$K$-線型空間の部分空間全体の集合を$\mathcal{S}(V)$と表すと、これは包含関係に関して半順序集合になっています. この順序集合が与えられたときに元の$V$が復元できる条件について考えます.
体$K$と$K$-線型空間$V$に対し、$V$の部分空間全体を$\mathcal{S}(V)$と表す.
$\mathcal{S}(V)$は包含関係によって半順序集合とみなす.
次の定理を示すのが目標です.
体$K, K'$と(有限次元とは限らない)$K$-線型空間$V$、$K'$-線型空間$V'$に対し、次の(1), (2), (3)のいずれかが成り立つことは$\mathcal{S}(V)$と$\mathcal{S}(V')$が順序同型であるための必要十分条件.
体$K$に対し、$K^2$の$1$次元部分空間の個数はは$|K|+1$個.
$K$が有限体のとき$K^2$の$0$でない元は$|K|^2-1$個あり、$|K|-1$個ずつが同じ$1$次元部分空間を張るので、$1$次元部分空間は$|K|+1$個ある.
$K$が無限体のとき、$K^2$の$0$でない元の個数は$|K|$個なので$1$次元部分空間の個数は高々$|K|$個. 一方$\langle(1, a)\rangle\subseteq K^2:a\in K$は相異なる$1$次元部分空間なので、$K^2$の$1$次元部分空間の数はちょうど$|K|$個で、これは$|K|+1$と等しい.
(1)が成り立っているときは明らかに$\mathcal{S}(V)\cong\mathcal{S}(V').$
(2)の成立を仮定する. 補題2より全単射$\varphi:\mathcal{S}(V)\setminus\{\{0\}, V\}\to \mathcal{S}(V')\setminus\{\{0\}, V'\}$がとれる. $\tilde\varphi(\{0\})=\{0\}, \tilde\varphi(V)=V'$によって$\varphi$を$\tilde\varphi:\mathcal{S}(V)\to\mathcal{S}(V')$に拡張すると、これは同型である(確かめよ).
(3)の成立を仮定する. 体同型$\theta:K\to K'$がとれる. $a\in K$と$x\in V'$に対し$a\cdot x=\theta(a)x$によって$K$の$V'$への作用を定めると、$V'$はもとのAbel群の構造と合わせて$K$-線型空間になる(確かめよ). $V'$の$K'$-線型空間としての基底は$K$-線型空間としての基底でもあるため$V$と$V'$は$K$-線型空間として同型である. このことと、$S\subseteq V'$に対し
が成り立つことを踏まえると、$\mathcal{S}(V)\cong\mathcal{S}(V').$
$K, K'$を体とし、$\theta:K\to K'$を体同型とする. また、$V$を$K$-線型空間、$V'$を$K'$-線型空間とする.
写像$f:V\to V'$が次を満たすとき$f$は$\theta$-半線型であるという.
さらに$f$が全単射であるとき、$f$は$\theta$-同型であるという.
$\theta$-半線型という言葉はwikipedia2を参考にしました.
定理1における必要性を示すために次の定理を示します.
$K, K'$を体とする. また$V$を$K$-線型空間、$V'$を$K'$-線型空間とし、$\dim_K(V)\ge 3$とする.
$\Phi:\mathcal{S}(V)\to\mathcal{S}(V')$が順序同型ならば、次を満たすような体同型$\theta:K\to K'$、写像$f:V\to V'$が存在する.
$W\in \mathcal{S}(V)$に対し、$\Phi(W)$を$W'$と略記する. $W_0, W_1\in\mathcal{S}(V)$に対し$(W_0+W_1)'=W_0'+W_1'$かつ$(W_0\cap W_1)'=W_0'\cap W_1'$であることに注意する.
Step1:線型独立な$x, y\in V$と$\langle x\rangle'=\langle x'\rangle$なる$x'\in V'$に対し、$\langle y\rangle'=\langle y'\rangle$かつ$\langle y-x\rangle'=\langle y'-x'\rangle$を満たす$y'\in V'$が唯一存在する.
$x'\in\langle x\rangle'\subseteq \langle y, y-x\rangle'=\langle y\rangle'+\langle y-x\rangle'$より、$x'=s-t$となる$s\in \langle y\rangle', t\in\langle y-x\rangle'$が存在する. $\langle x\rangle\nsubseteq \langle y\rangle, \langle y-x\rangle$より$\langle x'\rangle\nsubseteq\langle y\rangle', \langle y-x\rangle'$なので$s, t\neq 0.$ したがって$\langle s\rangle=\langle y\rangle'$かつ$\langle s-x'\rangle=\langle t\rangle=\langle y-x\rangle'$で$s$が$y'$の条件を満たす.(Step1終わり)
この唯一の$y'$を$h(x, x', y)$で表す($x, y$が線型従属なとき、$\langle x\rangle'\neq\langle x'\rangle$のときは未定義とする).
