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大学数学基礎解説
文献あり

簡単な命題と置換群の定義

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ちょっとした命題

$G$が群で$a,b,c\in G$なら、次の(1)、(2)が成り立つ。
(1)(簡約法則)$ac=bc$なら、$a=b$
(2)$ab=c$なら、$a=cb^{-1},b=a^{-1}c$


(1)


$ac=bc$の両辺に右から$c^{-1}$をかければよい





(2)


$ab=c$の両辺に右から$b^{-1}$をかけて$a=cb^{-1}$を得る。
同様に、$b=a^{-1}c$を得る。



$G$が群で$a,b,c\in G$とする。この時$ab=ac$なら、$b=c$であることを証明せよ。

証明


$ab=ac$の両辺に左から$a^{-1}$をかければよい



$G$を群とする。
(1)群の単位元は一つに限る。
(2)$a\in G$に対してその逆元は一意に定まる。
(3)$a,b\in G$なら$(ab)^{-1}=b^{-1}a^{-1}$
(4)$a\in G$なら$(a^{-1})^{-1}=a$


(1)


$e_{1},e_{2}$が単位元としての性質を満たしているとするとき、$e_{1}e_{2}=e_{1}$($e_{2}$は単位元)$=e_{2}$($e_{1}$は単位元)
となり、単位元の一意性が確認できた。



(2)


$a\in G$の逆元を$b_{1},b_{2}$とすると、$b_{1}=(b_{2}a)b_{1}=b_{2}(ab_{1})=b_{2}$



(3)


実際$(b^{-1}a^{-1})ab=b^{-1}(a^{-1}a)b=b^{-1}b=1$同様に$ab(b^{-1}a^{-1})=1$
したがって$ab$の逆元は$b^{-1}a^{-1}$



(4)


$aa^{-1}=a^{-1}a=1$であるがこれを$(a^{-1})^{-1}$を定義する関係式とみなすことができるので$a=(a^{-1})^{-1}$である。

置換群と対称群

置換

$X$を集合とするとき、$X$から$X$への全単射写像$\sigma :X\to X$のことを$X$置換という。

$\sigma ,\tau$$X$の置換とする。その積$\sigma \tau$を写像としての合成$\sigma \circ \tau$として定義する。
$X$の置換全体は上で定義した演算により群となる。なお、単位元は恒等写像$\textrm{id}_{X}$であり、$\sigma$の逆元は写像としての逆写像$\sigma^{-1}$である。結合法則は写像の合成について結合法則が成り立つことから従う。

置換群と対称群

集合$X$の置換全体からなる群を$X$置換群という。$X_{n}=\{1,2,\cdots ,n\}$とするとき、$X_n$の置換を$n$次の置換という。$n$次の置換全体からなる群を$\mathfrak{S}_n$($\mathfrak{S}$はドイツ文字の「S」)で表す。$\mathfrak{S}_{n}$$n$次の対称群という。

$\mathfrak{S}_{n}$の元を表すのに、$1,2,\cdots ,n$の行き先を書いて


$\sigma = \begin{pmatrix}1 & 2 & \cdots & n \\ \sigma(1) & \sigma(2) & \cdots & \sigma(n) \end{pmatrix}$

とも書く。一行目の順序は$1,2,\cdots ,n$でなくてもよいものとする。


$\sigma = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 3 & 1 & 4 & 2 \end{pmatrix}= \begin{pmatrix} 2 & 4 & 3 & 1 \\ 1 & 2 & 4 & 3 \end{pmatrix}$

$4$次の置換で


$1\to 3,\qquad 2\to 1,\qquad 3\to 4,\qquad 4\to 2$

となっているものである。
さらに

$\tau = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 2 & 3 & 1 & 4 \end{pmatrix}$

なら、

$\sigma \tau :\ \begin{array}{cc} 1\to 2\to 1 \\ 2\to 3\to 4 \\ 3\to 1\to 3 \\ 4\to 4\to 2 \end{array} \qquad \tau^{-1} : \ \begin{array}{cc} 2\to 1 \\ 3\to 2 \\ 1\to 3 \\ 4\to 4 \end{array}$

となるので、

$\sigma \tau = \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 1 & 4 & 3 & 2 \end{pmatrix} \qquad \tau^{-1}= \begin{pmatrix} 2 & 3 & 1 & 4 \\ 1 & 2 & 3 & 4 \end{pmatrix}= \begin{pmatrix} 1 & 2 & 3 & 4 \\ 3 & 1 & 2 & 4 \end{pmatrix}$

である。$\tau^{-1}$$\tau$の上下を交換して整理したものである。

おわり

互換と巡回置換については後日追加しときます()
次回は部分群について書くと思います。

参考文献

[1]
雪江明彦, 群論入門, 代数学シリーズ, 日本評論社, 2010, 22~24p
投稿日:202354
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