次の問題について考えてみました:
位相空間$X,Y$とそれらの間の写像$f:X\to Y$について,次の2条件は同値か?
(i) $f:X\to Y$は連続である.
(ii) 任意の$X$の点列$\{x_n\}_n$と$x\in X$について,$\lim_{n\to \infty}x_n=x$ならば$\lim_{n\to\infty}f(x_n)=f(x)$である.
下にネタバレがあるので考えたい人は注意してください.
なお,一般に位相空間$X$の点列$\{x_n\}_n$が$x\in X$に収束するとは,「任意の$x$の開近傍$U$に対して$N\in\mathbb{N}$があり,任意の$n\geq N$に対して$x_n\in U$となる」ことをいいます.このとき$\lim_{n\to\infty}x_n=x$などと書くのはいつも通りです.点列に対して収束先は存在することも存在しないこともあり,存在するとしても一意とは限りません.
(i)$\Longrightarrow$(ii)は,実はどんな$X,Y,f$についても成り立ちます.
位相空間$X,Y$と写像$f:X\to Y$が(i)を満たせば,(ii)も満たす.
$f$が連続だとしよう.$\lim_{n\to \infty}x_n=x$となる$x_n,x\in X$について$\lim_{n\to\infty}f(x_n)=f(x)$を言いたい.そこで$f(x)$の開近傍$V$を取る.このとき$f$の連続性から$U:=f^{-1}(V)$は$x$の開近傍であるから,収束の定義から$N\in\mathbb{N}$があり任意の$n\geq N$に対して$x_n\in U$,つまり$f(x_n)\in V$である.これは$\lim_{n\to\infty}f(x_n)=f( x)$であることを示している.
はい.って感じですね.
成り立つ場合もあります.例えば$Y$が密着位相の場合ですが,これはつまらないですね.$X$について条件を課すと成り立つ場合もあります.
問題1の状況で,$X$が第一可算公理を満たすという仮定の下だと(ii)ならば(i)が成り立つ.
(ii)の仮定の下,$x\in X$と,$f(x)$の近傍$V\subset Y$を取る.このとき$f^{-1}(V)\subset X$が$x$の近傍であることを言えばよい.$x$の可算な基本近傍系$\mathcal{N}=\{N_n\}_n$を取る.必要ならば$\{N_1\cap \cdots \cap N_n\}_n$を考えることで$\mathcal{N}$は単調非増加だとしてよい.$f^{-1}(V)$が$x$の近傍ではないと仮定する.すると任意の$n\in\mathbb{N}$に対して$x_n\in X$があり,$x_n\in N_n$かつ$x_n\notin f^{-1}(V)$となる.このとき$\lim_{n\to \infty}x_n=x$である.実際,$U$を$x$の開近傍とするとき$n_0\in\mathbb{N}$があり$N_{n_0}\subset U$となるが,$\mathcal{N}$は単調非増加なので任意の$n\geq n_0$に対して$x_n\in N_n\subset U$である.よって(ii)の仮定から$\lim_{n\to\infty}f(x_n)=f(x)$である.一方,$x_n$の取り方から$x_n\notin f^{-1}(V)\ (\forall n)$であることに矛盾する.よって$f^{-1}(V)\subset X$は$x$の近傍である.
以上より$f$は連続である.
とくに$X$が距離空間だったりすると成り立ちますね(距離空間の場合は割とよく知られた事実だと思います).
では本題の反例構成に入ります.
(ii)を満たし,かつ(i)を満たさないような$X,Y,f$が存在する.
$X,Y$は集合としては同じ非可算集合を取り,$Y$には離散位相を入れる.また,$X$には
\begin{equation}
\{X\}\cup\{A\subset X\mid \text{$A$は高々可算}\}
\end{equation}
を閉集合系とする位相を入れる(これが位相になることは容易).$f:X\to Y$を恒等写像とするとき,$Y$は$X$より真に強い位相なので(ここで非可算性の仮定を使った),$f$は連続ではない.以下$f:X\to Y$が(i)を満たすことを示す.まず,$X$の点列$\{x_n\}_n$と$x\in X$について次が同値であることを示す.
(a) $\lim_{n\to\infty}x_n=x$.
(b) $N\in\mathbb{N}$があり任意の$n\geq N$に対し$x_n=x$.
(b)$\Longrightarrow$(a)は明らか.逆に(a)を仮定する.$A:=\{x_n\mid n\in\mathbb{N}\}$は高々可算集合なので,$U:=\{x\}\cup (\mathbb{R}\setminus A)$は$x$の開近傍である.よって$N\in\mathbb{N}$があり任意の$n\geq N$に対して$x_n\in U$となるので$x_n=x\ (n\geq N)$となるしかない.
以上より(a)と(b)は同値である.したがって$X$の点列$\{x_n\}_n$と$x\in X$について$\lim_{n\to\infty}x_n=x$ならば,(b)が成り立つので$Y$の位相においても$\lim_{n\to\infty}f(x_n)=\lim_{n\to \infty}x_n=x=f(x)$となる.したがって$f$は(ii)を満たす.
Mathlog サーフィンをしていたら参考文献[1]の記事を見つけました.写像の連続性と点列連続性の関係を空間の言葉で記述できるのは面白いですね.命題2は第一可算ならば列型空間であることを示しており,命題3では列型空間でない$X$の例を与えたということになります.