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大学数学基礎問題
文献あり

連続性は収束点列によって特徴づけられるか?

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はじめに

次の問題について考えてみました:

位相空間X,Yとそれらの間の写像f:XYについて,次の2条件は同値か?
(i) f:XYは連続である.
(ii) 任意のXの点列{xn}nxXについて,limnxn=xならばlimnf(xn)=f(x)である.

下にネタバレがあるので考えたい人は注意してください.

なお,一般に位相空間Xの点列{xn}nxXに収束するとは,「任意のxの開近傍Uに対してNNがあり,任意のnNに対してxnUとなる」ことをいいます.このときlimnxn=xなどと書くのはいつも通りです.点列に対して収束先は存在することも存在しないこともあり,存在するとしても一意とは限りません.

まず簡単な方から

(i)(ii)は,実はどんなX,Y,fについても成り立ちます.

位相空間X,Yと写像f:XYが(i)を満たせば,(ii)も満たす.

fが連続だとしよう.limnxn=xとなるxn,xXについてlimnf(xn)=f(x)を言いたい.そこでf(x)の開近傍Vを取る.このときfの連続性からU:=f1(V)xの開近傍であるから,収束の定義からNNがあり任意のnNに対してxnU,つまりf(xn)Vである.これはlimnf(xn)=f(x)であることを示している.

はい.って感じですね.

逆は成り立つか?

成り立つ場合もあります.例えばYが密着位相の場合ですが,これはつまらないですね.Xについて条件を課すと成り立つ場合もあります.

問題1の状況で,Xが第一可算公理を満たすという仮定の下だと(ii)ならば(i)が成り立つ.

(ii)の仮定の下,xXと,f(x)の近傍VYを取る.このときf1(V)Xxの近傍であることを言えばよい.xの可算な基本近傍系N={Nn}nを取る.必要ならば{N1Nn}nを考えることでNは単調非増加だとしてよい.f1(V)xの近傍ではないと仮定する.すると任意のnNに対してxnXがあり,xnNnかつxnf1(V)となる.このときlimnxn=xである.実際,Uxの開近傍とするときn0NがありNn0Uとなるが,Nは単調非増加なので任意のnn0に対してxnNnUである.よって(ii)の仮定からlimnf(xn)=f(x)である.一方,xnの取り方からxnf1(V) (n)であることに矛盾する.よってf1(V)Xxの近傍である.

以上よりfは連続である.

とくにXが距離空間だったりすると成り立ちますね(距離空間の場合は割とよく知られた事実だと思います).

では本題の反例構成に入ります.

(ii)を満たし,かつ(i)を満たさないようなX,Y,fが存在する.

X,Yは集合としては同じ非可算集合を取り,Yには離散位相を入れる.また,Xには
{X}{AXAは高々可算}
を閉集合系とする位相を入れる(これが位相になることは容易).f:XYを恒等写像とするとき,YXより真に強い位相なので(ここで非可算性の仮定を使った),fは連続ではない.以下f:XYが(i)を満たすことを示す.まず,Xの点列{xn}nxXについて次が同値であることを示す.

(a) limnxn=x
(b) NNがあり任意のnNに対しxn=x

(b)(a)は明らか.逆に(a)を仮定する.A:={xnnN}は高々可算集合なので,U:={x}(RA)xの開近傍である.よってNNがあり任意のnNに対してxnUとなるのでxn=x (nN)となるしかない.

以上より(a)と(b)は同値である.したがってXの点列{xn}nxXについてlimnxn=xならば,(b)が成り立つのでYの位相においてもlimnf(xn)=limnxn=x=f(x)となる.したがってfは(ii)を満たす.

追記

Mathlog サーフィンをしていたら参考文献[1]の記事を見つけました.写像の連続性と点列連続性の関係を空間の言葉で記述できるのは面白いですね.命題2は第一可算ならば列型空間であることを示しており,命題3では列型空間でないXの例を与えたということになります.

参考文献

投稿日:2023625
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投稿者

数学を勉強したりしなかったりします.

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  1. はじめに
  2. まず簡単な方から
  3. 逆は成り立つか?
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  5. 参考文献