前回の記事
でGöllnitz-Gordon恒等式
\begin{align}
\sum_{0\leq n}\frac{q^{n^2}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}&=\frac 1{(q,q^4,q^7;q^8)_{\infty}}\\
\sum_{0\leq n}\frac{q^{n^2+2n}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}&=\frac 1{(q^3,q^4,q^5;q^8)_{\infty}}
\end{align}
を示した. これを用いることで, Göllnitz-Gordonの分割定理を示す.
自然数の分割$(\lambda_1,\dots,\lambda_m)$が$d$-差的であるとは, 全ての$1\leq i\leq m-1$に対し, $\lambda_i-\lambda_{i+1}\geq d$であることをいう.
以下の分割定理がGöllnitz, Gordonによって独立に示されている.
$N$の分割で$2$-差的かつ連続する偶数を含まないようなものの個数は, $N$の分割でその和因子が$8$を法として, $1, 4, 7$に合同であるものの個数に等しい.
$N$の分割で$2$-差的かつ連続する偶数と$2$以下の数を含まないようなものの個数は, $N$の分割でその和因子が$8$を法として, $3, 4, 5$に合同であるものの個数に等しい.
前の記事 におけるAndrewsによるSchurの分割定理の証明と同様の方針で証明を与えることにする. $n$の$m$個の和因子への分割であって, $2$-差的かつ連続する偶数を含まず, 全ての和因子が$j$よりも大きいものの個数を$b_j(m,n)$とする. そのとき, 以下が成り立つ.
以下の等式が成り立つ.
\begin{align}
b_0(m,n)-b_1(m,n)&=b_0(m-1,n-2m+1)\\
b_1(m,n)-b_2(m,n)&=b_2(m-1,n-2m)\\
b_2(m,n)&=b_0(m,n-2m)
\end{align}
$1$つ目の等式の右辺は$b_0(m,n)$の条件を満たす分割の中で$1$を和因子の持つ分割の個数であり, $2$を引くという操作は偶奇を変えないので, そのような分割に対し, 含まれている$1$を除いて, 残りの全ての和因子から$2$を引いたものは$b_0(m-1,n-2m+1)$の条件を満たす分割になっている. これが全単射を与える. 残りの等式も同様である.
\begin{align}
f_i(x):=1+\sum_{0< m,n}b_i(m,n)x^mq^n
\end{align}
とする.
\begin{align} f_0(x)&=\sum_{0\leq n}\frac{q^{n^2}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}x^n \end{align}
補題3の等式の母関数を考えると,
\begin{align}
f_0(x)-f_1(x)&=xqf_0(xq^2)\\
f_1(x)-f_2(x)&=xq^2f_1(xq^2)\\
f_2(x)&=f_0(xq^2)
\end{align}
を得る. これらから$f_1, f_2$を消去すると,
\begin{align}
f_0(x)-(1+xq)f_0(xq^2)-xq^2f_0(xq^4)
\end{align}
を得る.
\begin{align}
f_0(x)&=:\sum_{0\leq n}A_nx^n
\end{align}
としてこれに代入し, $x^n$の係数を比較すると, $A_0=1$
\begin{align}
A_n-q^{2n}A_n-q^{2n-1}A_{n-1}-q^{4n-2}A_{n-1}=0, \qquad n\geq 1
\end{align}
つまり,
\begin{align}
A_n=\frac{q^{2n-1}(1-q^{2n-1})}{1-q^{2n}}A_{n-1}, \qquad n\geq 1
\end{align}
となる. これより,
\begin{align}
A_n=\frac{q^{n^2}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}
\end{align}
となって定理を得る.
定理4とGöllnitz-Gordon恒等式より,
\begin{align}
f_0(1)&=\sum_{0\leq n}\frac{q^{n^2}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}\\
&=\frac 1{(q,q^4,q^7;q^8)_{\infty}}
\end{align}
を得るから定理1が示される.
\begin{align}
f_2(1)&=f_0(q^2)\\
&=\sum_{0\leq n}\frac{q^{n^2+2n}(-q;q^2)_n}{(q^2;q^2)_n}\\
&=\frac 1{(q^3,q^4,q^5;q^8)_{\infty}}
\end{align}
であるから定理2が示される.
このように, Rogers-Ramanujan型の級数と分割定理が関わっているような等式は他にも色々あるようである.