傍ではないと仮定する.すると任意のに対してがあり,かつとなる.このときである.実際,をの開近傍とするときがありとなるが,は単調非増加なので任意のに対してである.よって(ii)の仮定からである.一方,の取り方からであることに矛盾する.よってはの近傍である.
以上よりは連続である.
とくにが距離空間だったりすると成り立ちますね(距離空間の場合は割とよく知られた事実だと思います).
では本題の反例構成に入ります.
(ii)を満たし,かつ(i)を満たさないようなが存在する.
は集合としては同じ非可算集合を取り,には離散位相を入れる.また,には
を閉集合系とする位相を入れる(これが位相になることは容易).を恒等写像とするとき,はより真に強い位相なので(ここで非可算性の仮定を使った),は連続ではない.以下が(i)を満たすことを示す.まず,の点列とについて次が同値であることを示す.
(a) .
(b) があり任意のに対し.
(b)(a)は明らか.逆に(a)を仮定する.は高々可算集合なので,はの開近傍である.よってがあり任意のに対してとなるのでとなるしかない.
以上より(a)と(b)は同値である.したがっての点列とについてならば,(b)が成り立つのでの位相においてもとなる.したがっては(ii)を満たす.
追記
Mathlog サーフィンをしていたら参考文献[1]の記事を見つけました.写像の連続性と点列連続性の関係を空間の言葉で記述できるのは面白いですね.命題2は第一可算ならば列型空間であることを示しており,命題3では列型空間でないの例を与えたということになります.