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でGöllnitz-Gordon恒等式
を示した. これを用いることで, Göllnitz-Gordonの分割定理を示す.
自然数の分割が-差的であるとは, 全てのに対し, であることをいう.
以下の分割定理がGöllnitz, Gordonによって独立に示されている.
Göllnitz(1967), Gordon(1965)
の分割で-差的かつ連続する偶数を含まないようなものの個数は, の分割でその和因子がを法として, に合同であるものの個数に等しい.
Göllnitz(1967), Gordon(1965)
の分割で-差的かつ連続する偶数と以下の数を含まないようなものの個数は, の分割でその和因子がを法として, に合同であるものの個数に等しい.
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におけるAndrewsによるSchurの分割定理の証明と同様の方針で証明を与えることにする. の個の和因子への分割であって, -差的かつ連続する偶数を含まず, 全ての和因子がよりも大きいものの個数をとする. そのとき, 以下が成り立つ.
つ目の等式の右辺はの条件を満たす分割の中でを和因子の持つ分割の個数であり, を引くという操作は偶奇を変えないので, そのような分割に対し, 含まれているを除いて, 残りの全ての和因子からを引いたものはの条件を満たす分割になっている. これが全単射を与える. 残りの等式も同様である.
とする.
補題3の等式の母関数を考えると,
を得る. これらからを消去すると,
を得る.
としてこれに代入し, の係数を比較すると,
つまり,
となる. これより,
となって定理を得る.
定理1, 定理2の証明
定理4とGöllnitz-Gordon恒等式より,
を得るから定理1が示される.
であるから定理2が示される.
このように, Rogers-Ramanujan型の級数と分割定理が関わっているような等式は他にも色々あるようである.
[1]
H. Göllnitz, Partitionen mit Differenzenbedingungen, J. reine angew. Math., 1967, 154-190
[2]
B. Gordon, Some Continued Fractions of the Rogers-Ramanujan Type, Duke Math. J., 1965, 741-748