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現代数学解説
文献あり

超微分の小ネタの拡張:整関数と超微分

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この前の 没アイデア の、超微分でバーゼル問題の続きです。
今回は、整関数の零点の数の観点から、この超微分の展開の挙動を見ていこうと思います。
まだ超微分の複素数への拡張についてはあまり分かりませんが、整関数の微分は定義できるので、今回は、とりあえず形式的にf(x)=xf(x)f(x)を定めます。

零点の数が0個の場合

零点の数が0個のとき、超微分f(x)自体も整関数となります。整関数はテイラー展開することが出来、また収束半径が無限大となるので、負の冪級数展開を挟む余地がないということになります。

零点の数が有限個の場合

仮に零点の数が重複含め、原点にm個、原点以外にn(<)個あるとしましょう。このとき、整関数f(x)にワイエルシュトラスの因数分解定理を適用するとある整関数g(x)と非負整数列{pn}を用いて次のように表せます。
f(x)=xmeg(x)i=1n(1xai)exp(k=1pi1k(xai)k)
(pi=0のとき、expの中身の和は0とする。)
これを超微分してみましょう。
lnf(x)=mlnx+g(x)+i=1n{ln(1xai)+k=1pi1k(xai)k}(lnf(x))=mx+g(x)+i=1n{1xai+k=1pi1ai(xai)k1}f(x)=x(lnf(x))=m+xg(x)+i=1n{11aix+k=1pi(xai)k}
g(x)も整関数ですので、xg(x)は、最低次が1以上で展開できる関数となります。また、k=1pi(xai)kの次数は明らかに1以上であるので、冪級数の0以下のところに着目すると、結局、
m+i=1n11aix=m+i=1nk=0(aix)kとなります。xを十分大きくとって、 超微分の小ネタ と同様の操作をすると、
m+n+k=1i=1n(aix)k=k=0ukxk
と表せます。ここで、ukは根のk乗和です。
よって、整関数かつ零点が有限個の場合では 超微分の小ネタ と同様のことが成り立つということになります。

零点の数が無限個の場合

これが一番ややこしいのですが、まず整関数で零点の数が無限個ある場合、その解の集合は有界ではありません。つまりその解の和は確定で発散ないし振動します。そこで、一旦整関数f(x)をワイエルシュトラスの因数分解定理で因数分解し、まずf(1x)を考えることにします。この時点で解の逆数和が発散するかとかはまだ与り知るところではありません。
f(x)=xmeg(x)n=1(1xan)exp(k=1pn1k(xan)k)f(1x)=xmeg(1x)n=1(11anx)exp(k=1pn1k(1anx)k)lnf(1x)=mlnx+g(1x)+n=1{ln(11anx)+k=1pn1k(1anx)k}(lnf(1x))=mxg(1x)x2+n=1{1anx1k=1pn1x(1anx)k}f(1x)=x(lnf(1x))=mg(1x)x+n=1{1anx1k=1pn(1anx)k}
ここで、bn:=1anとすると、
f(1x)=mg(1x)x+n=1{bnx1bnxk=1pn(bnx)k}=mg(1x)x+n=1{i=1(bnx)ik=1pn(bnx)k}(収束する場合に限る)
と表せます。薄々感づいているかもしれませんが、g(x)pnのご機嫌次第です。結論を言うと、「一般には成り立たない。」ということになります。
しかしながらg(x)pnさえ分かれば、負の冪級数の係数が、純粋に解の逆数のk乗和を表しているのかどうかは判断できます。
f(1xt)で行った場合も示しておきましょう。
f(1xt)=mttg(1xt)xt+n=1{tbnxt1tbnxtk=1pn(tbnxt)k}
1つ言いたいのは、これはもう最早、整関数ではないということです。

例1

ここで例を示しておきましょう。
sin(x)=xn0,nZ(1xnπ)ex/(nπ)
となります。このとき、m=1,g(x)=0,an=nπ,pn=1です。
よって、
f(1x)=1+n0,nZi=2(1nπx)i
となります。kを正の整数とするとき、
iが奇数ならば(k)i=ki
iが偶数ならば(k)i=ki
となるので、
iが3以上の奇数のとき
n0,nZ(1nπx)i=0
となります。(i2k=1(1kπ)iは収束するため。)
よって、
f(1x)=1+k=12ζ(2k)x2kπ2k
ζ(0)=12であることを加味すると、
f(1x)=k=02ζ(2k)x2kπ2k
と表せます。
これはf(1x)のときも同様で、単純にt=12で係数が半分になったため、 ここ では綺麗に値が出たということになります。

例2

ガンマ関数の逆数にワイエルシュトラスの因数分解定理を適用すると以下の式が得られます。
1Γ(x)=xeγxn=1(1+xn)exn
このとき、m=1,g(x)=γx,an=n,pn=1です。
よって、
(1Γ(1x))=1γx+n=1{1nx1+1nx+1nx}=1γx+n=1k=2(1nx)k=1γx+k=2(1)kζ(k)xk
と表せることになります。綺麗ですね。(合っているかは分かりませんが...)

いかがでしたか?

かなり限定的な状況ですが、超微分の冪級数展開と解の関係について少し掴めたように思います。また何かありましたら追記します。間違いやアドバイスなどありましたらコメント下さると幸いです。

参考文献

投稿日:11日前
更新日:10日前
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vunu
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  1. 零点の数が0個の場合
  2. 零点の数が有限個の場合
  3. 零点の数が無限個の場合
  4. 例1
  5. 例2
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  7. 参考文献