先日 色数 くんのオプチャで群ゼータの話になっていたので、 最近扱っていた可換モノイド $(\mathbb{N}_{>0},\times ,1)$の商群$(\mathbb{Q}_{>0},\times,1)$についての話を振ったところ、面白い同型を思いついたのでここに雑記します。(一切ググってないので有名事実ならごめんなさいw)
$\mathbb{Z}[x]$を整数係数多項式環とする。
$\mathbb{Q}_{>0}$は通常の積で群となる。
$p_0,p_1,p_2,\dots$を素数列$2,3,5,7,\dots$とする。
任意の$a\in\mathbb{Q}_{>0}$に対して、ある自然数$n$と整数列$\{e_k\}_{k=0}^n\subset\mathbb{Z}$が存在して、
$a=p_0^{e_0}\times\dots\times p_n^{e_n}$
と書ける。これを$a$の(広義)素因数分解という。
群$(\mathbb{Q}_{>0},\times,1)$と群$(\mathbb{Z}[x],+,0)$は同型である。
実際、任意の$a\in\mathbb{Q}_{>0}$に対して、その素因数分解を、$a=p_0^{e_0}\times\dots\times p_n^{e_n}$とすると、
$\varphi(a)=\varphi(p_0^{e_0}\times\dots\times p_n^{e_n})=e_0+e_1x+\dots+e_nx^n$
とすると、これは群同型$\varphi:\mathbb{Q}_{>0}\stackrel{\sim}{\longrightarrow}\mathbb{Z}[x]$を与える。
同型写像があるということは$\mathbb{Z}[x]$の演算を$\mathbb{Q}_{>0}$にぶち込めるということである(!?)
$\mathbb{Q}_{>0}$上の超積$\odot$を$\mathbb{Z}[x]$上の積の引き戻しにより定義する。
すなわち、任意の$a,b\in\mathbb{Q}_{>0}$に対し、
$\varphi(c)=\varphi(a)\times\varphi(b)$
なる$c\in\mathbb{Q}_{>0}$が一意に存在する。この$c$を$a$と$b$の超積といい、$c=a\odot b$と書く。
つまり、$a\odot b\coloneqq\varphi^{-1}(\varphi(a)\times\varphi(b))$ということである。
このとき、代数系$(\mathbb{Q}_{>0},\times,\odot)$は環$(\mathbb{Z}[x],+,\times)$と同型な環である。(これはほぼ自明だけどね)
$\mathbb{Z}[x]$の乗法単位元は$1$であるから、$\mathbb{Q}_{>0}$の超積単位元は$2$である。
距離空間上に演算を定義したからには連続性を調べたくなるのが人の性ってもんよ。
ということで以下の定理を示す。
超積は$\mathbb{Q}_{>0}$上不連続である。
これは、2変数関数として、偏不連続(片方の変数を固定して考えた時点で不連続)である。
$s,t(t< s)$を非負整数とする。$a=p_t/p_s$とし、$\mathbb{Q}_{>0}$上の関数$f$を$f(y)=a\odot y$とする。
この関数が$y=0$で不連続であることを示す。
仮に連続であるとすると、任意の正数$\varepsilon>0$に対して、ある正数$\delta>0$が存在して、$|y|<\delta$ならば$|f(y)|<\varepsilon$をみたす。
ここで、$A,B$を非負整数、$y=2/p_B^A$として、$\varphi(f(y))$を考えると、
$\varphi(f(y))=\varphi(a\odot y)=\varphi(a)\odot\varphi(y)=(x^t-x^s)(1-Ax^B)$
$$=x^t-Ax^{B+t}-x^s+Ax^{B+s}$$
よって、
$f(y)=p_t\times p_{B+t}^{-A}\times p_s^{-1}\times p_{B+s}^A=(p_t\times p_{B+s}^A)/(p_{B+t}^A\times p_s)$
つまり、
$f(y)=(p_t/p_s)\times (p_{B+s}^A/p_{B+t}^A)=(p_t/p_s)\times (p_{B+s}/p_{B+t})^A$
$t< s$より、$p_{B+t}< p_{B+s}$だから、$1< p_{B+s}/p_{B+t}$
よって、$A\longrightarrow\infty$のとき、$y\longrightarrow0$だが、$f(y)\longrightarrow\infty$となる。
今、任意にとった$\varepsilon>0$に対して、条件を満たす$\delta>0$が取れたとする。
このとき、$A$を十分大きくとると、$|y|<\delta$となるようにできるが、
同時に$\varepsilon< y$となるようにもできる。これは$\delta$の取り方に矛盾。
よって$f(y)$は$y=0$で不連続である。
整理してみるとだいぶ自明感あるし、ここから何かわかるのだろうか...?
$\mathbb{N}_{>0}$上の超積の数論的性質は気になりますね。
あとどうやら解析的には良い性質は見込め無さそうです。
また何かわかったら投稿します。では、今回はこの辺で。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
それでは。
いつか$\mathcal{F}(\mathbb{N})$上で超積を考えるかも...?