$V$は$3$次元以上なので、線型独立な$u, v, w\in V$がとれる. $\langle u\rangle'=\langle u'\rangle$なる$u'\in V'$がとれる. $v'=h(u, u', v), w'=h(u, u', w)$とおく. 以降これらは固定する. このとき
となる(確かめよ).
Step2:$s, t$を$u, v, w$の内相異なる$2$つとする. $x, s, t$が線型独立となるような$x\in V$に対し、$h(s, s', x)=h(t, t', x).$
$h(s, s', x)$を$x'$とおく. $\langle x'\rangle\cap\langle s', t'\rangle=(\langle x\rangle\cap\langle s, t\rangle)'=\{0\}$で、同様に$\langle s'\rangle\cap\langle x', t'\rangle=\langle t'\rangle\cap\langle x', s'\rangle=\{0\}$なので$x', s', t'$は線型独立.
$\langle x'-t'\rangle=\langle x', t'\rangle\cap \langle x'-s', s'-t'\rangle=\langle x, t\rangle'\cap \langle x-s, s-t\rangle'=(\langle x, t\rangle\cap\langle x-s, s-t\rangle)'=\langle x-t\rangle'$より、$x'=h(t, t', x)$である.(Step2終わり)
$x\in V\setminus\{0\}$に対し、$h(u, u', x), h(v, v', x), h(w, w', x)$の内少なくとも二つは定義されている. また、Step2より定義されているものは全て一致する(未定義のものがある場合は明らか、そうでないときは$\langle u, v\rangle, \langle v, w\rangle, \langle w, u\rangle$の内$x$を含むものは高々一つであることから). この値を$f(x)$とし、さらに$f(0)=0\in V'$とすることで$f:V\to V'$を定める. このとき、$\forall x\in V:\langle x\rangle'=\langle f(x)\rangle$であること、線型独立な$S\subseteq V$に対し$f[S]\subseteq V'$も線型独立になること(Step2内の議論と同様に分かる)に注意する. また、$f(x)$を$x'$と略記する($u', v', w'$の定義との整合性もある).
Step3:$f$は加法群の準同型である.
$x, y\in V$として$f(x+y)=f(x)+f(y)$を見る. $x, y$は$0$でないとしてよい.
$u, v, w$の内$\langle x, y\rangle$に含まれないものが少なくとも一つあるのでそれを$s$とおく. $x, y$が線型独立かどうかで場合わけする.
Case1:$x, y$が線型独立であるとき.
$x', y', s'$は線型独立なので、
$$\langle x'+y'-s'\rangle=\langle x'-s', y'\rangle\cap \langle x', y'-s'\rangle=(\langle x-s, y\rangle\cap\langle x, y-s))'=\langle x+y-s\rangle'.$$
$$\langle x'+y'\rangle=\langle x'+y'-s', s'\rangle\cap\langle x', y'\rangle=(\langle x+y-s, s\rangle\cap\langle x, y\rangle)'=\langle x+y\rangle'.$$
したがって$x'+y'=h(s, s', x+y)=(x+y)'.$
Case2:$x, y$が線型従属であるとき、$s, t, x$が線型独立となるような$t\in\{u, v, w\}\setminus\{s\}$がとれ、 Case1の結果より
$$(x+y)'=(x+y+t)'-t'=x'+(y+t)'-t'=x'+y'+t'-t'=x'+y'.$$
ただし、最初の等号において$x+y=0$かどうかで場合分けが生じることに注意する. (Step3終わり)
$\mathrm{Ker}(f)=\{0\}$なので$f$は単射である.
Step4:$f$は全射である.
$r\in V'$を任意にとり、$f(x)=r$となる$x\in V$が存在することを見る. $r\neq 0$としてよい.
$W'=\langle r\rangle$となる$W\in\mathcal{S}(V)$がとれる. $\langle s'\rangle\neq W'$なる$s\in \{u, v, w\}$がとれる. $\langle r-u'\rangle\subseteq W'+\langle u'\rangle$より、$U'=\langle r-u'\rangle$となる部分空間$U\subseteq W+\langle u\rangle$がとれる. $U\neq W, \langle u \rangle$に注意すると、$U=\langle x-u\rangle$となる$x\in W\setminus\{0\}$が一意にとれる. $\langle r\rangle=W'=\langle x'\rangle$と$\langle r-u'\rangle=U'=\langle x-u\rangle'$より、$x'=h(u, u', x)=r.$(Step4終わり)
以上より$f:V\to V'$は加法群の同型である.
$x\in V\setminus\{0\}$に対し、$\forall a\in K:f(ax)=\theta_x(a)f(x)$となるような$\theta_x:K\to K'$が一意に定まる.
Step5:$x, y\in V\setminus\{0\}$に対し$\theta_x=\theta_y.$
$x, y$が線型独立なとき、$a\in K$に対し、
$$f(a(x+y))=\theta_{x+y}(a)f(x+y)=\theta_{x+y}(a)f(x)+\theta_{x+y}(a)f(y)$$
である一方
$$f(a(x+y))=f(ax)+f(ay)=\theta_x(a)f(x)+\theta_y(a)f(y).$$
$f(x), f(y)$は線型独立なので$\theta_x=\theta_{x+y}=\theta_y.$
一般の$x, y\in V\setminus\{0\}$に対しては、$x, y, s$が線型独立になるような$s\in\{u, v, w\}$がとれるので上より$\theta_x=\theta_s=\theta_y.$ (Step5終わり)
この$x\in V\setminus\{0\}$によらない写像$\theta_x:K\to K'$を$\theta$とかく.
Step6:$\theta$は体同型である.
$\theta(1)f(u)=f(1\cdot u)=f(u)$より$\theta(1)=1.$
また、$a, b\in K$に対し$$\theta(a+b)f(u)=f((a+b)u)=f(au)+f(bu)=\theta(a)f(u)+\theta(b)f(u)=(\theta(a)+\theta(b))f(u)$$
$$\theta(ab)f(u)=f(abu)=\theta(a)f(bu)=\theta(a)\theta(b)f(u)$$
より$\theta(a+b)=\theta(a)+\theta(b), \theta(ab)=\theta(a)\theta(b). $したがって$\theta$は体準同型.
最後に全射なことを見る. $c\in K'$とする. $f:V\to V'$の全射性より、$x'=cu'$なる$x\in V$がとれる. このとき$x\in \langle u\rangle$なので、ある$a\in K$によって$x=au$とかける. $\theta(a)u'=(au)'=x'=cu'$より、$\theta(a)=c$である. $c\in K'$は任意にとっていたので$\theta$は全射である. (Step6終わり)
Step7:$\forall W\in\mathcal{S}(V):f[W]=\Phi(W).$
$W\in \mathcal{S}(V)$とする. $W$は$\langle x\rangle\in\mathcal{S}(V):x\in W$の上限なので、$W'$は$\langle x\rangle'\in\mathcal{S}(V'):x\in W$の上限. したがって$W'$は$\langle r\rangle\in\mathcal{S}(V'):r\in f[W]$の上限である. $f[W]\in\mathcal{S}(V')$(確かめよ)と合わせると$W'=f[W].$(Step7終わり)
以上で主張が示された(ただし、$x=0$のときも$\forall a\in K:f(ax)=\theta(a)f(x)$が成り立っていることに注意).
ちなみに射影幾何学の基本定理は係数体が非可換な場合にも成り立ちます.
$\mathcal{S}(V)\cong\mathcal{S}(V')$と仮定する.
$\dim_K(V)\le1$のとき、(1)が成立する(確かめよ).
$\dim_K(V)=2$のとき、$\mathcal{S}(V)$は濃度$4$の全順序部分集合を持たないが、濃度$3$の全順序部分集合を持つ. $\mathcal{S}(V')$も同様の性質を持つはずなので$\dim_{K'}(V')=2.$ 補題2より$|K|+1=|K'|+1$で$|K|=|K'|.$
$\dim_K(V)\ge 3$のとき、定理3より体同型$\theta:K\to K'$と$\theta$-同型$f:V\to V'$がとれる. 「定理1における十分性の証明」と同様に、$x\in V'$と$a\in K$に対し$a\cdot x=\theta(a)x$と作用を定めることで$V'$に$K$-線型空間の構造が定まる(確かめよ). このとき、$f:V\to V'$は$K$-線型空間の間の同型になる. $V'$の$K$-線型空間としての基底は$K'$-線型空間としての基底でもあることに注意すると、$\dim_K(V)=\dim_K(V')=\dim_{K'}(V').$
この記事は1の40~52ページの内容を再構成したものです.
自己準同型環から線型空間を復元する記事( 自己準同型環から線型空間を復元しよう! )も書いたのでよければ読んでください.
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